Febri TALK 2021.07.02 │ 12:00

DÉ DÉ MOUSE ミュージシャン

③ジムシィに自分を重ねた
『未来少年コナン』

アニメキャラクターへの共感を創作活動への原動力にしてきたDÉ DÉ MOUSEへのインタビュー。完結編となる3回目は『未来少年コナン』について。70年代後半に作られたとは思えない作画や演出の素晴らしさに驚いたという彼が、なかでも想い入れたキャラクターとは?

取材・文/森 樹

ラストにはみんな幸せになるところがいい

――3本目は『未来少年コナン(以下、コナン)』です。昨年、NHKで再放送され、あらためて話題になりました。
 ちょうど僕がCDデビューしたとき、2006年~2007年くらいに見たんです。それまでは、とにかく古いアニメという印象しかなくて。画面もなんだか全体的に茶色で地味だし、僕が幼い頃から触れてきた80~90年代のきらびやかなアニメとはテイストが違うので、ちょっと敬遠していたところがありました。だけど、大人になってからジブリが好きになって、監督も宮崎駿さんなら見てみようと。そしたら、映像も内容もすごかったですね。その頃には、あのシーンのこの作画が……みたいなことを言い出す面倒くさいアニメ好きになっていたから(笑)。

――アニメーションとしての完成度は今見ても驚きます。
 エンディングも、シンプルな背景動画がなめらかに動いていてびっくりしました。勝手にお宝を見つけたような気持ちでワクワクしましたね。物語もそうだし、『千と千尋の神隠し』と同じアングルのカットがあったり、その後の宮崎監督の作品につながるモチーフがいろいろあって、そんなジブリ作品との共通点を探すのもすごく楽しくて。コナンというキャラクターも、パズーみたいじゃないですか。

――快活なイメージがありますね。
 あの真っすぐな、好きな人を守ろうという強さは『崖の上のポニョ』の宗介にも通じる部分がある。そういう視点で、当時は何回も見直しました。去年の夏に再放送があったときに久々に見たのですが、いちばんすごいのはもしかしたらジムシィかもしれないなと。

――そう思ったのはどうしてですか?
 『コナン』に登場するキャラクターはそれぞれに目標があって、守る人がいるんです。たとえば、ダイス船長も当初は対立しながらもモンスリーと惹かれ合うし、コナンもラナを守るために戦っていて、ラナもコナンに信頼を寄せている。

――相思相愛の関係になっていきますね。
 一方でジムシィはそれまでずっとひとりで生きてきて、はじめてコナンという友達ができる。だから行動をともにするのですが、映像上、コナンはラナしか見ていないじゃないですか(笑)。それでもコナンに同行するジムシィの健気な立ち位置に、すごくエモーショナルなものを感じたんです。絶対振り向いてもらえないけど追い続けるみたいな。endmark

振り向いてもらえなくても

やり続ける強さを

ジムシィに教えてもらいました

――見返りを求めないスタンスに。
 あっ、これは僕の人生と同じじゃん!って思いました(笑)。やっぱりそこでも自分を重ね合わせたんですよね……。

――ジムシィに共感したと。
 僕自身もミュージシャンとして音楽を作り続けてきて、作曲家としてもアーティストとしても、絶対に勝てない、そのポジションにはたどり着けないだろうなと思う人たちがいるんです。でも、それがわかっていても、彼らにずっと挑戦していきたいという気持ちを持っています。僕は「この人に勝ちたい」と思って勝てたことがないし、「超えたい」と思って超えられたことがないまま音楽活動を続けていて。ときにはそういう現状に脱力感をおぼえるというか、力が抜けることもあるけれど……振り向いてもらえなくても、やり続ける強さというのをジムシィに教えてもらいましたね。最終的にはジムシィのことが好きな女の子が登場するから、ちょっと救われました。

――テラですね。
 最後にいい感じになって、「うまそう」っていう相棒も見つけてこれまでの苦労が報われたなと。『コナン』が見ていて気持ちがいいのは、ラストにはみんな幸せになるところですね。主要キャラクターは誰も死なないし、そういうところも子供に向けたファンタジー、冒険ものとして成立しているのかなと。

――大団円を迎えますよね。
 大人になるとどうしても「そんなにうまくいかねーだろ」みたいな感情になるじゃないですか。だけど『コナン』では、誰かは必ず不幸にしなきゃいけない、みたいなリアリティを求めすぎるところがなくて、心が洗われます。たとえば、コナンたちがインダストリアに潜入するけれど、あの流れで誰かが命を落としてもおかしくないわけです。

――たしかに。
 とくにギガントに乗り込んで戦うシーンなんて、普通の人だったら絶対無理。コナンだからできるだろうなという気持ちになっているのが不思議だけど(笑)。

――コナンなら、この危機も乗り越えるんだろうなという気持ちで見ていますよね。
 そういう意味でも、安易に人を殺してしまうような演出って避けたほうがいいというか、人の「生き死に」を扱って感動させるというというのは、ものすごく気をつけて表現しなきゃいけないと思いました。それがなくても『コナン』は成立しているわけで。そういう考えは、音楽を作るうえでも重要です。

――安易に、過激に盛り上げるものは危険というか。
 僕はそういう音楽も好きなんだけど(笑)。今の時代、みんなストレスを抱えていますからね。『コナン』のように、きちんと起伏も緩急もあるけれど、ポジティブな気持ちで見られる冒険アニメというのは必要だと思いますし、だから去年もあれだけ話題になったのかなと。ミュージシャンとしても頭に置いておかなければいけない構造だなと思いました。

KATARIBE Profile

DÉ DÉ MOUSE

DÉ DÉ MOUSE

ミュージシャン

遠藤大介によるソロプロジェクト。作曲家、編曲家、プロデューサー、キーボーディスト、DJ。VTuber・キズナアイとのコラボレートや『モンスターストライク』のBGMの公式Remix、beatmania、DANCERUSH STARDOM、World Flipperなどへの楽曲提供など、アニメ・ゲームカルチャーとも深い接点を持つ。TVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』では、クラムボン・ミトと共同でアニメの劇伴を手がけた。

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