「ふわふわ好きのアヤベさん」もいつかアニメで描きたい
――『ROAD TO THE TOP』のストーリーで中心となるナリタトップロード、アドマイヤベガ、テイエムオペラオーについて、それぞれ魅力に感じる部分を教えてください。
Cygamesシナリオディレクター(以下、シナリオD) ナリタトップロードは99年クラシック戦線の中心的な存在です。当時もたくさんのファンから応援され、愛された名馬ですので、アニメでもぜひ視聴者の方に愛されるキャラクターになってほしいと思いながら制作していました。トレーナーとの師弟関係ともいえる絆にも注目していただきたいです。
――アドマイヤベガ、テイエムオペラオーについてはいかがでしょうか?
シナリオD アドマイヤベガはクール系のキャラクターで、非常に重たい設定を持っているので作劇上はシリアスな役どころが多いのですが、本質的な部分では面倒見のよいお姉ちゃんなので、そんな部分をナリタトップロードとの関係性で、少しでも見せられればと思っていました。一方で「ふわふわ好き」なアヤベさん(アドマイヤベガ)がアニメで動く姿も、いつかどこかの機会でぜひ描きたいと企んでいます。テイエムオペラオーはナルシストでコミカルな部分が前面に出がちなのですが、クラシックを終えて後に「世紀末覇王」と呼ばれるにふさわしい、カッコよく強いオペラオーを描きたいと思っていました。
Cygamesコンテンツディレクター(以下、コンテンツD) シナリオディレクターにたくさん語っていただいたので、私からはナリタトップロードについて。競走馬のナリタトップロードの魅力は、本当にたくさんの方に愛された馬ということだと思います。GⅠ1勝馬ながら、「名馬100選」などのアンケートにもよく挙げられますし、ファンの方も多くいらっしゃる競走馬です。『ウマ娘』のプロジェクトがスタートしたときにはじつはまったく存在していなかったのですが、やはりこれだけ愛されている競走馬ということで、ゲームのリリース前からナリタトップロードを描きたいと思っていました。ゲームでは1周年のタイミングで満を持して登場というかたちにさせていただきましたが、今回、アニメーションでも描けることになり、とてもうれしく思っています。
「みんなが主人公」という気持ちで作劇した
――それぞれ魅力を語ってもらった中でも、とくにナリタトップロードを中心に描くことになった理由は何だったのでしょうか?
コンテンツD 個人的な理由は先の回答で述べた通りです。あとは、3冠レース最後の菊花賞を勝っているのがトップロードだったので、作劇上の収まりがよかったということはありますね。ただ、ダービーをピークにすれば、武豊騎手いわく1ハロン(200m)を9秒で駆けることができたと言われる「高速の一等星」としてのアドマイヤベガを主人公することももちろんできますし、テイエムオペラオーが獲った1999年の皐月賞をピークにすれば、オグリキャップに端を発するクラシックレースと制度の歴史(※)という切り口でも物語を成立させられるかなと思います。機会があれば、そういった物語も描けるとうれしいですね!
- ※クラシックレースに出走するためには、事前に「クラシック登録」が義務付けられている。現在では期限が過ぎたあとでも追加登録料を支払うことで登録が可能になったが、この追加登録制度導入のきっかけになったのがオグリキャップである。地方の笠松競馬から中央競馬に移籍したのが登録期限後だったため、圧倒的な強さで連勝を重ねながらもクラシックレースへの出走がかなわなかった。1992年に始まった追加登録制度を使って初めてクラシックレースに優勝したのが、1999年・皐月賞のテイエムオペラオーだった。
シナリオD ナリタトップロードはTVアニメの第1期・第2期に登場しなかったので、アニメでは「完全な新キャラ」であったこと、現実の競馬において毎回僅差で負け続け、菊花賞で勝利した一連の流れ、そしてファンから愛された馬であったこと、ジョッキーや関係者たちの物語……それらを総合的に見て、全4話構成でクラシック3冠をやるとなったら中心はトップロードかな、といった感じで素直に決まりました。ただ、欲が出てテイエムオペラオーもアドマイヤベガもがっつり描きたかったので、気持ち的には「みんなが主人公!」なつもりで作劇しました。
他の「99年世代」たちのエピソードも盛り込みたかった
――TVシリーズ2作に続いて本作でも、実際の競馬を知っているファンならニヤリとできるエピソードが数多く盛り込まれていましたが、具体的にどのような資料を参照しているのでしょうか?
シナリオD これは『ROAD TO THE TOP』に限ったことではないのですが、どのウマ娘のストーリーを制作する際にも、さまざまな記事やネットの情報などをできる限り集めて執筆に臨んでいます。雑誌のバックナンバーなどの資料も開発現場にはたくさんあって、よく参考にしていますね。モチーフとなった3頭のエピソードはもちろん、それぞれの騎手の方々の関係性や、競走馬への思いなども非常に熱いものがあります。そういった数々のドラマを、アニメーションとして再構築したつもりです。実際の史実を振り返ってから『ROAD TO THE TOP』をご覧いただくと、また違った魅力を感じていただけるかもしれません。
――「アイデアはあったけれど、本編に組み込めなかった」というネタやエピソードはありましたか?
コンテンツD だいたいのアイデアは入れてもらいました! 強いて言うなら、99年世代には他にも魅力的な競走馬たちがたくさんいるのですが、ウマ娘として登場していない競走馬たちのエピソードは盛り込めず、歯がゆい思いをしました(笑)。
シナリオD 個人的にやりたかったことは全部入れられたかなと思っています。とくにダービーのあとのナリタトップロードの号泣シーンは絶対にやりたかったので、作画の力もあり印象的なシーンになっていてうれしかったです。
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