TOPICS 2025.04.07 │ 12:00

OVA「SK∞ エスケーエイト EXTRA PART」
監督・内海紘子×プロデューサー陣によるメインスタッフ座談会②

OVA『SK∞ エスケーエイト EXTRA PART』の裏側について聞くスペシャル座談会。第2回は暦とランガ、実也の3人が登場する「雨と猫 コンビニアイス ソーダ味」と、高校時代の桜屋敷と南城をめぐる「本気(マジ)でマジになれること」の、2本のエピソードについて。作中に登場する手作りカルタの、意外な裏話も!?

取材・文/宮 昌太朗

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

カルタは60種類全部作った

――では、ここからは個々のエピソードについて聞かせてください。まずは暦とランガ、実也が登場する「雨と猫 コンビニアイス ソーダ味」ですね。
内海 実也を入れて3人で、となると、やっぱり何をやるかが難しくて。実也はゲームが好きだから何かゲームを……と思ったんですけど、とはいえテレビゲームは制作が大変なわりに画面的に味気なくなってしまうので、何か他のゲームはないかなと探したときに、カルタのアイデアが出てきたんです。カルタなら、映像的にも面白いものになるかなと。
瓜生 友達の家に行って、そわそわする実也をやりたい、という話もしましたね。
内海 そうですね。で、(暦の妹の)月日(こよみ)とのやり取りも描けたらな、と。恋愛要素というよりは、やっぱり年相応の実也が見られるのはうれしいな、と。暦は特段鋭いタイプではないんですけど、妹に関してだけはめちゃくちゃ鋭くなる、っていう(笑)。
瓜生 月日ちゃんが全然、実也に対して恋愛っぽい感じがないのが面白いですよね。むしろ、カルタのほうがテンションが上がっちゃう、みたいな(笑)。

――苦労したところというと、やっぱりカルタの中身ですか?
内海 そうですね(笑)。映像面は鴨居(知世)さんがバッチリやってくれていたので、私はカルタの中身を担当したんですけど、やっぱり大変でした。
竹本 カルタは全部で60種類あるんですけど、60種類全部作りましたもんね。
内海 しかも読み札と取り札があるので、最終的には60枚×2で120枚(笑)。
竹本 それぞれのキャラクターが書きそうな、カルタの内容を考えるという。
内海 どうしてもスケート関係で内容が被りがちだったので、バランスを見ながらボンズのスタッフさんやアニプレックスさんからもアイデアを募集して、その中から私の方で「これだ!」と思ったものを選ばせてもらいました。もちろん、自分でもいくつか提出して。
竹本 筆跡も一応、それぞれのキャラを反映しているんです。ランガだったら字がめちゃくちゃ下手だったり(笑)。
内海 そこまで力を入れて作ったおかげで、劇場で見ていただいたお客さんから「欲しい」と言っていただけて、みんなの苦労が報われました。もともと、商品化も見据えてしっかり作り込んでいたので、カルタが発売された際はぜひ皆さんで楽しんでもらえるとうれしいです。

――おお、それはファンにとってはめちゃくちゃうれしいですね。
竹本 作画的には、暦の双子の妹・七日(なのか)と千日(ちひろ)が動き回っているので、そこもぜひ見てほしいですね。最初の「グッとパーで分かれましょ」のところでも、じつはふたりともパーを出してたり(笑)。鴨居さんが丁寧に動きをつけてくれて。
内海 とくにこのエピソードがいちばん細かく動いていて私も驚かされました。原画の植野(千世子)さんの細かな動きと可愛らしいキャラクターが素晴しくて、そこにさらに鴨居さんが手を加えてくれていて。
竹本 おそらく相乗効果で、これだけ動き回ることになったんだろうなと思うんですけど。
内海 尺が足りなくてトメにしようとしたカットも、動きが可愛すぎてトメにできなかったこともあったくらい(笑)。こんなに妹ちゃんズが可愛らしいシーンになったのは鴨居さんと植野さんのおかげです。

桜屋敷と南城のジャージは絶対ダサい色がいい

――次は、桜屋敷と南城が登場する「本気(マジ)でマジになれること」。高校時代のふたりの関係が描かれています。
内海 第1期で、少し描かれていたふたりですが、実際に毎日、どういう会話をして過ごしていたかは未知数でした。ただ、高校時代の南城はなんとなく想像できたんです。たぶん、学生時代もそんなに変わらないだろうな、と。でも、桜屋敷は見た目から変わっているじゃないですか。
瓜生 ちょっとヤンキーっぽい。
内海 そうそう。見た目自体、本人は黒歴史だと思っているくらい、反抗期をイメージした見た目にしていました。だったら、性格も今よりちょっと尖っている感じなのかな、と。私の中でもその辺はふわっとしか想像できていなかったので、鴨居さんたちには苦労をかけたと思います。
瓜生 大人になったらやらなさそうなことをやらせたいよね、みたいな話は出ていましたよね。ラーメンの早食いとか、スポーツテストとか。スポーツテストに関しては、どんな種目があるのか、みんなで項目を挙げていって。
内海 あと見た目的に、体操服を着せたいというのはありました。今の桜屋敷や南城がこのダサいジャージを着ている姿は、絶対に見られないので(笑)。
瓜生 ジャージの色に関しては、かなり初期に決まっていましたね。「ジャージ:緑、エメラルド」ってメモに残っています。
内海 絶対、いちばんダサい色がいいんです!(笑)。

