Febri TALK 2021.06.16 │ 12:00

toi8 イラストレーター

②アニメーターを目指すきっかけ
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』

自身が影響を受けたアニメについて聞くインタビューの第2回。toi8が作画オタクとして目覚め、アニメーターを目指す直接のきっかけとなった『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』。またしても押井守監督作だった。

取材・文/岡本大介

世の中にはすごい絵を描く人がたくさんいる

――1作目の『機動警察パトレイバー 2 the Movie』に引き続き押井守監督作品ですね。
toi8 士郎正宗さんの原作も好きで読んでいたんですけど、押井さんが映画化するということですぐにチェックしました。で、もちろん、映像的な魅力はすごく感じたんですけど、じつは映画本編よりも、そのあとに出た設定資料集に大きな影響を受けたんです。参加されているアニメーターさんの原画やレイアウトの原図が掲載されていて、それが衝撃的でした。当時の自分が描いていたものとは次元が違っていて、世の中にはこんなにすごい絵を描く人がたくさんいるんだと感動したんです。

――当時、toi8さんはすでにアニメーターを目指していたんですか?
toi8 いえ、その頃は家に引きこもってダラダラと過ごしていました(笑)。でも、この『攻殻機動隊』の設定資料集がきっかけで自分もアニメーション制作の世界へ行きたいと思い、それでアニメの専門学校へ通うことにしたんです。

――まさに人生の転機になった作品なんですね。
toi8 そうですね。僕は汚れた街並みを描くのが好きなんですが、それはこの本に載っていたクーロン城をモチーフにした鉛筆画の影響です。もうすべての絵がカッコよくて、本がバラバラになるまで読んでいました。

――映画本編で言うと、主題歌の「謡」とともに街並みが映し出される中盤のシーンは圧巻ですよね。
toi8 たしかに。「謡」は今でも最後まで歌えますよ(笑)。あのシーンは雨が降っているのがまたいいんですよね。情報量が多くて、いったいどうやったらこんな絵が描けるんだろうと思います。『機動警察パトレイバー』から共通するレイアウトのすごさも感じつつ、その頃になるとレンズの存在にも気づき始めて、自分も肉眼よりレンズを意識して絵を描いたほうが楽しいんじゃないかなと思うようになりました。たとえば、望遠圧縮で遠くのものを引き寄せて見せるのは、階段とか坂道の絵だとすごく効果的なので、今でも使うことがあります。イラストだとあまりやらない手法なんですが、僕はすごく好きですね。

――なるほど。街並み以外だと、どんなところが印象深いですか?
toi8 当時、いちばんしびれたのは、クライマックスの博物館跡での一連の戦闘シーンです。多脚戦車のガトリング砲で固そうなレンガの柱がガンガンとえぐれていく描写だったり、素子が戦車のハッチをこじ開けようとして腕がねじ切れるところ。義体の壊れ方の表現力が素晴らしくて、自分もいつかこんな絵が描けたらいいなと思いながら見ていました。

押井作品のなかでも

この映画に関しては

すごいアクション映画だな

という見方をしていました

――『機動警察パトレイバー』とは違って、本作にはアクション的な魅力も感じたんですね。
toi8 そうですね。もちろん、押井作品に共通するレイアウトや佇まいというのは大前提として非常に好きなんですけど、この映画に関してはむしろ「すごいアクション映画だな」っていう見方をしていました。

――序盤の素子の後ろ回し蹴りなど、絵になるアクションが多い作品ですね。
toi8 あそこもいいですよね。雑踏を抜けた先の貯水池というシチュエーションもどこか非現実的でいいですし、押井さんが普段はあまりやらないダブルアクション(※1)っぽい動きも面白いなと思いました。とにかくアクションシーンは全般的にカッコいいですね。ちょうどアニメーターになりたいと思った時期ですし、先ほどの設定資料集の影響もあって、アニメーターさんの名前を気にするようになったのもこの作品からです。たとえば、博物館跡の戦闘シーンは磯光雄さんが描かれているんですが、振り返ってみると他にも僕が好きなシーンはだいたい磯さんが手がけられていることに気づいたりして。それからというもの、ほかの作品を見てもアニメーターさんの名前とシーンを紐づけることが当たり前になっていきました。作画監督についても同じで、この作品では黄瀬和哉さんと沖浦啓之さんのふたりが担当されているんですけど、よく比べるとそれぞれの担当パートでキャラクターの造形や動きが違うんですよね。それがわかってくるとますます面白くなって、のめり込んでいきました。

――いわゆる「作画オタク」に目覚めたんですね。
toi8 道を踏み外した瞬間ですかね(笑)。その後、磯光雄さんが監督された『電脳コイル』だったり沖浦啓之さんが監督された『人狼 JIN-ROH』をチェックしたりと、好きなアニメーターさんの作品を追うようにもなっていきました。

――わかりました。ちなみに『攻殻機動隊』は多くの関連シリーズがありますが、そちらもチェックしているんですか?
toi8 原作自体がすごく好きなので、基本的にほとんどすべてを追っていると思います。なかでもTVシリーズの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』はドラマとしてのクオリティが高くて個人的にとても好きです。押井さんが手がけた『イノセンス』は作画オタとしては注目して見ていましたけど、すでに社会人として働いていた時期でもあり、残念ながら『1』のようなハマり方はしませんでした。僕にとってこの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、引きこもり生活を続けながら「このままじゃダメだ。何かしなきゃ」っていうモヤモヤだったり焦りのなかで出会った作品で、だからこそ鮮明に脳裏に焼き付いているんだと思います。endmark

※1 同じアクションを、起点に戻ってカメラアングルを変えて複数回繰り返す演出法。

KATARIBE Profile

toi8

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イラストレーター

といはち。1976年生まれ。熊本県出身。2002年『空想東京百景』でイラストレーターとしてデビュー。代表作にライトノベル『まおゆう魔王勇者』シリーズ、ゲーム『Fate/Grand Order』のキャラクターデザインなど、さまざまなフィールドで活躍中。

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