■座談会参加者(カッコ内は当時の役職)
葉鳥ビスコ(原作)
五十嵐卓哉(監督)
榎戸洋司(シリーズ構成)
髙橋久美子(キャラクターデザイン・総作画監督)
中山しほ子(色彩設計)
大薮芳広(制作デスク)
南雅彦(プロデューサー)
頭の中の葉鳥先生と対話をしながら脚本を書いた
――榎戸さんの中で印象に残っているエピソードというと……。
榎戸 僕の中では『ホスト部』に外れなしというか(笑)、全部面白くできたなって思っています。あと「不思議の国のハルヒ」(第13話)は、原作にも出てくるエピソードなんですけど、中身はアニメオリジナルで。そこは恐々と書いていた記憶があります。頭の中の葉鳥先生と「こんなことしたら怒ります?」と、対話しながら書いていました。
中山 「不思議の国のハルヒ」は、わりとスピンオフ的なエピソードなので、作り手としては楽しかったかもしれない。
髙橋 「たくさん泣いたな」ってセリフがすごい好き。
葉鳥 そうそう、私も大好きです。久々に見て、なんて美しいんだろうと思いました。
髙橋 あらためて「好きなエピソードは?」と聞かれると困っちゃうんだけど、第17話「鏡夜の不本意な休日」の「なまはげ」ですかね(笑)。怒っている鏡夜の後ろに「なまはげ」の中吊り広告がずらーっと出てくる。あと、ハルヒの家にみんなで訪ねていくシーンも、めちゃくちゃ笑いました。すごく貧乏な家で、頬がこけたハルヒが出てくるところとか。
『ホスト部』で「やっぱりアニメは楽しい」と思えた
――監督はいかがですか?
五十嵐 前々回(第2回)話した「環の無自覚な憂鬱」で、ハニー先輩が「化けねこ」と言うシーンがあって……。
葉鳥 あそこも大好きです!(笑)
五十嵐 前後のくだりを見ると、笑いが止まらなくなっちゃうんですよ(笑)。笠野田君を可愛くしようとして、ホスト部のみんなが猫耳をつけたりメイド服を着せたり、いろいろやって。で、舎弟の男の子が傘を届けに来るんですけど、その笠野田君の姿を見て、ガチャっとドアを閉める。……僕が話すと全然面白くないんですけど(笑)、フィルムで見るとめちゃくちゃ面白いんです。ハニー先輩の「化けねこ」ってセリフも可笑しくて、ぜひそこはちょっと見てほしい(笑)。
髙橋 声優さんも、皆さんすごくお上手でしたよね。
――宮野(真守)さんが環を演じていますが、それまでの彼の印象とはまたちょっと違う役どころでしたね。
五十嵐 宮野君にはちょっと不思議なところがあって、普通はバカなことをやりすぎると「ちょっとこれ引いちゃうな」となるものなのですが、彼の場合は、カッコつけてクールなことを言っても、あるいは逆にバカなことをやっても、彼独特の天然感で全然嫌味じゃなく聞こえる。ちょっと珍しい役者さんだと思いました。
南 宮野君は『ホスト部』の前に『交響詩篇エウレカセブン』でムーンドギーをやってもらっているんだよね。顔は男前なんだけど、話すとめちゃくちゃ訛っているっていう役で。その二面性みたいな部分が環に合っているんじゃないか、というのはあったんです。それこそ『ホスト部』で(役の幅が)パッと広がった感じがしますね。
榎戸 そういえば、坂本真綾さんは『ホスト部』に出会うまで、アニメの声優の仕事は自分の居場所ではないと思っていたらしいんですよ。でも『ホスト部』で「やっぱりアニメは楽しい」と思って、そこからアニメの声優の面白さに開眼したっていう話を聞いた覚えがあります。
五十嵐 えっ、そうなの!?
