TOPICS 2026.06.30 │ 17:00

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』スタッフリレーインタビュー⑫
メインキャスト座談会(後編)

ついに最終回のオンエアを終えた『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(以下、上伊那ぼたん)』。インタビュー連載の最終回となるメインキャスト座談会の後編では、TVアニメ後半のエピソードを振り返りながら、演者の立場から作品を総括してもらった。キャスト陣が想像する「未来の彼女たち」の姿とは……?

取材・文/太田祥暉(oriminart)

ジンランにはもどかしさもあったのかもしれない

――前編に続いて、TVアニメ後半のエピソードについても、いろいろとお聞きできればと思います。第6話からはジンランが登場し、人間関係を整理し始めました。
河瀬 皆さん仲よしだけど、どんな関係性なの?という純粋な疑問を、彼女は抱えていたと思うんですよね。察しもいいと思うので、このままなのはどうかと思うよ、というもどかしさもあったのかもしれません。だからこそ、まっすぐ話をして流れを整えていったのがジンランだったと思っています。第6話から参加だったので緊張もしていたんですけど、皆さんが「やっと来たね」みたいな雰囲気で迎え入れてくださったので、とても気楽に演じることができました。

――ジンランによって徐々に関係性が変化していったぼたんといぶきについて、ふたりを演じた鈴代さん、青山さんは何か意識していた点はありましたか?
青山 お互いが打ち解けていくにつれて、ちょっとずついぶきの声を下げるようにしていました。はじめましてのタイミングって、どうしても声が上ずりますよね。そこから徐々に声が低くなっていき、ふたりだけの空間になっていったと言いますか。
鈴代 私も自然とそうしていたかもしれません。でも、第9話ともなると、もう相手は寮長ではなくて「砺波いぶき」というひとりの人間である、というスタンスでしたね。それとは別のポイントだと、お酒に慣れてきたからこそ、バーとかにもなじんでいる空気は自然と意識できるよう心がけていました。いぶきと初めてバーに行ってからまだ数カ月しか経っていないのに、ジンランちゃんとふたりで行ったときには慣れているような感じだったりとか(笑)。
河瀬 (笑)。でも、第9話のラストはもう、セリフが素晴らしかったよね。あそこで「いいよ」じゃなくて「友達やめよ」って返すところが本当に大好きで。
青山 「いいよ」だったら受け身だし、「本当は嫌だったのかな?」 とも思ってしまうけれど、「友達やめよ」って言うことで、ちゃんといぶきのことを思っていたことが伝わった気がして。
天海 直接的でなくても、思いが伝わるいいシーンでしたよね。
河瀬 それは、一緒に歌うこともそうなんじゃないの?

――第10話のオリジナルエピソードですね(笑)。あかねとやえかがふたりでフジファブリックの「茜色の夕日」を歌うという。
鈴代 このふたりは最初から安定感があって……。でも、意外とやえかがあかねに対してジェラシーを抱えていて、いい関係性だなと思って見ていました。
富田 日々衝突しているようにも見えるんですけど、第8話や第10話にはふたりがずっと一緒にいる理由が詰まっていたように思います。
天海 第10話のあの展開は、ぼたんがいなかったら成立していなかったですよね。
河瀬 その本人は、メッセージを送ったスマホをカウンターに置いて、足を組んでお酒を飲んでいるわけですけど(笑)。
天海 個人的なことで言えば、まだ序盤の収録のタイミングだと、美憂とも距離があったんですよ。面識こそあったけれど、気兼ねなくなんでも話せるほどの間柄ではなかったんです。
富田 第10話の挿入歌レコーディングがきっかけで変わったよね。てっきり別日だと思ったら、同じ日の収録で。どちらかが歌っているときに、もう一方がその様子を見ているという状態だったんです。
天海 そこでいろいろと話した結果、現在では「マブ」になりました(笑)。

