Febri TALK 2021.04.19 │ 12:00

うえのきみこ 脚本家

①『キャンディ・キャンディ』では
アンソニー派でした(笑)

『クレヨンしんちゃん外伝』シリーズをはじめ、ギャグアニメを中心に活躍する脚本家・うえのきみこ。そんな彼女が影響を受けたアニメについて聞く連載第1回は、小学生の頃に再放送で見た少女マンガ原作アニメの話題から。

取材・文/宮 昌太朗

女の子が自立する姿を描いた作品が好きなんです

――今日は、うえのさんが影響を受けたアニメについて話を伺えればと思っています。と、その前にそもそも、うえのさんが脚本家を目指すようになった経緯からお聞きできますか?
うえの 最初は実写の監督になりたくて、日本映画学校に通っていたんです。ただ、途中で「無理だなぁ」と思うようになって(笑)。監督って決断力と、人とのコミュニケーション能力が高くないと難しいと思うんですが、私はどちらの能力も低いほうでして。脚本家だと家で仕事ができるし、満員電車にも乗らなくていい(笑)。そんなダメな理由で、脚本家を目指すようになって。で、フリーターをやりながら、いろいろな公募に応募していたんですけど、そのなかで城戸賞の最終選考に残ったんです。

――新人脚本家の発掘を目的にした、脚本のコンクールですね。その頃はどんな脚本を書いていたのでしょうか?
うえの 群像劇みたいなコメディでしたね。団地で暮らす人たちの話を書いていた記憶があります。その城戸賞のときに「君、ちょっと面白いからプロットを書いてみる?」と言っていただいて。それでプロットを出したりしていたんですけど、そこで知り合ったプロデューサーの方がテレビ朝日のアニメの部署に移ることになったんですね。その伝手(つて)で声をかけていただいたのが『ご姉弟物語』なんです。

――安達 哲原作、やすみ哲夫監督のギャグアニメ。うえのさんにとって、アニメ脚本家としてのデビュー作ですね。
うえの そこでお会いしたやすみさんから、いろいろな作品に呼んでいただけるようになって。だから、それまでは派遣で働きながら書いていました。

――なるほど。で、影響を受けたアニメを3本挙げていただいたんですが、まずは『キャンディ・キャンディ』でしょうか。
うえの 小学校の頃だと思うんですけど、たぶん見ていたのは再放送です。夕方になると、親が家に帰ってくるまでテレビを見て待っている、みたいな環境で。まわりの同級生もみんな見ていて、それこそ毎日、『キャンディ・キャンディ』が始まるから帰ろうって。基本的に私は、女の子が自立して職を得る、みたいな話が好きなんですよ。『赤毛のアン』とか『若草物語』とか。人生が描かれているようなものが好きで。

――ファンタジックなものではなくて、地に足がついたものが好き。
うえの そうですね。とはいえ、『キャンディ・キャンディ』も王子様だらけなので、ファンタジーといえばファンタジーなんですけど(笑)。友達と「誰が一番好き?」みたいな話をするのも好きでした。

おチビちゃん

キミは泣いてる顔より

笑った顔のほうがかわいいよ

というセリフが好きで

――ちなみにうえのさんは誰派でしたか?
うえの 私はアンソニー派でした(笑)。ただ、アンソニー派なんだけど、テリーが好きな人の気持ちもわかる。テリーはワルなんですよ。でも、そこもすごく「わかる、わかるよ」って言いながら(笑)。あと、キャンディが最初に出会うのが丘の上の王子様で、泣いているキャンディに「おチビちゃん。キミは泣いてる顔より、笑った顔のほうがかわいいよ」って言うんですよ。そのセリフが好きで、誰かと喧嘩して泣いている友達とかに真似してよく使っていました。

――その頃、少女マンガもよく読んでいたんでしょうか?
うえの 読んでいましたね。私は『りぼん』派で、『ときめきトゥナイト』がすごく好きでした。あと『お父さんは心配症』とか『ちびまる子ちゃん』も大好きでした。シュールな日常ギャグは、影響をかなり受けていると思います。

――『キャンディ・キャンディ』は小学生の頃というお話でしたが、ほかに見ていて記憶に残っているものというと……。
うえの 当時はとにかく、いろいろなものを見ていた気がします。その頃、ウチにビデオデッキがやってきたので、それで録画したものを見ていました。『霊幻道士』とか。

――キョンシーが出てくる香港のドラマですよね。すごいブームになった。
うえの そうそう。あと小学校の3年生か4年生のときに、レンタルビデオの会員になったんです。1本700円くらいしたんですけど、それで借りて、映画を見ていました。

――ということは、やっぱりそういうものに対する興味が強かったんですね。『キャンディ・キャンディ』は、今のお仕事に影響を与えていると思いますか?
うえの どうなんだろう……。女の子が見ることを想定した作品をやってみたいと思ったりするので、きっと影響はあるんじゃないでしょうか。女の子が自立する姿を描く、そういう作品がやっぱり好きなんですよね。

――具体的にこれまでのお仕事で当てはまる作品はありますか?
うえの 女の子が主人公ということでいえば、吉成曜監督と組んだ『リトルウィッチアカデミア』ですかね。女の子たちが成長していく物語で、書いていてすごく楽しかったです。

――今でも『キャンディ・キャンディ』を見返しますか?
うえの いや、あんまり見ないです。というか、そもそもDVDが売っていないので、見る機会がないんですよね……。一応、海外で出たのは持っているんですけど、映像のクオリティがヒドくて(笑)。いつか普通に見られる日が来ると信じて、それまでは丘の上の王子様の声で「おバちゃん、笑った顔のほうがかわいいよ」って脳内再生でがんばります。endmark

KATARIBE Profile

うえのきみこ

うえのきみこ

脚本家

1975年生まれ。神奈川県出身。日本映画学校を卒業。主な作品に『クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』『王室教師ハイネ』『BNA ビー・エヌ・エー』など。脚本を手がけたオリジナルアニメ『エデン』が2021年5月27日からNetflixにて配信。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』が2021年7月30日に公開された。

あわせて読みたい