Febri TALK 2021.06.04 │ 12:00

eba 作曲家

③クリエイターの熱量に感動した
『パプリカ』

作曲家ebaが影響を受けた作品を語るインタビュー連載の第3回は、クリエイターの執念を感じたという今敏監督の劇場アニメ『パプリカ』。作曲家視点から語られる音楽演出の魅力にも注目。

取材・文/日詰明嘉

今敏と平沢進、映像と音楽の奇跡の組み合わせ

――3本目は『パプリカ』ですが、これまでに挙げた作品とは毛色が少し違いますね。
eba これも20歳前にアニメのDVDをあさっていたときに出会った作品です。『けいおん!』も『イリヤの空、UFOの夏(以下、イリヤ)』もストーリーや世界観が好きだったのですが、『パプリカ』はなんというか、画から監督の執念が伝わってくるタイプの作品でした。アニメにおけるすべてのパーツが、作られたものではなく、もともと存在していたかのような感覚に陥ったというか、熱量がものすごかったですね。さらに劇伴が平沢進さんで、アーティストの方がやっているとは思えないほど画面とマッチしていました。作中に人形がパレードをする不気味なシーンがあって、そこに明るい音楽を当てることで、より不気味さを強調するという演出。これまで僕が見てきたアニメにはない作風でドハマりしました。

――今敏監督作品は、このときが初めてでしたか?
eba はい。『パプリカ』から入って、さかのぼって『パーフェクトブルー』『千年女優』『妄想代理人』といろいろ見ていった感じです。たぶん、それまでは監督名で意識するということはなかったので、初めて名前を意識した監督という感じでしたね。本当に偉大というか、尊敬の念しかありません。ひたすら人生を捧げて作品を作っていた方というか、宮崎駿さんに通ずる何かを感じます。今さんのホームページって見たことあります? 制作当時の様子を文章で遺されているんです。もう、ドキュメンタリー映画ってレベルの詳しさで制作への想いを書かれていて、それを読むのが楽しみでした。作品を見たあとにあれを読むと、細かいところもわかってくるし、『千年女優』でできなかったことを『パプリカ』でやったんだなとか、いろいろなことが書いてあって、クリエイターとしての熱量にものすごく感動しました。

『パプリカ』は

画から監督の執念が

伝わってくるタイプの作品

――先ほどパレードのシーンのお話をしていましたが、『パプリカ』でとくに印象的だった場面はどこでしょう?
eba まずオープニング映像からしてスゴいんですよ。クレジットの出し方ひとつとっても見たことがありませんでしたし、まだパプリカの能力がわからないなかで、人をすり抜けたりいろいろな場所に現れたりする。その流れや演出がとても秀逸で、いきなりつかまれた感がありました。あと、機械オタクの時田が最後にシュッとした女性とイイ感じになるのがまたうれしい。ひとつのことに秀でてはいるけど、ほかのことは何もできない人が報われる世界観って夢があっていいですよね(笑)。何かに夢中になっている人が肯定されている感じがして、その意味で今の若い人にもっと見てほしいです。

――作曲家のebaさんとしては、平沢さんの劇伴にはどのような印象を受けましたか?
eba それまでまったく聞いたことがない音楽で、何が起こっているのかも作り方もわかりませんでした。今聞いても独特で新鮮で、最近リリースされたと言われても信じてしまうくらいです。個性というのはまさに平沢さんのためにあるのではないかと思うほど、100%この人にしかできない音楽を作っているなと。その意味で『パプリカ』から感じられる東洋的なゴチャ混ぜ感は、絵からだけでなく音楽からもきているのかなと思います。あとで平沢さんについて調べてみたら、東洋の宗教や文化にも影響を受けている方で、そういう部分もこの作品には入っているのかなと思いました。さっきのパレードのシーンも、普通の音楽を当てていたら画の強さだけが際立つ演出になったと思うのですが、音楽も強いことによって二重の不気味さを演出しています。映像と音楽のマッチ具合は、本当にこのおふたりでしか成し遂げられなかった作品。こんな奇跡あるの? って感じです。新作がもう見られないことは残念ではありますが、今敏監督にはクリエイターのファンが多いので、今さんイズムを受け継いだ方々が現在活躍していらっしゃるという意味でのうれしさはあります。

――その意味で言えば、ebaさんも現在はアニメ音楽のクリエイターとして受け継いだひとりでもあります。
eba そうですね、その意識を持ち続けながら頑張っています。先のことは考えずにアニメの一部になりたいって気持ちだけで飛び込んできたので、奇跡的にうまくいっている感じではあります(笑)。それもこれも『けいおん!』であり、『イリヤ』であり、『パプリカ』のおかげであると思うと、二次元は人の人生を変える偉大なものだなと本気で思います。

――それを体現しているebaさんがおっしゃると、何より説得力があります。
eba やっぱりアニメがあることで救われる人って絶対いると思うんですよね。僕も就職したての頃のつらかったときに、ある種アニメにすがって生きていたところがあるので、エンターテインメントに救われる人って絶対にいると思うんです。僕自身、命を救われたといっても過言ではないので、今度は僕の作品によって誰かが救われてくれたらいいなと思っています。endmark

KATARIBE Profile

eba

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作曲家

えば 富山県出身。2010年、作家としてキャリアをスタート。『幼女戦記』や『Free!』シリーズのテーマソング、『ソードアート・オンライン』シリーズの楽曲、福山潤、斉藤壮馬、LiSA、OLDCODEXなど、さまざまなアーティストやアニメ作品の楽曲を手がける。音楽ユニットcadodeのメンバー、ミュージックプロデューサーとしても活動している。

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