たまらないと感じた第10話以降のラストスパートぶり

――一方で、ジンランと郡上先輩の距離も近づいていきました。
河瀬 一緒にいて楽しいとか、気の許せる相手と結ばれるべきなのか、それとも叶わないかもしれない相手を追い続けるべきか、あの時点のぐじょせん(郡上)は気持ちがぐちゃぐちゃになっているんですよ。そんな彼女にゴッホの手紙の一節を引用して「海に出よう」と……。
鈴代 お互い、その言葉でわかるのがすごいよね。
河瀬 エモいよね。大人なふたりだなと思いました。
寿 そのあとも本屋さんでプレゼントを買い合って、絵はがきを送ってほしいと言うじゃないですか。「あなたのことをより知っていきたい」と伝えるあの行動もよかったですね。第10話以降のラストスパートはもうたまらなかったです。
河瀬 第11話の冒頭で、ぐじょせんが初めてジンランとふたりきりで会ってくれたんです。いぶきに関係なく会ってくれたからこそ、あのシーンではジンランが目を輝かせているんですよね。とにかくかわいかった!

――終盤のエピソードでは、それこそ友達をやめたあとのぼたんといぶきの関係性もたまらなかったです。
青山 浮かれているときもありましたよね。
鈴代 空気がそうなっていた。ぼたんがいぶきのことを魅力的な人だと認識しているからこそ、友達をやめた先に何があるのかを、将来への漠然とした不安を含めて心配もし始めていて、ぼたんの新たな一面を知れたように感じたんです。ある意味、人間らしくて。
寿 その様子を見て、ぐじょせんに感情移入していた私は、第9話収録の記憶を失っているんですけどね(笑)。

――本作のイベントや動画収録など、お芝居以外でもさまざまな『上伊那ぼたん』の施策に携ってきた皆さんですが、その中で印象深いエピソードについてお教えください。
富田 この間、放送前後にABEMAで配信される『上伊那ぼたん、酒の肴になる話』を収録したときに「百年の孤独」を飲んだんです。そうしたら、私も天海も、台本を読めないくらいべろべろに酔っ払ってしまって。
天海 私はロック2杯だったかな?
河瀬 焼酎なのに結構飲んだね……。
青山 後ろに仕事はなかったの?
天海 もう夜だった! だからそのあと富田の家に行って、ワンちゃんのお散歩しようよ、って。
富田 私も気分がよかったから、「いいよ」って。
河瀬 鈴代さんも、私とyonigeさんとの4人で「酒の肴」の収録をしているときにお酒を飲んでいたんですけど、告知コーナーになったら「7月……なんて読むんでしたっけ」とか言い出して。
鈴代 唐突に読めなくなっちゃったんですよ(笑)。過去に泥酔したことは数えるくらいしかなかったんですけど、『上伊那ぼたん』のおかげで、お酒がただの飲み物ではなく楽しい飲み物だとより思えるようになってから、7回くらい泥酔していますね。

――お酒の飲み方に慣れている青山さんに泥酔しない方法を教えてもらうのがいいのでは……?
青山 私が教えられるのは、むしろ泥酔の方法ですから(笑)。記憶を飛ばす方法も伝授できます。
鈴代 記憶を飛ばすまではまだないかなぁ(笑)。いつかそこくらいまでみんなで飲みたいね。
河瀬 じゃあ、その飲み会の日はトミー(富田)の家にみんなで。
天海 最高。潰れましょう。

