監督オファーには喜びよりも恐縮!?
――蓮井監督は『黒鉄の魚影(サブマリン)』で演出を担当して、今回が劇場版初監督となります。オファーを受けた際の率直な心境を聞かせてください。
蓮井 『黒鉄の魚影』が終わったあと、打ち上げくらいのタイミングで打診されたんですけど、自分は1990年生まれでTVアニメ『名探偵コナン』の放送開始が1996年なので、まさにドンピシャのコナン世代なんです。自分にとって『コナン』はあまりに大きな存在なので、「やったー!」と手放しで喜ぶというよりは、恐縮する気持ちがすごく大きかったですね。ただ、そうは言ってもお断りする理由はなかったので、もちろん二つ返事でお引き受けしました。
――本作はバイクアクションがメインですが、横溝重悟と千速のロマンスなど、盛りだくさんな要素があります。本作の骨格はどのように固まっていったのでしょうか?
蓮井 劇場版は例年そうなんですけど、まずは原作者の青山(剛昌)先生から根本的な軸になるアイデアや要望をいただいて、それに対してスタッフたちが肉付けしていくかたちで進んでいきました。具体的には「千速をメインでいく」ということですね。そこを起点として、千速をメインにするということは神奈川県警になるので、場所としても神奈川県に、そこはスムーズに決まっていきました。
――キャラと舞台が決まり、そこから物語が広がっていったんですね。
蓮井 ええ。先生からは「最後にこういう描写をぜひやってほしいんだ」というリクエストを提示してもらって、それに向かうお話を展開した流れになります。「ベイブリッジからバイクでジャンプしてヘリに乗り込んでほしい」「そのヘリをサッカーボールでボコボコにしてほしい」、などです(笑)。
――すごいオーダーですね。では、あのクライマックスのアクションに向けて、そこから逆算して物語を作っていったんですね。
蓮井 そうですね。厳密に言えば、ベイブリッジでド派手なバイクアクションをするというビジュアルイメージが念頭にあって、そこから「お姫様抱っこ」が加わった感じですね。
アクション大作にする意図はなかった!?
――本作はスリリングなアクションが最後まで続いて、最高の爽快感でした。バイクアクションをメインに据えるにあたって、映像のイメージはすぐに湧きましたか?
蓮井 僕自身はこれまであまりバイクシーンを描いたことがなかったので、最初はおっかなびっくりというか「どうしたらカッコよくなるかな?」という感じでした。ただ、幸いバイクの免許は持っていて身近ではあったので、バイクを描くこと自体への不安はなくて、そこはよかったですね。
――カッコいいバイクシーンを作るためにどんなところにこだわりましたか?
蓮井 まずは3Dチームに協力を要請しました。バイクでの高速移動となるとたくさんの背景を流さないといけないので、最初はそこを相談させてもらったんです。そうしたら「背景だけじゃなく、キャラクターもある程度ならいけると思います」と言っていただけて。できる範囲でキャラも含めて3Dで描写できたおかげで、たとえば主観目線のカットだったり、カメラをグリグリ動かせたシーンもあり、結果としてバリエーションが増えたと思います。
――数あるバイクシーンの中で、いちばん苦労したシーンはどこですか?
蓮井 シンプルに作業時間という意味で言うと、やっぱり冒頭の高速道路でのチェイスシーンになります。最初に作ったシーンだったので、そこで決めたことが後のシーンに適用されていくこともあり、試行錯誤しました。バイクの動かし方やカメラの雰囲気など、3Dチームとともに時間をかけてルックを決めていきましたね。
――あのシーンは、脚本では逃走中のカップルはバイクではなく自動車に乗っていたそうですね。
蓮井 そうですね。ただ、どう考えてもバイクで車にダメージを与えるのは厳しいなと(笑)。いっそのことバイクにしちゃえば、タイトル(ハイウェイの堕天使)との親和性も高まる気がして、僕のほうで変更させてもらいました。脚本の大倉(崇裕)さんも快く任せてくださったので助かりました。
――千速が高速道路で壁を走ってしまうアクションも最高でした。
蓮井 あれはコンテを書いてくださった寺岡(巌)さんのアイデアですね。その直前でルシファーもジャンプしているので、千速がそれと同じことしてもしょうがないだろうと、より過激になりました。
――そこは観客をより楽しませようというエンタメ魂ですね。
蓮井 もちろんです。千速のアクションを現実の白バイでやったら、着地した瞬間に大破するのは確実ですから(笑)。
――劇場版『名探偵コナン』は毎回ファンタジーとリアルのバランスが絶妙ですが、監督としては「かっこよければOK」という感覚ですか?
蓮井 そのバランスはとても大事で、今作は特別OKということはないですね。印象に残る必要はありますが、あくまでこれまでの劇場版と同じ感覚で違和感がないものならOKだと思います。
――結果的に、最初から最後までノンストップなアクション大作になりましたね。
蓮井 今回はたしかにアクションが目立ちますけど、もともとアクションものにしようという意図はそこまでなかったんですよ。
――なるほど。バイクアクションがシンプルでわかりやすかったので、アクション大作だと感じたのかもしれません。
蓮井 そうですね。それがいいか悪いかは見てもらった人の判断になると思うんですけど、今回はとにかくそこに舵を切った感じですね。![]()
- 蓮井隆弘
- はすい・たかひろ 1990年生まれ。アニメーション演出家、監督。『モブサイコ100』シリーズなどで演出を務め、『真・侍伝 YAIBA』では監督を担当。『名探偵コナン』シリーズでは劇場版第26作『黒鉄の魚影(サブマリン)』で演出を担当。本作が劇場版初監督となる。


























