TOPICS 2022.07.19 │ 12:00

聖地巡礼のススメ2022③
舞台だけじゃない旅の「楽しみ方」とは?

聖地巡礼の魅力をFebri流に徹底解説するこの特集。第3回は旅をテーマに、舞台だけではない楽しみや、その街に適した移動方法など、旅全体を充実させるコツを紹介しよう!

文・浅野健司

聖地にはいろいろな楽しみが!

第1回の舞台の探し方、第2回の撮影の仕方を読んで、少し難しそうと思った人もいるかもしれない。だけどマニアックな部分はより楽しみたい人に向けたものであって、構える必要は全然ない。「あの街が舞台だっていうし、行ってみようかな」と、なんとなく足を向けても十分楽しめるのだ。休日の旅行にちょっと聖地を加えてみる。そんなイメージで気軽に訪れてみてほしい。とくに聖地として有名な街は、見どころもたくさんある。そこで、舞台以外にも押さえておきたいポイントを、いくつか見てみよう。

まずチェックしたいのは、作品関連のスポットやアイテム、イベントなど。イベントについては第1回でも少し触れたが、お祭りのようなものだけではなく、記念品がもらえるスタンプラリーや、モデルとなった建物に入れる見学会など、近年ではさまざまな催しが行われている。もちろん、開催されるのは特定の期間だけなので、気になる作品がある場合は、日頃から公式HPなどをチェックしておくといいだろう。コロナ禍によって中止になる場合もあるので、情報収集は大切だ。

関連スポットというのは、今回の場合、作品に関する展示などが行われている場所のこと。道の駅のような、地域と来訪者の交流拠点となる施設にあることが多い。また、作中に登場したお店に自然とファンが集まるようになり、持ち寄られたグッズがズラリと並んでいることもある。こういった場所には来訪者が書き込める、いわゆる“交流ノート”が置いてあることも。日付とともにメッセージを残せば旅の記念になるだろう。ときには作品の生みの親である、作者本人やスタッフの書き込みに出会えたりもする。こうした草の根的なスポットの情報を知りたい場合は、場所を探すときと同様に、現地のレポートを掲載した聖地巡礼ファンのサイトが参考になるだろう。

そしてアイテムは、作品とコラボしたグッズのこと。食べ物やお酒といった名産品を使用したものはお土産にピッタリ。工芸品とのコラボや、イラスト入りの地域振興券といった珍しいものを目にすることもある。現地でなければ手に入らないグッズは、帰ってからも聖地を楽しめる、うれしいアイテムだ。

2020年2月に開催された『ゆるキャン△』コラボイベント・本栖高校自由参観日の様子。学校のモデルとなった施設に入り、野クル部室や図書室などを見学することができた。

それから忘れてはいけないのがグルメ。風土と歴史が育んだ郷土料理を筆頭に、特産の食材や、新たな名物として売り出しているご当地グルメなど、その土地ならではの味は普通の旅行でも外せないポイントだろう。聖地巡礼の場合、作中で登場人物が食べている料理やお店が実在することも多いので、これもぜひ押さえておきたいところ。その際には休店日と営業時間をチェックして、せっかくの機会を逃さないようにしよう。

『ゾンビランドサガ』でおなじみ、ドライブイン鳥の一番定食。地元の人に愛される味を、登場人物たちと同じお店で食べられるのは、まさに巡礼の醍醐味。

交通手段は何がオススメ?

見たい舞台や行きたいお店が決まったら、あとはそこへ向かうだけ。しかし、聖地巡礼の場合、観光地化されていない場所が目的地ということも多いので、到着したけど車を停める場所がない……なんていうこともある。移動自体も旅の楽しみなので、電車に乗りたい人、愛車でドライブしたい人、それぞれの好みで選ぶのがもちろんベスト。それで回りづらいスポットが出てきたときは、弱点をフォローする工夫を考えればいいのだ。そのためにも、移動手段の違いによるメリット・デメリットをチェックしてみよう。

①公共交通機関+徒歩
この組み合わせのメリットは、なんといっても小回りが利くところ。駐車や駐輪の必要がないから、気になった場所へ気軽に立ち寄れる。聖地付近の路線は通学シーンで登場していたりするので、作中の気分にひたれるのもうれしい点だ。駅から離れた舞台へは行きづらいが、東京23区や県庁所在地のように発展した街なら、バスやタクシーを利用すれば解決することが多い。デメリットは移動に時間がかかることと、疲れること。都市部以外では、交通網の密度も問題になってくる。人口密集地から離れるほどバスや電車の路線は減るし、運行本数も少なくなってしまうので気をつけよう。

②自転車
徒歩より移動が早く、小回りも利くのが自転車。都市というほどの規模ではない街だと、舞台間に距離があることも多いため、非常に役立ってくれる。ネックになるのは、現地で用意する方法だ。いちばん簡単なのはレンタサイクルだが、どんな街にも必ずあるわけではないし、返却できる場所や時間にも制限が出てくる。折りたたみ自転車のような、車や電車に乗せられる車輌を所有している場合は、自宅から持っていくことを検討してみてもいいだろう。また、アップダウンの激しい地形は体力的に厳しいのと、あまりに離れた場所へは行きづらいのも難点。自転車が趣味というロードバイク乗りの人ならこの点もクリアできるだろうが、今度は車輌盗難の心配が出てくるため、街中での立ち寄りに気を使うことになってしまうのが悩ましいところだ。

③自動車またはバイク
車やバイクのメリットは、もちろん、長距離を移動できる点。市街地からかなり離れていて、付近にはバスも電車も走っていない聖地も存在するが、そうした場所もあきらめる必要がなくなる。『ゆるキャン△』のように舞台が県内外の広域にわたる作品では、とくに活躍してくれるだろう。また、運行ダイヤに縛られないのも利点。自由度の高いルーティングが可能であり、「この場所は作中と同じ夕暮れに訪れたい」というようなときにも融通が利く。

デメリットは、冒頭に挙げた駐車場所の問題だ。市街地にはたくさんあるコインパーキングも、街の中心から離れると途端に数が減ってしまう。そのかわり道路の駐停車が禁止されていないことも多いのだが、迷惑になりそうなら、なるべく避けたいところだ。こうしたときには、スペースを取らないバイクが力を発揮してくれる。機動力が高く細い道にも臆することなく入っていけるので、巡礼の際にはありがたい存在だ。

回りたいスポットの分布具合に合わせてそれぞれの手段を使い分けたいが、あえてオススメするなら、自動車+自転車、またはバイクだろう。たとえば、佐賀県全域が舞台になっている『ゾンビランドサガ』の場合、多くの舞台が唐津や佐賀の市街地に集中している一方で、車がなければ厳しい場所もあったりする。そんなときに自転車があると、“駐車場に車を止めて市街地を自転車で散策。自転車では辛い場所や離れた場所は車で回る”という手段が取れる。バイクは車と自転車の中間のような使い方ができるので、これもまた便利。趣味性の高い乗り物なので、声をかけられて話が弾む、なんていう副産物があったりするのも楽しい点だ。

移動の際の注意点は、ナビを過信しすぎないこと。場合によってはこんな道に案内されてしまうことも……。