TOPICS 2025.04.08 │ 12:00

OVA「SK∞ エスケーエイト EXTRA PART」
監督・内海紘子×プロデューサー陣によるメインスタッフ座談会③

OVA「SK∞ エスケーエイト EXTRA PART」スペシャル座談会の第3回は、謎に包まれた愛之介と菊池の日常を描く「Morning Routine」と、シャドウこと広海の百面相が楽しい「がんばれひろみちゃん!」の、2本のエピソードの裏側に迫る。さらにBlu-ray&DVDだけに収録された、エンディング映像についても聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

気が緩んでいても愛之介はきっと絵になる

――次は、愛之介と菊池の日常を描いた「Morning Routine」。ちょっと変わった切り口のエピソードになっていますね。
瓜生 議事録を見ると、どうも私がモーニングルーティーンをやりたかったみたいなんです(笑)。たぶん、最初はメインキャラクターみんなのモーニングルーティーンを見たいね、という話だったと思うんですけど、そこから愛之介と菊池のふたりに絞ろう、ということになって。ただ、そのときは、画面2分割は作業的にも大変なので難しいって結論になったはずなんです。

――たしかに、作画を2画面分やらなきゃいけないんで、大変ですよね。
瓜生 内容を検討していくなかで、菊池がこういうキャラクターなのであれば、2分割でいけるんじゃないか、となったんです。あと、内海監督が「愛之介が髪を下ろしているところを見たい」っていうのも、あったと思います。
竹本 たしかに、髪を下ろしている愛之介はこれまで出てきていないですよね。
内海 それが、モーニングルーティーンというアイデアと合体した、という。
竹本 キャラクターデザインの千葉(道徳)さんに、新たにデザインを描き起こしてもらっているんですよね。
内海 気を抜いたときの愛之介って、どういう感じなんだろう、と。あと本編では菊池を描くだけの尺が取れなかったので、彼がどんなキャラクターなのか、わかるといいなというのもありました。たしか、慌て出すときの菊池の動きや表情については、鴨居さんと話し合った気がしますね。「遅刻遅刻~!」と、食パンをくわえるみたいなのは、さすがにギャグっぽくなりすぎるけど、全然慌てないのもヘンだし。動き自体はちょっと速いんだけど、表情はそれほど変わっていない、とか。まあ、愛之介に関しては想像しやすかったんですけど。
瓜生 想像通りでしたね(笑)。
内海 鴨居さんのコンテでは、気取った感じの愛之介として描いてくださっていたんですよね。でも休日の家の中、誰に見られているわけでもないので、もっと気を抜いた、素の愛之介が見たいなと思ってコンテを調整させてもらいました。普通の人なら気が緩んでいると絵になりませんが、愛之介だったらきっと絵になる。(鴨居さんからは)そこの塩梅(あんばい)が難しかった、とは言われました。
竹本 制作的な立場からいうと、意外と大変だったのが菊池。菊池は寝ているだけなんですけど、時間経過を表現するために、影つけや寝相が変わっていっているんです。
内海 色が本当に少しずつ変わっているので、チェックするのが難しくて。1カットずつでチェックしていくと気づかないんですけど、最後につながった映像を見ると「あっ、ここが間違ってる!」みたいな(笑)。
竹本 「どの菊池が正解なんだ!」みたいになっていましたよね。
内海 しかも最後の最後でそれがわかると、修正も大変で。
竹本 菊池は寝ているだけなのに、なんでこんな大変なんだろうと(笑)。

どんなことをしても「広海ならできる!」という謎の説得力がある

――最後は、「がんばれひろみちゃん!」。花屋で働く比嘉広海を描いたショートショート連作です。
内海 もともと本編でも、店長とのくだりがあったので、そこを元にしたお話は入れようということになったと思うんですけど……。でも、他に何か話し合いってしましたっけ?
瓜生 これがびっくりするほど、何もメモに残っていないんですよ……。
内海 店長が家に来て、シャドウの服を着た広海が対応するって、誰のアイデアだったんだろう……?
瓜生 アイキャッチ的に仕事を頑張る広海をやるということが決まって、たぶんあとはシリーズ構成の大河内(一楼)さんが頑張ってくれたんだと思います(笑)。
竹本 僕としては、ひたすら広海の顔芸を楽しむパートかな、と思って作っていました(笑)。

内海 たとえばランガや桜屋敷みたいに、顔がきれいなキャラクターは、やっぱり崩すのが難しいんですけど、広海に関してはかなり融通(ゆうずう)が利く(笑)。
竹本 思いっきりやっていますよね。
内海 ある意味、古典的なネタをてんこ盛りにした感じですよね。鴨居さんもすごく楽しんで作ってくれたし、現場のスタッフさんにも人気でした。首が逆さになっているところとか、身体がどうなっているんだろう?と思いつつ、でも広海ならできる!と謎の説得力がありました(笑)。

