TOPICS 2026.05.27 │ 12:00

劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』 脚本:大倉崇裕さんインタビュー②

劇場版『名探偵コナン』の最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が現在絶賛上映中だ。本作は神奈川・横浜を舞台に、白バイ隊員の萩原千速が謎の黒いバイク「ルシファー」と激しいチェイスを繰り広げるバトルミステリー。今回は本作で劇場版の脚本担当が5作目となる大倉崇裕さんをお迎えして、作劇のロジックからアクションのシチュエーション作りまでを徹底取材。後編は「主人公・コナン」への回帰と、すべては「お姫様抱っこ」を成立させるための逆算という驚きの脚本ロジックについて語ってもらった。

取材・文/岡本大介

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

3つの事件をコナンが結びつけて主人公に

――ストーリーについてですが、今回は冒頭の幽霊ライダー(ルシファー)と少年探偵団の遭遇、ルシファーを追う千速、そして別の事情で人探しをする世良と、3つの視点が絡み合って進んでいきましたね。
大倉 ミステリー的な配置はすごく大変でした。とくに世良については「バイクアクションを描くなら世良も出そう」と決まったものの、どう頑張っても千速とは絡めないんですよね。千速とルシファーを取り巻くストーリーはスムーズに進む一方で、世良サイドの展開はなかなか決まりませんでした。

――結果的に、それを結びつけたのがコナンですね。
大倉 そうなんです。というのも、コナンの役割については思うところがあって。前回脚本を手がけた『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』は、監督やスタッフさんたちのおかげでとてもいい作品になったという自負はあるんですけど、一方でコナンの扱いに悩んだ作品でもあったんです。とくに怪盗キッドと服部平次が出てくると、子供であるコナンがどれだけ頑張っても、やっぱり彼らのキラキラには敵わない場面が出てきてしまうんですね。

――キャラ渋滞というか、探偵多すぎ問題ですね。
大倉 まさに(笑)。そういったこともあり、今回は絶対に「コナンこそが主人公である」という軸を守りたかったんです。そう考えると、全然関係のない3つの出来事がじつはひとつで、それを結びつけるのがコナンなら、これはミステリーとして成立するなと思いついたんです。

――ミステリーとしても面白くなるし、コナンの主人公感もアップすると。
大倉 はい。千速がコナンのことを信頼しているという設定にも助けられましたけど、コナンを中心に据えることで、バラバラだったピースをグッとひとつにまとめることができたかなと思います。

すべては「お姫様抱っこ」を成立させるために

――とくにラストに向かっての畳みかけは本当にすごかったです。ベイブリッジを舞台にしたあのクライマックスは、どのように作り上げていったのでしょうか?
大倉 前編でも少しお話ししましたが、ベイブリッジで大がかりなバイクアクションがあり、最後は落ちてくる千速を重悟がキャッチすることが決まっていたので、すべての展開はそこに向けて逆算して作り上げていきました。お姫様抱っこをするための動線を考えて、重悟の乗ったミニパトはコナンたちとは別行動にして、逆サイドから橋に入らせたり、受け止めるには車の屋根が邪魔だから、トレーラーの下に潜り込ませてオープンカー状態にしたりとか。

――重悟と行動をともにするのが、交通部の(宮本)由美と(三池)苗子だったのも印象的でした。
大倉 ここは最初は佐藤と高木だったんです。当初はもう少し(事件に絡んで)人が死ぬ予定で、捜査一課の刑事が横浜に応援に来ても不自然ではなかったんですけど、最終的にはそこまで死人が出ないシナリオになり、そうなるとこのふたりが神奈川県警にがっつり干渉してくるのもおかしいなと。でも、やっぱり警視庁のメンバーは出したいなと思っていたら「あ、交通部ならいいじゃん」と思いついたんです。しかも由美と苗子はドライビングテクニックもすごいという設定があるので、だったらそれを活かさない手はないと思い、ミニパトのオープンカー化にひと役買ってもらいました(笑)。

――なるほど。彼女たちも「お姫様抱っこ」のための立役者となったわけですが、他にもいろいろな仕掛けがありそうですね。
大倉 ありますね。「ベイブリッジからバイクが大ジャンプしてヘリに突っ込む」というアクションも決まっていたので、コナンと千速が単独行動を取らざるを得ない状況に追い込むため「速度が落ちると爆発する爆弾」を用意して、さらに「時限爆弾」という二段構えにしたり、とにかくアクションとオチを成立させるためにいろいろな手段を講じています。

――見ているぶんには気分爽快でしたけど、その裏側にそんな苦労があったとは。
大倉 ここまでネタバラシをすると夢も希望もなくなっちゃう気もしますが、ぶっちゃけるとそうなんです(笑)。ただ、一方では、今回は辻褄よりも勢いを大事にしたいなと思っていたので、移動時間や移動距離に関してはわりと曖昧にしています。そこは監督に苦労をおかけしたなという自覚もあるんですが、すごく素敵にまとめてくださって感動しました。結果として上手くいって良かったなというのが本心ですね。

――大倉さんがシチュエーションや展開を作り、蓮井監督がそこにアクションを肉付けしていくという見事な連携技だったんですね。
大倉 僕はバイクの免許を持っていないので、バイクを使ったアクションについてはあまり想像ができなくて、そこは監督に全面的にお任せしました。冒頭の高速道路でのチェイスシーンも、僕の脚本では逃げるカップルはバイクではなく車に乗っていましたし、アクションも高速道路だけで完結していたんです。カップルたちの車をバイクにしたり、ジャンプして下道に飛び降りるアクションを加えてくださったのは監督や演出陣なので、僕の想像を超えて面白くしていただいたなと思います。

――最後に、これから映画を見るファンに向けてひと言お願いします。
大倉 バイクアクションということで、疾走感をいちばん大事にしました。とにかく映画に没入して、千速とコナンと一緒にバイクに乗っている気分で駆け抜けていただきたいなと思っています。ニュースを見ると、本当に大変な世界情勢になってきていますけど、せめてこの映画を見ている間くらいはスカッとしてもらえれば、これに勝るものはないかなと思っています。endmark

大倉崇裕
おおくら・たかひろ 1968年生まれ。京都府出身。小説家、推理作家、脚本家。主な小説の著作に『福家警部補の挨拶』シリーズなどがある。『名探偵コナン』シリーズでは、劇場版第21作『から紅の恋歌』、第23作『紺青の拳』、第25作『ハロウィンの花嫁』、第27作『100万ドルの五稜星』の脚本を担当。
蓮井隆弘監督のインタビュー前編(①)は5月28日(木)公開予定
作品情報

劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
大ヒット上映中

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