合格通知を受け取った日は、人生でもっとも幸せな日のひとつ
――IRySさんがVTuberやVSingerの存在を知ったきっかけを教えてください。そして、そのときにどのような印象を受けましたか?
IRyS (YouTubeの)おすすめ欄に出てきたキズナアイさんがきっかけでVTuberを知り、バーチャルユーチューバーというコンセプトやその技術に感銘を受けました。
――ホロライブプロダクションの存在を知り、興味を持ったきっかけを教えてください。また、ホロライブプロダクションに加入する前、ホロライブプロダクションにはどのようなイメージがありましたか?
IRyS 私がホロライブプロダクションを知ったのは、インターネットやYouTubeで、さくらみこ先輩が『グランド・セフト・オート』をプレイしている切り抜き動画や、戌神ころね先輩の「ゆびゆび」ミームを見かけたのがきっかけです。そういった頭から離れない動画をきっかけにYouTubeのおすすめ欄を見始めて、そのうち寝る前の2時間くらいホロライブの動画ばかりを見るようになりました。ホロライブのタレントさんたちは自分たちの活動が大好きで、配信の楽しさやリスナーとの交流の喜びを(配信を通して)共有できる素晴らしいエンターテイナーという印象です。メンバー同士もとても仲が良く、VTuberになるなら最高の場所としか言いようがないように思えました。
――ホロライブEnglishのオーディションの開催を知ったとき、応募しようと思った理由を教えてください。
IRyS 昔、ホロライブプロダクションが英語圏タレントのオーディションを初めて開催していたとき、そのことを知らず、応募の機会を逃してしまいました。なので、英語圏VSingerのオーディションが開かれているのを知ったときは、配信と同じくらい歌うことが大好きなので、このチャンスをつかまなくちゃと思いました。応募しないという選択肢は私にはなかったんです。
――「ホロライブEnglishのオーディションに合格しました」という連絡をもらったときは、どのような気持ちになりましたか?
IRyS 正直なところ、合格できるかあまり自信がなかったので、最初は信じられず、メールを読み間違えたかと思いました。合格したと理解するために、3回もメールを読み上げなければなりませんでした。いつもは緊張からしか鼓動が早くならない私の心臓も、生まれて初めて、幸せとアドレナリンで鼓動がものすごく早くなったんです。合格通知を受け取った日は、人生でもっとも幸せな日のひとつだと思います。
「ホロライブEnglish -Myth-」の先輩たちは、何かあったら頼っていいよと声をかけてくれた
――初配信に向けての準備中や初配信の当日、とくに大変だったこと、頑張ったことなどを教えてください。また、約9万人もの視聴者が見ていた初配信を終えた直後は、どのような心境でしたか?
IRyS デビューでいちばん苦労したのは、期待している何千人もの初見さんに対して好印象を与えられるよう、精神面で準備することでした。私はもともと自信がないタイプなので、デビューのときにみんなにどう思われるかがいちばん気になり、そのプレッシャーのせいでデビューの日を迎えるのが正直怖かったです。デビューまでの日数を数えては怖くなって、初配信1週間前からは文字通りほとんど眠れませんでした。デビューを無事に終えて肩の荷が下り、ホロライブEnglishのメンバーになったという実感が湧いて、最高の気分でやっと熟睡できるようになりました😆
――デビュー直後の時期、自身で「ここをアピールしたい」とか「ここが課題だ」と思って意識的に頑張ったことなどはありましたか?
IRyS 先ほど、デビュー配信を終えて素晴らしい気分だったと言ったばかりですが、じつは自分自身のパフォーマンスに満足したことは一度もないんです。正直なところ、物足りなさを感じて、大勢の視聴者とやり取りする際のアドリブ力をもっと鍛えたいと思いました。リスナーとの対話は配信者にとって重要なスキルだと思うので、まず努力したことは、すごく早く流れるコメント欄を読むことに慣れて、その中から適度なペースでコメントを拾い、会話を維持することでした。
――「ホロライブEnglish Project: HOPE」のメンバーはIRySさんひとりで、いわゆる同期がいないわけですが、デビュー前後の時期、活動上の課題や問題が出てきた際にはどのように解決していたのでしょうか? とくによく相談した先輩などはいますか?
IRyS 私は人と打ち解けたり、会話をしたりするのがとても苦手なんです。とくに相手のことをよく知らないうちは。だから、デビューしてしばらくは、先輩や他のタレントたちに自分の悩みを相談する勇気なんてありませんでした。にもかかわらず、「ホロライブEnglish -Myth-」の先輩たちは、私が初めて(先輩たちに)紹介されたとき、何かあったら頼っていいよと声をかけてくれて、とても心強かったです(それでもなかなか勇気が出なかったんですけどね・笑)。最終的に、姉に相談してアドバイスをもらったり、配信者としての技術的な問題を解決するためにインターネットで何時間も検索したりしました(笑)。
音楽が趣味以上のものになったのは、日本のアニソンやボーカロイドというジャンルに出会ってから
――英語に加えて日本語も堪能なIRySさんは、非常に幅広いホロライブプロダクションメンバーと交流を持たれていますが、「ホロライブEnglish -Council-」のハコス・ベールズさんとは、とくに仲良しな印象があります。おふたりがとくに仲良くなったきっかけは、何かあるのでしょうか?