今しかできない妄想をしながら第2期を待っていてほしい

――あと今回のOVAのパッケージには、新たに制作されたエンディングが収録されています。こちらは内海監督が絵コンテ・演出を担当していますね。
内海 OVA用に瓜生さんから「新曲を作ります」と言っていただけて、だったらそれに合わせて映像も新しく作りたかったんです。しかも上がってきた曲を聞いているうちに、暦たちが冒険している姿が思い浮かんできて。それで、第1期のパッケージ封入ブックレットで、パッケージデザイナーの末岡(弥美)さんがドット絵の暦たちを作ってくれたのを思い出したんです。そもそもの発端は第1期でゲーム好きの実也が、暦たちのことをスライムとかトロルとか呼んでいたことが元になっているんですけど。

――そこがつながったわけですね。
内海 本編だったらさすがにここまで振り切れないんですけど、今回はOVAなので逆にやるならここしかない!と(笑)。タイトルもそれに合わせて「SKATERS’ QUEST(スケーターズ・クエスト)」にしてもらって、ゲームっぽいテイストにしました。

――ハッピーな曲調と合わせて、素敵な仕上がりになっていると思います。では最後に、第2期を待っているファンに向けて、メッセージをお願いします。
竹本 今の段階では、あまり何も言えないのですが……。『SK∞ エスケーエイト』はとにかく出てくるキャラクターがみんな濃い作品で。第2期に新しいキャラクターがもし出るとしたら、第1期を超える、もっともっと濃いキャラクターを作らなきゃいけないなと思っています。期待して、お待ちください。
瓜生 第1期の頃から「もし続きがあれば、こういうことがやりたいな」と話しながら作っていました。なので、第1期の中にもすでに第2期につながりそうな要素がいろいろと登場しています。ぜひ皆さんにも予想をしていただきつつ、どんなものが飛び出してくるのか、楽しみにしていただければと思います。
内海 実際、昨日も脚本の打ち合わせだったのですが、今、絶賛作業中です! 私自身、第1期では見られなかった新しい暦やランガたちの姿をいろいろ妄想しつつ、進めています。ぜひ皆さんも、今しかできない妄想をしつつ、気長に待っていただけるとうれしいです。endmark

内海紘子
うつみひろこ アニメーター、演出家として『けいおん!!』『日常』などに参加した後、テレビアニメ『Free!』で初監督。初めてのオリジナル作品『SK∞ エスケーエイト』は、大きな反響を呼んだ。そのほかの監督作品に『BANANA FISH』『ぶっちぎり?!』がある。
瓜生恭子
うりゅうきょうこ 2008年にアニプレックスに入社。宣伝部から制作部へと移動し、プロデューサーとして多くの作品に携わる。これまでにプロデュースを担当した作品に『WIND BREAKER』『UniteUp!』『BANANA FISH』『SK∞ エスケーエイト』『王様ランキング』など。
竹本順仁
たけもとまさひと アニメスタジオ・ボンズフィルム所属。『文豪ストレイドッグス』(第4・5シーズン)でラインプロデューサーを務めた後、『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』にプロデューサーとして参加。『SK∞ エスケーエイト』第1期には、制作デスクとして参加。
作品情報

OVA「SK∞ エスケーエイト EXTRA PART」
2025年3月19日(水)発売

Blu-ray(完全生産限定版)
6,380円(税込)ANZX-16621〜16622
DVD(完全生産限定版)
5,280円(税込)ANZB-16621〜16622

■仕様
本編DISC(約25分)+特典CD

■収録エピソード
暦たちの日常の姿を描いたオムニバスストーリー
「雨と猫 コンビニアイス ソーダ味」

ある日の日曜日――いつものようにスケートパークに繰り出した、暦、ランガ、実也は突然のスコールに見舞われてしまう。暦の家に避難するも、そこで出会った一組のカルタをやることになって――!?
「本気(マジ)でマジになれること」

時は遡り、くすぶった日々を送る高校生の桜屋敷と南城。相変わらず張り合う2人が数々の勝負を重ねた先に、たどり着いたのは――
「Morning Routine」

これは、謎に包まれた愛之介と菊池の日常を、ほんの少しひも解く物語――
知られざるそれぞれのルーティーン、クロスオーバーする2人、その先にあるひと時に迫る。
「がんばれひろみちゃん!」

夜はアンチヒーロー、シャドウ。昼は花屋でがんばる、健気で優しい広海の日常を切り取った、ショートショート3作。

  • ©ボンズ・内海紘子/Project SK∞ OVA