――スポーツテストの最後が、反復横跳びっていうのもいいですよね。
内海 本人たちはめちゃくちゃ速くやっているつもりなんだけど、傍から見るとそうでもない、みたいな(笑)。
瓜生 引きの絵で見ると、思いのほか動きがゆっくりなのも面白いですよね。あとふたりが喧嘩していても、周りの人たちがほとんど動じていない。本当に、ふたりはずっとこの調子なんだろうなっていうのが、伝わってきて。
竹本 最初の、教室で喧嘩しているシーンでお互いにモノを投げ合っているところとか、先生からチョークを当てられるところとか、ああいう演出を見るのは久しぶりだなって思いました(笑)。平成初期のアニメというか、ちょっとレトロ感があって。
内海 ヤカンが宙を飛ぶ、とか(笑)。
竹本 そうそう。あとふたりにチョークが当たったあと、エフェクトで桜の花びらが舞って、虎が出てくるとか(笑)。そういう細かいところが、すごくいいなと思います。
内海 あのあたりはやっぱり、鴨居さんですね。鴨居さん自身、ヌルヌル動かすというよりも、昔の限られた枚数で動かす、みたいなアニメがお好きなので。その感じがよく出ているなと思いました。そういうコミカルな話である一方で、じつはふたりがスケートを始めるきっかけになった話でもあって。
瓜生 じつはすごく重要なエピソードでもある。前半があれなんで、印象が薄くなっているかもしれないですけど(笑)。
竹本 冒頭のシーンで教室の机に座ってアンニュイな表情を見せる桜屋敷と南城。あのシーンがじつは現状のふたりのすべてを表現しているように、個人的には思いました。日々喧嘩したりして、にぎやかな学生生活を送っているけれど、どこかで虚無感を抱えている、みたいな。endmark

内海紘子
うつみひろこ アニメーター、演出家として『けいおん!!』『日常』などに参加した後、テレビアニメ『Free!』で初監督。初めてのオリジナル作品『SK∞ エスケーエイト』は、大きな反響を呼んだ。そのほかの監督作品に『BANANA FISH』『ぶっちぎり?!』がある。
瓜生恭子
うりゅうきょうこ 2008年にアニプレックスに入社。宣伝部から制作部へと移動し、プロデューサーとして多くの作品に携わる。これまでにプロデュースを担当した作品に『WIND BREAKER』『UniteUp!』『BANANA FISH』『SK∞ エスケーエイト』『王様ランキング』など。
竹本順仁
たけもとまさひと アニメスタジオ・ボンズフィルム所属。『文豪ストレイドッグス』(第4・5シーズン)でラインプロデューサーを務めた後、『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』にプロデューサーとして参加。『SK∞ エスケーエイト』第1期には、制作デスクとして参加。
作品情報

OVA「SK∞ エスケーエイト EXTRA PART」
2025年3月19日(水)発売

Blu-ray(完全生産限定版)
6,380円(税込)ANZX-16621〜16622
DVD(完全生産限定版)
5,280円(税込)ANZB-16621〜16622

■仕様
本編DISC(約25分)+特典CD

■収録エピソード
暦たちの日常の姿を描いたオムニバスストーリー
「雨と猫 コンビニアイス ソーダ味」

ある日の日曜日――いつものようにスケートパークに繰り出した、暦、ランガ、実也は突然のスコールに見舞われてしまう。暦の家に避難するも、そこで出会った一組のカルタをやることになって――!?
「本気(マジ)でマジになれること」

時は遡り、くすぶった日々を送る高校生の桜屋敷と南城。相変わらず張り合う2人が数々の勝負を重ねた先に、たどり着いたのは――
「Morning Routine」

これは、謎に包まれた愛之介と菊池の日常を、ほんの少しひも解く物語――
知られざるそれぞれのルーティーン、クロスオーバーする2人、その先にあるひと時に迫る。
「がんばれひろみちゃん!」

夜はアンチヒーロー、シャドウ。昼は花屋でがんばる、健気で優しい広海の日常を切り取った、ショートショート3作。