TOPICS 2023.03.25 │ 12:00

最終回直前! シリーズ構成・脚本 高木登に聞いた
アニメ『虚構推理 Season2』の魅力②

“怪異”たちの“知恵の神”である少女・岩永琴子と、“怪異”から恐れられる特異体質を持つ青年・桜川九郎。このふたりが“怪異”たちが引き起こす事件に【虚構】で立ち向かっていくミステリー作品『虚構推理 Season2』。1月より放送中の本作も、もうすぐ最終話。今回はシリーズ構成を務める高木登さんにインタビュー。前後編で作品の魅力をお届けします。

取材・文/岡本大介

琴子と九郎は一線を越えている!?

――第1期から第2期における変化と言えば、琴子と九郎の距離が少し縮まっているように感じます。とくに第13話(第2期第1話)では、琴子が九郎に対して「いかがわしいこともしてるでしょうが!」と、まるで一線を越えたかのようなセリフを言っていますね。
高木 作中で真相は明言されていませんが、僕はふたりはすでに一線を越えていると思っています。あくまで自分の解釈なので、本当のところはわかりません(笑)。でも、恋人同士の関係ってさまざまな形がある。九郎はそれをあまり出さない性格で、琴子のことは大切にしつつも、態度だけは変わらずにドライなんじゃないかと思います。琴子としては、そんな九郎の素っ気ない態度が物足りなくて、自分からガンガン突っ込んでいく。あのふたりならではのやり取りは、見ていて好きですね。

――第2期で、もっとも印象深いシーンやセリフは何でしょう?
高木 悩みますが、僕はこのふたりのコミカルなシーンがいちばん好きかもしれません。自分で脚本を書いていてもすごく楽しかったですし。とはいえ、この作品の本筋はミステリーやホラーですから、どうしてもそちらを優先させなくてはいけなくて、日常シーンは尺の都合でカットせざるを得ないことも多かった。欲を言えば、もっとバカバカしい日常をたくさん書きたかったなと思います。

――もし、自由にふたりの日常を書けるのであれば、どんなシチュエーションを書いてみたいですか?
高木 DVD特典のドラマCDで、ふたりのデートを少しだけ書いたんですけど、それはすごく楽しかったので、そんな話を書いてみたいです。一切事件が起こらず、ただひたすらふたりの一日を描くような。

――琴子と九郎の関係性は、今後も変化していくと思いますか? それとも今のままの関係が好きですか?
高木 変わるのかもしれないし、変わらないのかもしれない。今のままの関係も好きですが、進展しそうで進展しない、曖昧なままの彼らが魅力的なのだと思います。

やっぱり最後はいつもの日常で締めたい

――本作もそうですが、高木さんはオカルト要素のある作品を手がけることが多い印象です。もともと興味のあるジャンルなのでしょうか?
高木 もともと僕は自分のことをホラー脚本家だと思っていました。基本的に仕事はSFやホラーを中心に書いていきたいと。

――そうだったんですね。アニメの脚本家になったきっかけは何だったんですか?
高木 いちばんは今オンエアされているようなTVドラマに興味がなかったこと。ホラーやSF、ファンタジーやアクションなどの、いわゆるジャンル作品を継続的に仕事としてやる場所が、日本だとアニメや特撮ということになる。それで面識もなかった小中千昭(こなかちあき)さんをいきなり頼って、アニメの世界に入りました。

――個人的にはどんなホラー作品が好きなんですか?
高木 スティーブン・キングやディーン・クーンツのような、いわゆる「モダン・ホラー」です。サスペンスやミステリーなどのジャンルを横断したミクスチャー的な作品が好きで、エンタメ性の高いホラーが好きなんです。けれど、自分がこの世界に入った頃はJホラー全盛で、日本ではそういうものが出る余地がなかった。Jホラーのいわゆる「心霊実話テイスト」は「物語」との相性が悪くて、話を面白くすればするほど「怖くない」と言われて否定されてしまう。それが不満でした。ホラーはもっと豊かで面白いジャンルなんです。アニメならば、むしろそういうことにとらわれずに面白さを追求することができる。

――たしかにアニメはジャンルや表現の幅が広いですからね。
高木 『BACCANO! -バッカーノ!-』や『デュラララ!!』シリーズなどもジャンルを融合したミクスチャー作品でしたし、『虚構推理』もまさにそうです。自分自身が本当に面白いと感じる作品を担当させていただけて、とても光栄ですし、幸運なことだと思っています。

――なるほど。では、最終話の見どころについて教えてください。第20話から4話をかけて「スリーピング・マーダー」が描かれました。構成的にはここで終わっても良さそうな気もしますが、あえて最終話は短編で締めています。
高木 今回選んだ最終話のエピソードは変化球でありながら、いつもの日常感がありました。原作の魅力を端的に伝えている一編で、琴子と九郎の関係性もしっかり描かれている。これまでにいろいろな事件が起こりましたが、やっぱり最後は彼らの日常に戻したいし、それがこの作品に相応しいラストなのかなと。ぜひご期待いただければと思います。

――最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
高木 ここまで応援してくださってありがとうございます。自分自身、非常に好きな作品で、一視聴者としてもまだまだ続いてほしいしですし、第3期も制作してほしいと他人事のように願っています(笑)。どうか引き続きのご声援をなにとぞよろしくお願いいたします。endmark

高木 登
たかぎ のぼる 東京都出身。映画やドラマなどの実写作品を経て、現在はアニメ脚本家として活躍。シリーズ構成を務めた主な作品は『BACCANO! -バッカーノ!-』『デュラララ!!』『となりの怪物くん』『ゴールデンカムイ』『キングダム』など。
作品概要

TVアニメ『虚構推理 Season2』
好評放送・配信中

  • ©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理2製作委員会