TOPICS 2021.10.12 │ 12:00

TVアニメスタート!
先輩がうざい後輩の話 原作者・しろまんたインタビュー①

Twitterやpixiv、そして『comic POOL』で連載中のショートコミック『先輩がうざい後輩の話』が、この10月から待望のアニメ化。その原作者である、しろまんたへのインタビュー前編は、『先輩がうざい後輩の話』の原作コミックを描き始めた経緯や、主な登場人物の設定秘話について聞いた。

取材・文/福西輝明

ラブコメ成分がほしくて、自分で描き始めた

――『先輩がうざい後輩の話』の原作コミックは2018年の3月からTwitter上でスタートしましたが、そもそも本作を描き始めたきっかけは?
しろまんた 僕は以前から好きなゲームを題材にしたマンガや、謎の女子高生が世直ししていく『かとうちゃん』シリーズをTwitterに投稿していました。そんなあるとき、話題になっていた映画『君の名は。』を見て感動して、めちゃくちゃ『君の名は。』ロスになりまして。ああ、もっとああいうグッとくるラブストーリーを見たいと思った結果「よし、自分で描くか」と(笑)。それでできたのが『先輩がうざい後輩の話』の第1話だったんです。ただ、その内容は投稿するのがためらわれるくらいコテコテのラブコメで……。そこで僕が師匠と仰ぐさめだ小判先生に相談したところ、「いいんじゃない。投げちゃえよ!」と背中を押していただいたんです。それで思いきってTwitterに投稿したら、予想以上の反響をいただきました。もし、さめだ先生のあと押しがなかったらお蔵入りにしていたので、あれが運命の分岐点だったと言えますね。

――そこからどのように連載へと至ったのでしょうか?
しろまんた 第1話で多くの方から反響や感想をいただいたのと同時に、編集者の方からもいくつかご連絡をいただいたんです。その中でいちばん面白かったのが現在の担当編集さんで、この人と一緒にマンガを作っていきたいと思いまして、第2話を描く段階から内容について相談させていただくようになりました。それまでに描いていた『かとうちゃん』は、世にはびこる悪をかとうちゃんという女子高生(?)がエグい方法で懲らしめていくというもので、方向性としてはかなりニッチな作品でした。だから『先輩がうざい後輩の話』は自分が好きなシチュエーションやキャラクターを入れつつも、万人に受け入れられるものを目指して描いています。

――真の連載は2回目から、というわけですね。
しろまんた そうですね。今まで投稿していた経験から言って、第1話は注目を集めやすいんですけど、第2話以降はそれが難しくなるんです。だから編集さんについてもらっているのに、第2話の「いいね!」がひと桁台だったらどうしよう……と不安やプレッシャーでいっぱいでしたが、ある程度良い反応をいただけたので安心しました。ただ、このベタベタなラブコメで連載をどこまで続けられるのか……と最初は思っていたんですけど、気がつくといつの間にか第8巻に突入していました(笑)。今は主人公の双葉ちゃんと武田先輩だけでなく、周囲のキャラクターも個々に動くようになってきたので、続けようと思えばどこまでも続けられる気がします。

ちょっとした心理描写にみんなが共感できるものを

――毎回のお話を考える際に、とくに大切にしていることは?
しろまんた シチュエーションを考えるときは毎回「自分にもこういう瞬間があったな」とか「この気持ちわかるわ~」というように、読者のみなさんが自分の経験や感情と照らし合わせて共感したり、感情移入できる内容にしたいと思いながら作っています。たとえば、好きな人ができて、寝るときもその人のことが頭に浮かんで止まらなくなるとか、ちょっと話ができただけで「今日はいい日だったな」と思えるといった「甘酸っぱくも共感できる思い」をエピソードに込めるようにしています。僕の実体験にもとづくネタを盛り込むこともありますね。また、登場人物を描くときは、たとえば女子中学生は双葉ちゃん、高校生以降の女性は桜井さん、男性だったら風間さんというように、幅広い層の読者が自分自身を投影しやすいキャラクター像になるよう意識しています。

――先生の実体験にもとづくお話というと、たとえば……?
しろまんた 作中には雨宿りするお話がいくつかあるんですが、僕も昔、好きな子と一緒に雨宿りしてドキドキして、みたいなことがありまして。……うわー、恥ずかしいな!

――実際にあったリアルな体験だからこそ、読者の共感を生むポイントになっているんですね。しかし、毎回お話を4ページにまとめるのは大変ではないでしょうか?
しろまんた たしかに「もっとページ数があれば!」と思うことはありますね。もうちょっとお話を広げたいけど、泣く泣く要素を省いて4ページに収めることも多いです。でも、お話に要素を足していくよりも、「引き算」で余計なものをそぎ落とすほうが気が楽ですし、最後に良いものだけが残ると思います。

双葉と武田先輩は身近な人がモデル

――主な登場人物たちについてですが、彼らはどのようなキャラクターとして作ったのでしょうか?
しろまんた まず双葉ちゃんですが、わかりやすいツンデレキャラではありますが、リアルにツンデレの人がいるとちょっと引いてしまうと思うんです。でも、好きな人に対して素直になれなかったり、ヤキモチを妬いてつらくあたってしまうというのは、誰もが持っている感情のはずです。そのため、ツンデレの面だけを強調するのではなく、みなさんに共感していただける感情を主軸にしつつ、自分の気持ちに素直な女の子として作りました。成人女性ではありますが、身長やスタイルは女子中学生をイメージしていて、それに合わせて恋愛観も初々しい思春期の女の子として描いています。あと、じつは双葉ちゃんにはモデルとなっている人物がいるんですよ。

――そうなんですか!? それはどんな方でしょうか?
しろまんた 僕が高校生のときに、野球部のエースである先輩と、女子マネージャーである後輩のカップルがいたんです。その後輩ちゃんは、彼氏である先輩のことを蹴ったり叩いたりと「どつき漫才」みたいな感じで接しているんですけど、先輩がいないところではめちゃくちゃのろけたりするんですよ。そんなふたりの関係が端から見ていても面白くて。双葉ちゃんの武田先輩に対するあたりがキツいところは、その後輩ちゃんがモデルになっていますね。

――お話作りだけでなくキャラクター設定にも、実際に体験したことや出会った人たちのエッセンスを盛り込んでいるんですね。
しろまんた 僕のまわりには濃い人たちが多くて、ネタの宝庫なんです。そして僕はゲームが大好きなせいか、面白い人たちを「ゲームのキャラ」っぽくとらえている面がありまして。キャラクターやお話を作るときは、そういう人たちのことを思い出しながら描くことも多いです。

――それはまた、わかりやすいツンデレ娘ですね。では、その野球部の先輩が武田先輩のモデルになったのでしょうか?
しろまんた いえ、武田先輩のモデルは別にいるんです。僕が高校時代に所属していたバスケ部には3人の先輩がいたのですが、武田先輩の大らかで頼りがいのある性格は、その3人からいただいています。また、口調はバイト先の気さくな先輩から、ごつい体格は柔道黒帯である僕の父親からもらっていますね。武田先輩は、僕がこれまでの人生でお世話になってきた人たちの特徴を詰め込んだ集合体になっています。

作品情報

『先輩がうざい後輩の話』
好評放送・配信中

  • © しろまんた・一迅社/先輩がうざい製作委員会