Febri TALK 2021.04.21 │ 12:00

うえのきみこ 脚本家

②子供たちだけで見に行った
『のび太の魔界大冒険』の記憶

脚本家・うえのきみこが影響を受けたアニメ作品を語るインタビュー連載。その第2回は今でも脚本を書くときの「理想」になっているという、劇場版『ドラえもん』シリーズの一作について。

取材・文/宮 昌太朗

やっぱり映画はテレビと違ってイベントなんですよ

――2本目は『ドラえもん のび太の魔界大冒険(以下、のび太の魔界大冒険)』。これも小学校のときですか?
うえの そうですね。小学校の3年生か4年生のとき。生まれて初めて、友達同士で見に行った映画が『のび太の魔界大冒険』だったんです。地元にある、横浜のムービルという映画館に見に行ったんですけど、それがすっごく楽しかったんですよね。作品単体じゃなくて、一緒に行った体験も含めて記憶に残っています。

――TVシリーズの『ドラえもん』は、もともと見ていたのでしょうか?
うえの はい、見ていました。映画も好きでしたし、あと、この頃に芝山努さんのお名前を覚えるんです。というのも『ど根性ガエル』だったり『日本昔ばなし』だったり――再放送だったのかもしれないですけど、自分がよく見るアニメや好きな作品のクレジットに芝山さんのお名前があることに気づいて。だから、最初に覚えたアニメ監督の名前は、芝山さんなのかなって思います。

――もともとクレジットを気にするタイプだったんですか?
うえの いえいえ、全然! まったく気にしなかったんですけど、監督って毎回、名前が出るじゃないですか。それで覚えちゃった、という感じですね。その後、TVシリーズの『ドラえもん』はだんだん見なくなっていったんですけど、劇場版は芝山さんが監督をされていた頃くらいまでは、わりと見ていたと思います。

――少し話を戻しますが、そもそもどういう経緯で『のび太の魔界大冒険』を一緒に見に行くことになったのでしょうか?
うえの 「子供たちだけで行こうよ」みたいなノリってあるじゃないですか。「今度、『ドラえもん』の映画をやるから、みんなで見に行こうよ」って誘って。親も『ドラえもん』ならいいか、みたいなところがあって(笑)。お小遣いをもらって、みんなでバスに乗って。ちょっとした冒険でしたね。

子供って映画に夢中になると

思ったことを声に出していて

自然と応援上映みたいに(笑)

それがすごく楽しかった

――内容は覚えていますか?
うえの 覚えています。この作品で「パラレルワールド」っていう言葉を初めて知りました。みんなで一緒に見に行ったせいもあるかもしれないんですけど、劇場版のなかでも好きな作品ですね。なんというか、やっぱり映画はテレビと違ってイベントなんですよ。本当はよくないことなんですけど、上映中でも感情が声に出ちゃうっていうか……。

――あはは。
うえの 私、劇場版『クレヨンしんちゃん』の脚本を書いているんですけど、子供って映画に夢中になると「がんばれ!」とか思ったことを声に出していて、自然と応援上映みたいというか(笑)。その体験がすごく楽しくて。それこそポップコーンとかバラまきながら、きゃあきゃあ言って見てくれて……。静かな映画館で見るのもいいけど、やっぱり子供の映画って、こうあってほしいなって。『しんちゃん』の脚本を書くときは、あの感じ――劇場に来てくれた子供たちが楽しんでくれるといいなって、そう思って書いています。

――『のび太の魔界大冒険』のときの記憶が反映されているわけですね。
うえの そうですね。楽しかった記憶がしっかり残っているので。友達と一緒に見ると、チーム感みたいなのも出てくるじゃないですか。今の子供たちにもそういった、映画館という日常にはない体験、イベント感を味わってほしいです。

――レンタルビデオの会員になっていたという話がありましたが、当時は映画をよく見ていたのでしょうか?
うえの そうですね。なんでもよく見ていましたけど、今でも好きな作品というと『グーニーズ』とか。

――『グーニーズ』は1985年公開なので『のび太の魔界大冒険』とほぼ同時期ですね。
うえの もしかすると映画は、楽しいほうが好きなのかもしれないですね。深刻な映画って、面白いは面白いんですけど「二度と見たくない」って思っちゃうじゃないですか(笑)。現実はこんなに厳しいのに、映画でもこんなシリアスな気持ちにさせられるなんて、と思ってしまう。物語のなかだけでも、楽しい気持ちになりたいなって。

――あはは。『グーニーズ』のほかに、今でも繰り返し見る作品をひとつ挙げるとすると何になりますか?
うえの なんだろうな……。(マーティン・)スコセッシとか。

――めちゃくちゃシリアスじゃないですか(笑)。
うえの 言われてみればたしかに。『グッドフェローズ』とか劇場で見たら盛り上がりそうだし。好きなんですよね。endmark

KATARIBE Profile

うえのきみこ

うえのきみこ

脚本家

1975年生まれ。神奈川県出身。日本映画学校を卒業。主な作品に『クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』『王室教師ハイネ』『BNA ビー・エヌ・エー』など。脚本を手がけたオリジナルアニメ『エデン』が2021年5月27日からNetflixにて配信。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』が2021年7月30日に公開された。

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