IRyS 私とベー(ハコス・ベールズの愛称)の配信を見ている人はほとんど知っていると思いますが、私たちの関係はホロライブEnglishの他のメンバーと一緒に行った「Minecraft」のポータル建築コラボ配信がきっかけで、本当に偶然に始まったんです。その配信の中で、冗談で「喧嘩している夫婦」の真似をふたりでしたのがきっかけで「BaeRyS」というカップリングが生まれ、親友になりました。きっかけは偶然でしたが、あれ以降ベーがDiscordでフレンドリーなネズミのように私に連絡をくれるようになり、コラボ配信などの配信開始前によく話をするようになりました。これは何度も話したことがあるのですが、私はベーの同期ではないのに同期系のイベントにも参加させてくれたり、議会の名誉会員として歓迎してくれたりと、今でも大変お世話になっているメンバーなんです。
――IRySさんの歌声はとても魅力的ですが、どのようなきっかけで歌うことが好きになったのですか? また、その頃、とくに好きだったアーティストや曲をおぼえていますか?
IRyS 子供の頃から歌うことが大好きで、車の中でラジオに合わせて歌ったり、シャワーを浴びながら作った曲を歌ったりしていました。近所迷惑にならないよう静かにしなさいと親に怒られるくらい。でも、音楽を趣味以上のものとして追求するようになったのは、日本のアニソンやボーカロイドというジャンルに出会ってからでしたね。
――オリジナルソングを制作する際に大事にしていることはどのようなことですか? また、IRySさん自身が意識していることだけでなく、クリエイターによく伝えていること(お願いしていること)はあるのでしょうか?
IRyS シンガーとしてオリジナル曲を作る際に重要なことのひとつは、以前の曲ではあまり実践できていなくて最近になって理解したことですが、自分の声域に合った曲を作るということです。デビュー曲の「Caesura of Despair」をはじめ、序盤のオリジナル曲のいくつかは、私の歌手人生でもっとも歌うのが難しい曲でした。その苦労の中で、レコーディングでもライブでも、自分の声域に合わせて曲を作ってもらうことが、曲をうまく歌えるようになるための秘訣だということを学びました。自分のオリジナル曲を生配信で歌うのが大変だって告白するのは、正直言って恥ずかしいですし、今後の楽曲制作で一層気をつけるべきだと学びました。また、自分のキーや声域に合った曲であれば、より感情移入しやすく、深みのある歌い方ができると気がついたんです。もうひとつ、歌詞の重要性も学びました。子供の頃は、正直、歌詞はあまり聞かず、メロディーだけで好きな曲を選んでいました。でも、音節やメロディーに合った滑らかな歌詞の重要性を知ったので、最近は、とくに英語の歌詞の場合、クリエイターに対してより具体的に歌詞のディレクションをするようになりました。
――音楽活動に関して、直近の目標と将来的な目標を教えてください。
IRyS 主にふたつの夢があります。ひとつは、アニメやゲームの楽曲を担当すること。もうひとつは、メジャーレーベルからフルオリジナルのアルバムをリリースすることです。どちらも大きな目標なので、正直まだ遠い存在に感じていますが、歌手としていつか達成できたらいいなと思います。
新デザインのお披露目は最高の気分
――IRySさんは幼い頃から日本の文化に触れる機会があったそうですが、とくに好きだった思い出深い日本の作品(アニメ、マンガ、ゲーム、音楽など)はありますか?
IRyS 小さい頃は『ポケモン』や『美少女戦士セーラームーン』、『とっとこハム太郎』などを主に見ていましたが、本当の意味で初めてオタクになったのは、両親から「読書習慣をつけるために1冊くらい本を買え」と言われ、本屋で買ったマンガ『ラブひな』の第7巻がきっかけでした。両親はまさかこんなニッチな日本のマンガ(たぶん本とは呼べない)を手に取るとは思っていなかったみたいですが、とにかく何か読ませようとして文句を言わなかったのだと思います。この本を選んだいちばんの理由は、表紙に描かれた大きなアニメ目をした女の子が可愛かったからで、私が初めて一気読みした本でもあり(それまで知らなかったシリーズの第7巻目だったにもかかわらず)、その後、マンガやアニメにのめり込むようになり、可愛いアニメの女の子が出てくるような画風のものは、何でも見るようになりました。それがやがて『School Days』という素晴らしい伝説のシリーズと出会うことにつながるんです。
――2022年の9月にはホロライブの角巻わためさんと北海道に行ったそうですが、とくに思い出に残っていることを教えてください。
IRyS (「角巻わためのHave a nice day」という企画の)ロケ撮影だったため、普通の休暇や旅行とは違う感覚で、すべての経験がとても印象的でした。でも、とくに印象に残っている出来事は、私とわため先輩がひとりずつ体重計に乗って、ふたりだけの秘密である体重を見せ合いっこしたことです😀 お互いの体重を知ることで、なぜかわため先輩に親近感が湧きました(笑)。
――今後、日本で行ってみたい土地や興味のあるスポットはありますか?
