TOPICS 2021.12.14 │ 12:00

ショートアニメ『でーじミーツガール』 丸紅茜アニメ制作への初挑戦①

沖縄を舞台に、ちょっと不思議なひと夏の出会いを描くショートアニメ『でーじミーツガール』。マンガ家・イラストレーターとして活躍する丸紅茜がキャラクター原案とシリーズ構成を務めているが、じつはアニメ制作は今回が初挑戦だという。インタビュー前編では、オファーを受けたときの気持ちやショートアニメの脚本作りについて聞いた。

取材・文/福西輝明

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

不安とハラハラから始まった初めてのアニメ制作

――丸紅さんが『でーじミーツガール』の制作に携わることになった経緯について教えてください。
丸紅 2019年に、私がデビュー作を描いたマンガの媒体宛にオファーがあり、マンガの担当さん経由でご連絡をいただきました。コミティアという一次創作のイベントで出した同人誌を田澤潮監督が見てくださり、そのご縁でご依頼くださったそうです。私が創作活動を始めるきっかけとなった思い入れのある創作物で、そこに目をかけてくださったというのは個人的にはとてもうれしかったです。ただ、プロ志望ではなく趣味でマンガやイラストを描いていたこともあって、当初はオファーが来たことが信じがたく、「私にできるのかな」という気持ちでいっぱいでした(笑)。

――最初のオファーはどのような内容だったのでしょうか?
丸紅 最初にうかがったのは「沖縄が舞台のご当地もので、不思議な出来事が起きるボーイミーツガール」程度のざっくりしたもので、内容は固まっていない状態でした。最初はイメージラフやキャラクター原案のご依頼だったのですが、いつの間にかシリーズ構成や脚本も私にやってもらえないかというお話になって……。なにぶん、私はアニメ制作の経験が皆無なので、本当に私に務まるのか、プロの目から見て使えるものを作れるのか不安でいっぱいでした。でも、結果的には大部分が採用される形となり、役目を果たせてホッとしました。

不思議なお話の中で描かれる、飾らない沖縄

――『でーじミーツガール』の物語を構成する際、どんなお話にしようと考えたのでしょうか?
丸紅 沖縄が舞台であること。不思議な出来事が起きるファンタジーの物語であること。10代の男子と女子が出会うこと。これら制作サイドからご要望いただいた3つの条件をクリアしつつ、毎回動きのある面白い画面作りができる内容になることを念頭におきました。物語のうえでは、傷ついた人や何かをあきらめざるをえなかった人が、心を癒せる場所としての沖縄を描ければと思いました。本作の登場人物であるすずきいちろう(?)は、念願の役者デビューをして人気が出てきたのに思うように活動ができなくなり、苦しくなって沖縄に逃げてきました。たくさんの方が何かを中断したり、あきらめざるを得なかったであろうコロナ禍にある現状を反映した、タイムリーなテーマになったのではないかと思います。

――沖縄を舞台として描く際、とくに意識したことは?
丸紅 方言や街の描写では、飾らない沖縄を描こうと意識しました。たとえば、主人公の舞星(まいせ)は那覇の現代っ子なのでコテコテのうちなーぐち(沖縄語)は使わず標準語に近く、イントネーションが違う程度と考えていました。逆にお父さんの海星(かいせい)やおばあちゃんのテル子はバリバリのうちなーぐちになっているかと思います。また、舞台となっている「波の上ビーチ」は観光客向けというよりは地元民が慣れ親しんだ場所ですし、平和通り商店街も路地を入れば地元民が日常的に買い物をするところです。そういう場所を意識的に盛り込むことで、沖縄の日常もお見せしたかったです。

――本作には空中を水の中のように泳ぐ魚や、建物を覆うガジュマルなど、不思議な要素が盛り込まれています。これらのモチーフはどのような発想から生まれたのでしょうか?
丸紅 もともと私が同人誌で描いてきた連作のイラストが元になっています。田澤監督もそれらを見て私にお声がけくださったと思いますし、その他の制作に携わる方々ともイメージを共有しやすいよう、なるべく自分が過去に描いたイメージの中から沖縄の魅力が伝わるシチュエーションやモチーフを選ぶように心がけました。風土や自然、何か不思議なことが本当に起きてもおかしくないと思うような土地の持つ魔力を描けたらと思いました。

90秒にアニメの魅力を詰め込みたくて

――初めてショートアニメのシナリオを作ってみて、どんなことに苦労したでしょうか?
丸紅 1話が90秒しかないので、できることがかなり限られていて苦労しました。毎回、たとえ時間は短くても何かしらは記憶に残るように、キャラクターのセリフも極力わかりやすく、短くシンプルに。そして映像として面白くて印象に残りそうなシーンを必ず入れるように心がけました。アニメの脚本自体が初めての挑戦だったので、時間を計りながらシーンを想像しつつセリフを音読するなど、90秒に収まるように素人なりに試行錯誤しました。

――アニメの脚本の構成は、普段手がけているマンガの構成とは別物なのでしょうか?
丸紅 多少は共通点があるのかなと思いました。ただ、アニメにはダイナミックな動きや音楽など、マンガとは違った魅力的な要素がありますので、なるべくそういう部分を優先的に盛り込みました。実際に完成したものを見せていただいた第1話、第2話は想像を上回るほど動きがダイナミックでキレイでしたし、日常のちょっとしたしぐさも細やかで、本当に素敵な映像に仕上がっていて感動しました。endmark

丸紅茜
まるべにあかね 沖縄県那覇市出身のクリエイター。『おくたまの魔女』(COMICポラリス)や『新人漫画家VS隔週漫画誌』(イブニング)などのコミックを執筆。また、イラストレーターとしても活躍しており、2019年に画集『ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK 丸紅茜』を刊行した。
後編(②)は12月16日掲載
作品情報

ショートアニメ『でーじミーツガール』
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  • © 波之上青年団/でーじミーツガール製作委員会