TOPICS 2022.10.11 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」
第1回 仕事を始めてから「刺さる」ようになった山本彩さんの「JOKER」(後編)

山本彩の「JOKER」を取り上げながら、現在の心境を語ってくれた伊達さゆり。フォト&インタビュー連載第1回の最後となる後編では、ひとりの聞き手から立場を変え、同じアーティストとして「歌」と向き合う難しさを自らの言葉で話してもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/ha | za | ma

好きな曲は暗い曲が多い?

――「JOKER」以外に山本彩さんの曲で好きなものはありますか?
伊達 「レインボーローズ」という曲が好きです。これはもう、“ザ・ポジティブ”という感じのアップテンポな楽曲です。「JOKER」もパワフルな曲ですが、イントロを聞いた瞬間は「切ない曲なのかな」という雰囲気があるんですよね。「レインボーローズ」はイントロからもう「華やかな感じの曲なんだろうな」と思わせてくれます。曲名どおりにカラフルな世界観に似合う楽曲で、歌詞も自分とすごく合っていました。この曲もよく聞き返しています。

――伊達さんの好み的に、明るい曲と暗い曲、どちらに惹かれることが多いですか?
伊達 迷うなぁ……。6:4くらいで暗い曲のほうが好きかもしれないです(笑)。7:3でもいいくらいかも。それは小さい頃から変わらないです。みんなで歌ったり踊ったりするような曲は明るいほうが好きなのですが、ひとりで歌うのなら暗めというか、切ない曲のほうが好きです。山本彩さんの曲で言えば、「JOKER」は前向きになるまでの、ちょっと切ない期間を歌っていて、反対に「レインボーローズ」はそこを乗り越えたあとのハッピーな世界だと思っています。

憧れだったアーティストと並ぶ覚悟

――山本彩さんの他に好きな女性アーティストを挙げると?
伊達 母の影響で、安室奈美恵さんをよく聞いていました。母は本当に安室さんの大ファンで、ライブ映像をよく一緒に見ていましたね。引退された今では「本当にこの世に存在していたのかな」と思ってしまう、女神のような存在です。

――安室奈美恵さんは90年代に華々しくデビューして、休養や紆余曲折を経て「大人の歌姫」へと変貌していった印象があります。
伊達 私がリアルタイムで見ていたのは、余裕を持った大人の女性としての安室さんなのですが、子供ごころに「どの楽曲にも安室さんの人生が詰まっているな」と感じながら聞いていました。

――前編で「女性アーティストの曲が聞けなくなった時期があった」と言っていましたが、山本彩さんや安室奈美恵さんも含まれていたのでしょうか?
伊達 そうですね。そういうときは音楽そのものをあまり聞かないようにしているんですが、正確に言うと、頭の中でふとした瞬間にフレーズが流れたり、誰かの曲について考えてしまうことから少し離れたい、という感覚ですね。自分がお仕事として歌う立場になって、これからいろいろな活動をしていきたいと思う一方で「次はどんな壁にぶつかってしまうのだろう?」という大きな不安を感じていました。それは、今もそうなんですけど。

――なるほど。仕事として歌う以上、今までファンとして聞いていたアーティストの方々と比べられる立場になるわけですよね。
伊達 アーティストの皆さんはもともと才能があって、さらにものすごい努力をされてきている方々ですし、だからこそ世の中に楽曲が残って、歌声が残っているわけですよね。そう考えながら曲を聞いていると、「こんな努力が自分にはできるのかな」と思ってしまうんです。駆け出しの私が、普通に考えたら比べることすらおかしい人たちと自分を比べてしまう時期があって。歌のうまさとか美しさよりも、辛抱強さというか、夢に向かう思いの強さを比べてしまうんです。

――自分にそこまでの覚悟があるのか、ということですね。
伊達 すでに活躍されている皆さんと同じくらいの思いが私にあるんだろうか? ……そんな疑問を持ちながら歌うのは、なんだか失礼なんじゃないかなと思ってしまって。だから、今まで聞きなじんできた曲からも、自分の歌声からも離れたかったんです。

自分の好きなものを打ち明けるのは恥ずかしい

――誰かと好きな音楽の話をしたり、オススメしあったりすることはありますか?
伊達 「私はこういう曲が好き」というのは、友達にもあまり言ったことがなくて。なんとなく「このアーティストさんが好き」くらいの話はするんですけど、曲名まで挙げてしまうと、たとえば、歌詞の中に自分とリンクするものがあったから聞いているのかなとか、自分の心の中を見せているような気がしてしまって、あまり言えないんですよね。だから新しい曲との出会いは、イヤホンをつけてサブスクで黙々と探したり、友達がたまたま聞いていた曲を、その場では曲名を聞かずに歌詞を暗記して、あとから検索して調べるとか、ひとりで楽しんでいます(笑)。

――その傾向は子供の頃から変わりませんか?
伊達 そうですね。お気に入りのおもちゃがあっても、それでどう遊ぶかをあまり見られたくなくて、自分の中だけで楽しんでいたいタイプでした。どうしてもちょっと恥ずかしい気持ちになってしまうんですよね。

――そんな伊達さんが変わっていくことも期待しつつ、始まったばかりのこの連載への意気込みを教えてください。
伊達 今まで語ってこなかった話をしながら、私自身の気持ちを打ち明けているのですが、同時にいろいろな人に「わかるかも」を感じていただけるんじゃないかと思っています。音楽や自分が好きだと思うものに関連づけて、徐々に奥深くまで語っていけると思いますし、あとから一緒に「これが好きだったんだな」と振り返る面白さもあると思うので、ぜひ第2回以降も楽しみにしていただけるとうれしいです!endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。
関連情報

好評発売中の『Febri AUTUMN 2022』にも伊達さゆりさんのフォト&インタビューを掲載。
撮りおろし写真とともに20歳を迎えた心境をたっぷりと語ってもらっています。
こちらもお見逃しなく!