Febri TALK 2021.05.05 │ 12:00

吉成曜 監督/アニメーター

②『風の谷のナウシカ』
描き出される終末感に惹きつけられた

自身が影響を受けたアニメ作品について聞く連続インタビュー。第2回は『アニメージュ』に連載されていた原作に衝撃を受け、何度も繰り返し見たという、宮崎駿監督の名作『風の谷のナウシカ』について。

取材・文/宮 昌太朗

朝から晩まで映画館に居座って、繰り返し見ていました

――『ガンダム』のあと、アニメを追いかけるようになったんでしょうか?
吉成 そうですね。『ガンダム』以降はアニメばかり見ていた気がします。兄貴が『アニメージュ』を買っていたので、今、どういうアニメがやっているかは一応、全部把握して。そのときは「テレビで放送しているアニメは全部見よう」みたいな感じで、なんでもかんでも見ていましたね。……あっ、ただ途中で空白期間があるんですよ。というのも、あまりにもアニメばかり見ているので、親がテレビを撤去しちゃったんです。

――あはは!
吉成 なので、アニメを見ようと思ったら、友達の家に行くしかない、みたいな期間がたぶん1年半くらいあって。ちょうど『超時空要塞マクロス』をやっていた頃(82年)だったんですけど、その時期ってアニメファン的には一番おいしい時期なんですよね。そこで若干、アニメブームに乗り遅れた感じがありました。

――影響を受けたアニメの2本目に挙げていただいたのが『風の谷のナウシカ(以下、ナウシカ)』。これは、その時期の少しあとになりますね。
吉成 ここで『ルパン三世 カリオストロの城』って言えないのが悲しいところなんですけど(笑)。(監督の)宮崎駿といえば、『未来少年コナン』が放送されているのは知っていたんですけど、当時はまったく見ていなくて。それこそ、大塚康生とか小田部羊一、あとは高畑勲とか――東映アニメーションの流れを汲む人たちがいますけど、そのなかのひとりという認識だったんです。ただ、『アニメージュ』でマンガ版の『ナウシカ』が連載されていて、それを読んでいるうちに「この人はすごいんだ」とわかってきて。『ナウシカ』はめっちゃくちゃ面白かったですね。

――ということは、これがいよいよアニメ化されて劇場で公開される、と。
吉成 「これはちゃんと見よう」と思って、期待して劇場に出かけました。当時の映画館は今のような入れ替え制じゃなかったので、朝から晩までずっと居座って。

――めちゃくちゃハマった。
吉成 ハマったというか、ファンの義務みたいな感じですね(笑)。原作は壮大な話なので、今回のアニメはその一部を切り取って映像化したんだな、とか。話としては中途半端な感じがあって、「これは不本意ながら作ったんだろうな」とか「たぶん、これが全力じゃないだろう」と思いながら見ていました。

ある意味、厭世的というか

今の文明を批判するような視点が

あるところが面白かった

――『ナウシカ』のどこが、そんなに面白かったんでしょうか?
吉成 やっぱり社会性があるというか、人類が環境を破壊して、そのあとに新しい環境が作られて……みたいなところ。ある意味、厭世的というか、今の文明を批判するような視点があるところが面白かったんです。僕らが子供の頃というと、オイルショックがあったりして、「地球はあと50年くらいしかもたない」みたいなことが言われていたんです。加えて『ノストラダムスの大予言』のブームがあったりして、「世界はこのまま滅びていくんだろうな」みたいなことを、なんとなく思っているわけです(笑)。

――今でいうポストアポカリプス的な要素が『ナウシカ』にもありますね。
吉成 そうですね。その後の世界って『ナウシカ』みたいになるのかな、って。『未来少年コナン』とか『AKIRA』もそうですけど、そういう終末感みたいなものがあるとハマれる、みたいな感じはありました。明るく輝く未来じゃないもののほうが、ハマりやすかった気がしますね。

――特に中学生くらいだと、そういう作品にビビッドに反応しますよね。『ガンダム』は今でも見直すという話がありましたけど、『ナウシカ』を改めて見たりは……。
吉成 しないですね(笑)。見る必要がないというか。『ガンダム』は見ると今でも発見があるんです。でも、『ナウシカ』はちょうど小学校から中学校に上がるタイミングで見て――そうすると、だいたい内容がわかるんですよ。つまり、当時受けた印象と、今、改めて見たときの印象が、それほど変わらない。当時、何回も何回も繰り返し見たこともあって、今さら発見がないというか(笑)。

――それくらいのめり込んだということでもありますよね。
吉成 ただ、原作は読み返したいなと思っているんです。内容的になかなか重い作品なので、気軽に読み返すっていう気分にはならないんですけど。endmark

KATARIBE Profile

吉成曜

吉成曜

監督/アニメーター

よしなりよう。1971年生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめ、数多くの作品で活躍。その後、TRIGGERの設立に参加し、『リトルウィッチアカデミア』で初監督。最新作は『BNA ビー・エヌ・エー』。

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