榎戸 僕にとっても『ホスト部』は本当に楽しかった。そういう作品があると、たとえつらいときでも「俺の人生には『ホスト部』を作っている時期があったんだな」と思い返して、なんとか頑張れる(笑)。
――『ホスト部』での経験が、その後にも影響を与えているわけですね。
榎戸 そもそも、五十嵐監督とボンズ、僕というチームは『ホスト部』から始まって、それが今でも続いているので(笑)。
五十嵐 縁があったんだと思うんですよね。僕は東映アニメーションにずいぶん長い間いましたけど、今年ついにボンズのほうが長くなりましたから。本当にずっとお世話になっているので、いつか恩返しができればと思うんですけど(笑)。
『ホスト部』は幸せな作品
――髙橋さんと中山さんはどうですか? 『ホスト部』での経験が、後の仕事に影響したり……。
髙橋 私の場合は『ホスト部』に至るまでが長くて(笑)。ただ、それまでは「いただいた仕事を楽しめるように」と心がけていたんですけど、『ホスト部』はすごくうまくハマったというか。自分がやりたかった仕事にいちばん近い作品だったと思います。こちらから合わせていくんじゃなくて、楽しんでできた。それは『ホスト部』だけかなあって(笑)。
中山 私は少女マンガ原作がほぼ初めてで、最初は明るくてちょっと薄くて、可愛く見える色づくりが苦手だったんですよね。なので、結構『ホスト部』で鍛えられた気がします。あと五十嵐さんと初めてご一緒したのがこの作品で。結局、同じ監督で何作も一緒にやったのは、五十嵐さんがいちばん多くなったんですよね。
五十嵐 いつもお世話になっています(笑)。
中山 それはすごく幸せなこともしれないと思います。
大薮 五十嵐さんは「いいスタッフが揃った」と褒めてくれるんですけど、僕は制作デスクとしてすごく力が発揮できたかというと、決してそうではなくて。ただ、『ホスト部』は本当にメインスタッフが皆さん、力のある方々ばかりで。ある意味、すごくシンプルなものづくりができた。本当にかけがえのない人たちが集まったなと思いますし、この作品を宝物にして、いつかこれを超えるものを作りたいなと思います。
南 会社としては、作品の幅を広げてくれたのが『ホスト部』だったんですよね。個人的にも第1話が大好きだというのはあるんですけど、加えて、今でもずっと愛され続けているのが印象的で。
榎戸 不思議な作品ですよね。アニメはやっぱり放送されているときがいちばん売れて、時間が経つにつれて売上が下がっていく。でも、『ホスト部』って下がらないですよね。
南 下がらない。……というか、またここから上がりそうなんだよね。
葉鳥 そうなんですよね。
南 中国でポップアップショップをやってもらったり。今でもちょこちょこ海外の商品が届くんですよ。ずっといろいろな地域で愛され続けている作品で、そこは本当にびっくりさせられています。
葉鳥 アニメの『ホスト部』は私にはないウェットな感じがあるんですよね。私がカラッとドライな書き方をしてしまうのに対して、色気があるというか。そこは取り入れたいと思いつつ、取り入れられなかった(笑)。『ホスト部』は「幸せな作品」だってずっと言っているんですけど、それこそ声優の皆さんが一緒にディズニーシーに遊びに行ったり(笑)、スタッフの皆さんもすごく仲がよくて。関わってくれた方がみんな「本当の部活動みたいだった」と言ってもらえる作品で。こういう作品を作ることが私の目標になったし、それが私にとっていちばんのご褒美だったと思います。
- 葉鳥ビスコ
- はとりびすこ マンガ家。主な作品に『千年の雪』『ウラカタ!!』『プティトゥ・ペッシュ!』『でたらめ妄想力オペラ』など。
- 五十嵐卓哉
- いがらしたくや アニメーション監督、演出家。主な監督作に『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 榎戸洋司
- えのきどようじ 脚本家。主な参加作品に『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』『文豪ストレイドッグス』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 髙橋久美子
- たかはしくみこ アニメーター、キャラクターデザイナー。主な参加作品に『カードキャプターさくら』『Witch Hunter ROBIN』など。
- 中山しほ子
- なかやましほこ 色彩設計。主な参加作品に『T・Pぼん』『モブサイコ100』『赤髪の白雪姫』『STAR DRIVER 輝きのタクト』など。
- 大薮芳広
- おおやぶよしひろ ボンズ取締役、プロデューサー。主なプロデュース作に『僕のヒーローアカデミア』『DARKER THAN BLACK』など。
- 南 雅彦
- みなみまさひこ アニメスタジオ・ボンズの代表取締役。『カウボーイビバップ』『鋼の錬金術師』など、数多くの作品にプロデューサーとして参加。



