TVアニメの先の彼女たちも演じたい

――放送を終えた今、あらためて皆さんが感じた『上伊那ぼたん』の魅力について教えてください。
河瀬 各話で演出が異なったり、1話に3つくらいのエピソードが展開したりと、1クールとは思えない濃厚な作品になっていたと思います。キャストだけではなく制作にかかわるすべての方の愛が詰まった作品になっていますので、その思いを受け取っていただけるとうれしいです。
寿 セリフ数が少ないエピソードもありましたが、それは生活描写を丁寧に描いているからなんです。そんな日常の中にある心の距離が愛おしいことを再確認する作品でした。これからBlu-rayも発売されますが、何周もご覧いただければうれしいです!
天海 『上伊那ぼたん』って、詩的な表現が多い作品だと思うんですよ。今後、ちょっとロマンチックに決めたいなと思ったときには、ぜひ『上伊那ぼたん』のセリフを引用してほしいですね。自分としては、お酒と音楽に詳しくなれたきっかけの作品になりました。二日酔いもこの作品を機に経験しましたしね。とてもありがたい出会いになりました。
富田 第1話時点から、どんどん相関図の様子が変わっていった作品ですよね。その変化が一番の魅力かもしれません。そんな様を声優として表現できたことは、得難い機会でした。お酒を全然飲めなかった私が「いいかも」と思えるようになったのは、本作があったからです!
青山 原作からそうですが、かなり余白がある作品なんですよ。膨大な日常の時間から切り取られた瞬間が本当に魅力的で……。こんなに濃密なお話をしているんだ、この一瞬ってかけがえのないものなのだとアニメを経てあらためて実感しました。そう思えるような熱さがいちばんの魅力かもしれません。
鈴代 上伊那ぼたんを演じられてとてもうれしかったです。第12話でピアスが出てきたときには「あの!?」と思った方も多かったと思うんですよ。そんなリンクがいろいろなエピソードで起きているのが『上伊那ぼたん』です。登場したお酒を片手に、あらためて見直していただくのも面白いかもしれません。ぼたんたちがもっと大人になったときに、きっとこの寮生活を思い出すと思うんですよ。彼女たちにとってのかけがえのない日々をを演じられて、とてもいい幸せでした。

――原作では第12話の先のお話も描かれているので、いつか皆さんがそのエピソードを演じる日が来ることを楽しみにしています。
富田 いつか、10年後の彼女たちも演じてみたいですよね。
天海 マンションを借りて、みんなでルームシェアしているかも。
河瀬 寮ごと買い取ろう!
青山 どうするんだ、大学生が入れなくなっちゃう(笑)。endmark

鈴代紗弓
すずしろさゆみ アーツビジョン所属。主な出演作に『ぼっち・ざ・ろっく!』(伊地知虹夏役)、『綺麗にしてもらえますか。』(金目綿花奈役)、『正反対な君と僕』(鈴木役)、『真夜中ハートチューン』(霧乃イコ役)など。
青山吉能
あおやまよしの 81プロデュース所属。主な出演作に『ぼっち・ざ・ろっく!』(後藤ひとり役)、『フードコートで、また明日。』(山本役)、『転生悪女の黒歴史』(イアナ・マグノリア役)、『春夏秋冬代行者 春の舞』(姫鷹さくら役)など。
寿美菜子
ことぶきみなこ ミュージックレイン所属。主な出演作に『けいおん!』(琴吹紬役)、『ドキドキ!プリキュア』(キュアダイヤモンド/菱川六花役)、『響け!ユーフォニアム』(田中あすか役)、『やがて君になる』(七海燈子役)など。
天海由梨奈
あまみゆりな 81プロデュース所属。主な出演作に『空色ユーティリティ』(茜遥役)、『帝乃三姉妹は案外、チョロい。』(帝乃一輝役)、『左ききのエレン』(三橋由利奈役)、ゲーム『ヘブンバーンズレッド』(東城つかさ役)など。
富田美憂
とみたみゆ アミューズクリエイティブスタジオ所属。主な出演作に『アイカツスターズ!』(虹野ゆめ役)、『かぐや様は告らせたい』(伊井野ミコ役)、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(院田唐音役)、『終末ツーリング』(アイリ役)など。
河瀬茉希
かわせまき アーツビジョン所属。主な出演作に『ゾンビランドサガ』(紺野純子役)、『くまクマ熊ベアー』(ユナ役)、『mono』(駒田華子役)、ゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』(桐生つかさ役)など。
作品情報


『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』
毎週金曜24:00~ TOKYO MX他にて好評放送中!

  • ©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会