――『わた推し』という作品に触れた印象について教えてください。
芹澤　アニメのオーディションを受けるにあたって原作のコミカライズを読ませていただいたのですが、コミカルでテンポがよくてサクッと読める百合ラブコメ、という印象でした。とくに主人公のレイは憧れのクレア様に何を言われてもめげないどころか、「ご褒美！」とばかりに喜んでしまうという、かなりとんがった個性の持ち主で「絶対にこの子を演じたい！」と思いました。
愛美　レイとクレア様のやりとりを見ていると心癒される感じがして、読んでいる間はずっとニヤニヤしていましたし、最高です。
芹澤　癒されるよね……（笑）。でも、基本的にコミカルなんですけど、お話が進んでいくと意外と深いところを突いてくる作品でもあるんです。たとえば、第3話ではミシャがレイに「本当に女の子が好きなの？」とものすごくストレートな疑問を投げかけるシーンがありまして。それに対して、レイは今まで男の人を好きになったことがなく、自分が好きになる相手はみんな女の子だったと告白するんです。

愛美　いつも明るいレイが真面目なトーンでカミングアウトし始めた展開には、ちょっとびっくりしたのと同時に、レイのギャップにグッときました。
芹澤　コミカル展開も面白いんですけど、「恋愛対象の性別」や「身分の格差」などに正面から向き合っていく場面もけっこうあるんだよね。だから当初抱いた印象よりも、ずっとずっと深いところにテーマがある作品なんだとあらためて感じました。

――本作の主人公であるレイについて、おふたりはどんな印象を持っていますか？
芹澤　レイはすごくエネルギーにあふれた子で、いつもまっすぐで嘘がなく、とくにクレア様への愛情表現をストレートに表現する子です。レイとして転生してくる以前にゲームでこの世界を体験しているので、先々のことをよく知っているんです。その経験から、クレア様にことあるごとに「あきらめないでください」とお願いするんですけど、すべてはクレア様のためなんです。とにかく万事がクレア様中心で、明るくまっすぐな子に見えますが、本当の思いはどこにあるのかを読み取るのが意外と難しいキャラクターだと思います。
愛美　じつは、本音が見えにくいんだよね。自分の決めたことや欲望にすごく忠実なんだけど、突然、一歩引いた立場をとるときがある。それは自分の意志であえて引くときもあれば、誰かを想ってのことのだったりするときもある。もう第4話まで進んでいますが、本当のレイを私たちはまだ知らないのかも。

芹澤　クレア様のことが好き、という気持ちに嘘はないんだけど、本音が見えない。いつもおふざけ半分に見えるから、どこまで本気なのかわからない。それはレイがあえてそう振る舞っているようにも思えるんです。

――一筋縄ではいかないキャラクターですね。実際に演じるのは難しかったのでは？
芹澤　いえ、演じるのに苦労した部分はあまりなかったです。クレア様への「好きです！」というセリフが何度も出てくるんですけど、そこだけはレイの本音が伝わって、見てくださる方に共感していただけたらいいなと思いながら演じました。収録中は隣にクレア役の奈波（果林）さんがいたんですけど、めっちゃ面白くていい人なんですよ。だから、いつも心からの素直な気持ちで「大好きです！」って言えたんだと思います。

愛美　奈波さんは本当にめっちゃ面白い人だよね！　（芹澤）優ちゃんのボイスって、心にまっすぐ届く感じがするんです。だから「クレア様、大好きです！」っていうセリフがストレートに心に刺さるんですよね。クレア様は何度告白されてもなかなかなびかないですが、もし私が優ちゃんボイスで「大好きです！」って言われたら、すぐ好きになっちゃうと思います（笑）。