数百年にわたり巡礼者が行き交う町
埼玉県の中で数少ない山間部にある秩父市は、山々の緑や渓谷の美しさが楽しめる、首都圏でも人気の観光地だ。また、札所(ふだしょ)と呼ばれる霊場を巡る「秩父三十四箇所観音霊場」も有名だろう。庶民の楽しみ、そして心の支えとして現代まで続くこの札所巡りは、室町時代にはすでに始まっていたというから、その歴史の長さに驚くばかりである。
しかし、何より見逃せないのは、この町がアニメ『あの花』の聖地であること。放映以来訪れる人は後を絶たず、舞台になった場所を探すファンの姿をいたるところで見ることができるのだ。地元の人たちもそんなファンを温かく迎えてくれている。取材の際にも、親切に声をかけて場所を教えてくれたほどで、作品と聖地の理想的な関係を見たような気がした。
新たな巡礼者の姿は、『あの花』という作品と共に、すっかり秩父の町に溶け込んでいるのだ。
山あいの町らしく、中心部には新旧の民家や商店がひしめき合うように並んでいる。しかし、それが窮屈ではなく、不思議な落ち着きを持っているのも秩父の魅力のひとつ。
1.秩父駅付近の踏切
映画の冒頭。消え始めためんまを背負ってじんたんが駆け抜けていくという、胸を締め付けられるようなシーンで登場したこの場所は、秩父駅の近くにある。撮影ポイントの歩道はお店の駐車場入り口にもなっているので、車には細心の注意を払おう。
2.秩父駅バスロータリー
めんまの弟である聡志に、じんたんが蒸しパンを届けるこのシーンは、場所がわかりやすく撮影も比較的しやすい。周囲にあるバス停や自動販売機などは作中と微妙に変わっていたりするので、訪れた際にチェックしてみるのも面白いだろう。
3.バイト先への道
こちらはじんたんとあなるがバイトをするゲームショップへの道。この付近は番場商店街というエリアで、メインストリートには石畳のおもむきある町並みが続いている。じんたんがバイト帰りに駅へ向かうシーンでも登場しているぞ。
4.どこいくべぇ
この灯籠のようなものは、意匠をこらした外観に町の観光スポット案内が刻まれており、中央にはそれぞれ違った開運アイテムが置かれている。その名も『開運案内板・どこいくべぇ』だ。秩父の町に百個以上も配置されているので、探して歩くのも楽しい!
5.夕暮れの公園とあなるたち
上の『どこいくべぇ』の奥に見えていたのがこの公園。幼いころのゆきあつとあなる、そして奥にある電柱の影には、つるこの姿も見える。3人の距離感と、引きずり続けた想いが現れた見事なカットだ。
思いを綴る交流ノートに旅の足跡を残していこう
聖地を巡っていると、よく目にするのが交流ノート。こういったものはずいぶん昔からあり、文字通り訪れたファンたちがさまざまなことを書き込み、文章を通して交流を行っている。作品の舞台に自分の感じた楽しさや喜びを書き残すのは、きっと良い思い出になるだろう。時々レアな聖地情報があったりするのも面白いのだ。
このノートは“ほっとすぽっと秩父館”に設置されているもの。ちなみに、ここでは巡礼MAP も入手できるぞ。
6.札所17番 定林寺
この場所は特に見覚えがある人も多いだろう。TV版のOPや作中に幾度となく登場したお寺、定林寺だ。境内のいたるところが作中そのままで、ファンならぜひ訪れたい聖地である。実際の境内は意外と狭いので、撮影の際には広角レンズがあると便利だ。
7.じんたんとめんま
秘密基地と並んで、定林寺は小さい頃のじんたんたちの定番の遊び場。実は写真のお堂の右側には、ゲーム機で遊ぶ地元の学生とおぼしき少年たちが映っている。なんだか作中そのままの雰囲気で、シャッターを切るときに思わず笑みがこぼれてしまった。
8.旧秩父橋にて
旧秩父橋もあの花ファンにとって外せない聖地。秘密基地へ続くこの橋は、超平和バスターズの5人がさまざまな思いを抱えて何度も渡った場所だ。こちらの橋は歩行者専用になっているので、ゆっくり安心して撮影や見学ができるぞ。
9.セメント工場
橋の欄干から見える景色も作中そのまま。奥に見えるのはセメント工場だ。町のあらゆる場所から見える武甲山と、そこから採掘される石灰岩を加工するセメント工場は、この橋と並んで秩父のシンボルともいえる風景だろう。
10.旧秩父橋下
劇場版で登場した新たな聖地といえば、やはり旧秩父橋の下にあるここ。作中はもとより、HPやポスターに使用されたキービジュアルでもこの階段が背景になっている。小鹿野方面へと橋を渡りきった右手に降り口があるので見逃さないように。
名物百景|わらじかつ丼
秩父の名物と言えば、劇中の会話にも登場していたこのカツ丼。まるで草鞋のような大きさからその名がついたという。通常のように卵でとじるのではなく、秘伝のタレにくぐらせたカツはサクサク甘辛でボリューム満点。巡礼で空いたお腹をたっぷり満たしてくれる逸品なのだ。
※画像はイメージです。
東京都心から西武鉄道の特急で1時間と少し。車でも関越道などを使って2時間程度と、都心からアクセスしやすいのが◎。 ※紹介したロケ地には私有地なども含まれます。巡礼の際には住民の方の迷惑にならないようにマナーある行動をお願いします。