Febri TALK 2021.05.10 │ 12:02

齋藤将嗣 デザイナー

①異質な大人の面白さを教わった
『カウボーイビバップ』

アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise- 』やゲーム『ゼノブレイド2』など、艷やかな美少女と個性的なガジェットデザインで人気のイラストレーター、齋藤将嗣。全3回で、そのアニメ原体験を聞く。初回はクールなSPACE COWBOYについて。

取材・文/前田 久

ほかの作品とは別ベクトルの「面白さ」と「カッコよさ」

――1本目の作品として挙げていただいたのが『カウボーイビバップ(以下、ビバップ)』です。齋藤さんの人生にとって、どのような意味で重要なアニメなのでしょう?
齋藤 順を追ってお話しすると、僕が本格的にアニメにハマりだしたのは、中学生の頃だったんです。『魔法騎士レイアース』だとか『スレイヤーズ』だとか、当時の夕方から夜にかけて放送されていたアニメを毎日見ていました。それでアニメ誌にも興味がわいて、『ニュータイプ』を購読するようになったんですが、あるとき、そこに時代に逆行するようなデザイン……もじゃもじゃ頭のキャラクターを見つけて「何じゃこりゃ!?」となったんですよ。

――もじゃもじゃ頭(笑)。『ビバップ』の主人公のスパイクですよね。
齋藤 そうです。だから『ビバップ』の第一印象は、じつは「カッコ悪い」なんです(笑)。

――なんと。
齋藤 当時は中二病まっしぐらでしたしね。でも、なんとなくずっと気になっていて、WOWOWで放送されることが決まったときに、加入している友達に頼んで録画してもらったんです。それで第1話を見たら、衝撃の内容だった。最初、テレビ東京で放送されたときは、第2話から始まったんじゃありませんでした?

――そうです。しかも、一部の描写はマイルドに修正されていました。
齋藤 当時もそのあたりの事情は知っていたんですが、実際に第1話を見て「まあ、これは当然だよな」と思ったんです。ドラッグの話だし、銃をバンバン撃つし、人の頭に穴が開くシーンもある。そこからもう、すごい勢いでハマってしまいました。アニメの仕事をやらせていただくようになってから、業界の目上の方にお会いしたときに「『ビバップ』好きだったんですよ」と話すと、「あれはカッコつけすぎだよ(笑)」みたいな反応をされることが多いんですけど、当時の僕にとっては衝撃的なカッコよさだったし、今でもずっと好きな作品です。

キャラクターデザインが

安直に「萌え」というか

かわいさに走っていない

ところが異質でした

――特別な一作として選んだということは、それまで触れてきたアニメに比べて、何か異質な感じがしたのでしょうか?
齋藤 そうですね。僕のなかでは『新世紀エヴァンゲリオン(以下、エヴァ)』と『ビバップ』には、ほかの作品とは別ベクトルの「面白さ」と「カッコよさ」があると思っています。『エヴァ』もご多分にもれず、TVシリーズを全話見て、映画も全部見に行くくらいハマっていたんですけど、『エヴァ』が流行ったあとにダウナー系というか、主人公が「僕なんかダメだ……」みたいな感じのアニメが増えたと思うんですよ。

――内省的で、暗い雰囲気の主人公が流行りましたね。
齋藤 でも、『ビバップ』は、スパイクにしろ、ほかの登場人物にしろ、全員大人で、しかも「僕なんかダメだ」って感じじゃない。そこが好印象だったんです。煙草も吸うし、酒も飲むし、犯罪も平然とする……こういう大人にだけはならないようにしよう、みたいなキャラばかり(笑)。

――ちなみにキャラの第一印象は「ダサいもじゃもじゃ」だったわけですけど、印象は変わりました?
齋藤 もちろん! 本編どころか、オープニングを見た瞬間にいきなり変わりましたよ。「カッコいいな、このもじゃもじゃ!」って(笑)。

――(笑)。アニメをたくさん見ていた齋藤さんですが、『エヴァ』と『ビバップ』には異質な感じを受けていた。その「異質さ」の理由は、どこにあると思いますか?
齋藤 そうですね……。まず、キャラクターデザインが安直に「萌え」というか、かわいさに走っていないところでしょうか。『エヴァ』は片足くらいは突っ込んでいますけど(笑)、『ビバップ』はまったく突っ込んでいない。そういうところに、当時は「異質さ」を感じたんでしょうね。そこから受けた影響は、今も僕がキャラクターデザインをするときに生きています。

――魅力的なデザインではありますが、たしかに「萌え」を狙っている感じはしないですよね。
齋藤 そうなんです。僕は同時期に流行っていたPCゲームの女の子のキャラ絵を模写しまくっていましたし、萌え萌えした絵柄もキャラクターデザインも大好きなんですけど、それとはまた違う魅力が『エヴァ』と『ビバップ』の絵にはありました。あとはそう……『ビバップ』といえば、やはりメカデザインですね。それまで見てきた子供向けだったり、プラモデルを売ることを前提にしたロボットアニメのトゲトゲしたようなデザインとは全然違うラインを持っていて……というか、そもそもメカは出てくるけど、ロボットが出てこない。飛行機しか出てこなくて、しかも、その飛行機のデザインがすごくカッコいい。そういうメカデザインの面白さも、僕は『ビバップ』から教わった気がします。endmark

KATARIBE Profile

齋藤将嗣

齋藤将嗣

デザイナー

さいとうまさつぐ。北海道出身。主な仕事に『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(キャラクター・メカデザイン)、『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』(キャラクターデザイン)『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(デザインワークス)など。

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