IRyS 大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」はまだ行ったことがないので、いつか行ってみたいです! あと、沖縄は日本の中でもとくに綺麗なところで、他の地域とはまったく違う雰囲気があると聞いたので、いつか行って、海がどれだけ綺麗なのか見てみたいです!
――2022年11月27日には新デザインのお披露目配信が行われました。配信前の心境と、多くのファンが見守るなか、配信を無事に終えた感想を聞かせてください。
IRyS 正直、最高の気分でした。この1年間ずっと待ち望んでいたものだったので。redjuiceパパ(IRySのデザイン担当イラストレーター)は本当に素晴らしい仕事をしてくれて、新しいデザインを 「私らしく」してくれました。お披露目したことで、VTuberとしてのモチベーションも今まで以上に高くなりました!
――ホロライブEnglishのメンバーになってから、かなった夢はありますか?
IRyS 正直なところ、ホロライブEnglishのメンバーであること自体が夢のような話ですが、メンバーになってから何が実現したかというと、「ホロライブEnglish -Council-」とのコラボ配信に参加するようになってから「グループ」の一員になるという夢が本当にかなったことです。(九十九)佐命がデザインしてリリースされた「ちび3D VRChatモデル」もそのひとつですね。コラボ配信は、私がホロライブEnglishのメンバーとしてこれからも大切にしていきたいことです。
――配信のとき、いつも大切にしていることや意識していることはありますか?
IRyS 配信中はいつもポジティブな気分を保って、ネガティブな感情を配信に持ち込まないよう心がけています。つまり、気分が落ち込んでいるときは、配信しないようにしています。気分が乗らないときに配信すると、無理矢理感が出て元気のない配信になってしまうので、視聴者を楽しませる配信者としては避けたいです。自分が楽しくなければ、見ている人も楽しくないと思うんです。
自分の存在や配信が誰かの人生を支えたり、誰かの一日を少しでも良くしているとわかるとすごく幸せ
――IRySさんにとって、ファンの皆さん(IRyStocrats)は、どのような存在ですか?
IRyS IRyStocratsの身体は剣でできているので(ここで『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の壮大な音楽)、配信者としての自信や幸福の糧(かて)になってくれています。彼ら/彼女らがいなかったら、人としてこんなに幸せで達成感を感じることはなかったと思うし、今のような自信を感じることもなかったかなと。自分の存在が誰かの人生を支えている、自分の配信が誰かの一日を少しでも良くしている、そんなことがわかるとすごく幸せな気持ちになります。それを知ることで、配信者としてベストを尽くそうという気持ちになるし、彼ら/彼女らのためにもっと自信を持って、より良い人になりたいと思うようになるんです。
――IRySさんの配信が、リスナーにとってどのような存在になっていたらうれしいですか?
IRyS 私の配信が、ファンのみんなにとって自分らしくいられる場所、(少し大げさかもしれませんが)オアシスのような存在になればいいなと思っています。私の配信が誰かの人生に少しでもプラスになれば、そして落ち込んだときに来られる場所になればいいな、というのが正直なところです。
――IRySさんのYouTubeチャンネルで見られるアーカイブの中でとくに印象深い配信や、IRySさんのファンになったばかりのリスナーにおすすめの配信があれば、理由と一緒に教えてください。
IRyS VSingerとしての一面を視聴したい人には、最近のカラオケ耐久配信をおすすめします。ゲーム配信だと、主に『Titanfall 2」と『ロックマン2』の配信をおすすめします。アーカイブで楽しめるシーンがたくさんあると思いますし、どちらも素晴らしいゲームで、もっと評価されていいと思うので!!
――いつもIRySさんを応援しているリスナーに向けて、メッセージをお願いします。
IRyS IRyStocratsのみんなには、どんなときも私に寄り添ってくれてありがとうと言いたいです。本当に感謝してもしきれないほど、みんなからの応援に感謝しています。そして、ホロライブEnglishのメンバーとして、もっと楽しい思い出をみんなと一緒に作っていきたいです。