TOPICS 2023.03.24 │ 12:00

最終回直前! シリーズ構成・脚本 高木登に聞いた
アニメ『虚構推理 Season2』の魅力①

“怪異”たちの“知恵の神”である少女・岩永琴子と、“怪異”から恐れられる特異体質を持つ青年・桜川九郎。このふたりが“怪異”たちが引き起こす事件に【虚構】で立ち向かっていくミステリー作品『虚構推理 Season2』。1月から放送中の本作も、もうすぐ最終話。今回はシリーズ構成を務める高木登さんにインタビュー。前後編で作品の魅力をお届けします。

取材・文/岡本大介

ミステリーやホラーって意外に笑いと相性がいい

――第1期の放送は約3年前ですが、最初に原作を読んだ際の印象はいかがでしたか?
高木 とても楽しく拝読しました。ミステリーとオカルトが融合している世界観もそうですが、何よりも嘘をついて相手を納得させていくっていうアイデアがすごいなと驚きました。とても好みのテイストだったので、脚本をまかせていただけたのはうれしかったです。

――TVアニメはコミカライズ版を原作としていますが、マンガならではの魅力という点ではいかがですか?
高木 僕が言うのもおこがましいんですけど、片瀬茶柴(かたせちゃしば)先生は本当に絵がお上手なんですよ。人間以外の存在もたくさん登場しますが、そのデザインはどれも独創的ですし、純粋に絵の魅力に引き込まれました。

――琴子と九郎という主人公コンビについてはどんな印象を持ちましたか?
高木 それぞれがすごく「強い」キャラクターで、そこがいちばんの魅力じゃないかなと思います。ベクトルは違いますけど、琴子の「知恵」や「賢さ」は強大ですし、九郎の「不死」や「未来決定能力」もそう。このふたりが組んだときの安心感は半端じゃなくて、どんなピンチも絶対に乗り越えられる気がする。だからこそ日常描写でわちゃわちゃしていたり、くだらないことで言い争っているシーンというのは、ギャップが際立ってより面白く感じますよね。

――たしかにこの作品はコメディとシリアスのバランスが絶妙ですよね。
高木 そうですね。市川崑監督の「金田一耕助シリーズ」なんかも、不気味で怖い作風ではありつつも、わりとバカバカしいシーンも多い。ミステリーやホラーって、意外と笑いとの相性がいいんですよ。『虚構推理』も、まさにそうだと思います。

第13話は城平先生に書き下ろしてもらいました

――長編の『鋼人七瀬』をアニメ化した第1期と比べると、第2期は中編と短編のミックスで構成されています。
高木 第1期は『鋼人七瀬』を中心にして短いエピソードをいくつか足したものになりました。長編は『鋼人七瀬』だけですから、今回は必然的に中編と短編のエピソード中心になっています。

――第13話(第2期第1話)はアニメオリジナルエピソードですよね。まさに導入にぴったりな内容でしたが、これはどなたのアイデアですか?
高木 これは後藤監督からだったと思います。もともと僕が出した初期の構成案では第13話は別の原作エピソードを選んでいたんです。ただ、第1期の放送から3年の月日が経っているということもあり、もっとわかりやすい導入にできないかという話になって。最終的には原作の城平京(しろだいらきょう)先生にお願いして、このエピソードだけ新たに書き起こしていただきました。

――城平先生の原案なんですね。
高木 そうです。それもアニメ用のプロットではなく、短編小説の形で仕上げてくださったんです。

――なるほど。その他に、高木さんの初期構成案から変化した部分はありますか?
高木 エピソードの内容自体はほぼ変わっていませんが、エピソードの放送順は大きく変化しました。初期構成案では放送順と原作の時系列がリンクしていたのですが、もろもろのご意見で原作通りの並びではなくなった。その際、後藤監督の発案で、放送順はバラバラでも時系列は原作と同じにしました。

――そうですよね。第13話では、琴子と九郎の会話にピノキオ人形の話が登場するなど、アニメだけを見ていると、第18話になってようやく全容がつながる仕掛けになっていると感じました。
高木 アニメの第13話は、時系列的には第18話「電撃のピノッキオ」と第19話「あるいは星に願いを」よりもあとになります。今回は短編や中編のより抜きですし、そういう仕掛けは僕も好きです。後藤監督の提案に即「やりましょう」と。

――ちなみに「雪女のジレンマ」や「電撃のピノッキオ」「スリーピング・マーダー」などのエピソードの選出理由はありますか?
高木 「雪女のジレンマ」については、もともとの構成案ではもっと後ろのほうにあったんですけど、製作委員会側からのたっての希望でここに持ってきました。雪女のキャラクターの魅力が番組の導入として必要だということですね。「電撃のピノッキオ」はアニメ向きな見せ場もあるので、ごく自然に入れました。「スリーピング・マーダー」は原作でも重要な意味を持つエピソードですから、これは入れなきゃダメだろうと。長い会話劇が続くお話なので、果たしてどう受け止められるのかはちょっと不安だったんですけど、柳井祥緒(やないさちお)さんが手堅くまとめてくれました。

多くは鬼頭明里さんの早口に頼っている

――『虚構推理』シリーズはとても長セリフが多い作品です。脚本家からすると、尺の兼ね合いも含めて難しい作業なのかなと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?
高木 たしかに難しい作業ではあります。とても普通のアニメでは入らないセリフ量です。多くは鬼頭明里さんの早口に頼っている(笑)。ミステリーですから、どうしてもロジックの説明は必要です。『虚構推理』は特殊な作品ですから、余計にそれが必要になる。必然的にセリフ量は増えます。

――脚本段階でセリフを削ってほしいというオーダーはないんですか?
高木 明らかに尺に入らないところは脚本段階で削っています。その判断は会議の内容次第です。後藤監督は注文の少ない方ですが、絵作りと演出の手腕に関しては『地獄少女』の第1期でご一緒したときに瞠目(どうもく)しました。全面的に信頼しています。

――なるほど。インタビュー後編では、琴子と九郎の関係性について、さらに詳しく聞かせてください。よろしくお願いします。
高木 はい。お願いします。endmark

高木 登
たかぎ のぼる 東京都出身。映画やドラマなどの実写作品を経て、現在はアニメ脚本家として活躍。シリーズ構成を務めた主な作品は『BACCANO! -バッカーノ!-』『デュラララ!!』『となりの怪物くん』『ゴールデンカムイ』『キングダム』など。
作品概要

TVアニメ『虚構推理 Season2』
好評放送・配信中

  • ©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理2製作委員会