Febri TALK 2021.05.03 │ 12:00

吉成曜 監督/アニメーター

①作り手の存在を初めて意識した
『機動戦士ガンダム』

『リトルウィッチアカデミア』などを手がける凄腕アニメーター・監督、吉成曜が影響を受けたアニメについて聞く連載インタビュー。第1回は、誰もが知るあの名作との出会い、そして影響について聞く。

取材・文/宮 昌太朗

『ガンダム』は今でも見直すし、そのたびに勉強になります

――今日は吉成さんのアニメ体験を伺えればと思うのですが、最初にアニメに触れたきっかけは何だったんでしょうか?
吉成 子供のときは普通に見ていたんですけど、「これがアニメというものだ」というか、作り手を意識して見始めたのは、たぶん『機動戦士ガンダム(以下、ガンダム)』なんです。とはいえ、最初の本放送のときはロクに見ていなかったんですよ。一応、オモチャを――ガンダムとガンキャノンとガンタンクの3体セットを買ってもらったりはしたんですけど、内容を全然知らないので、ガンタンクのAパーツとガンダムのBパーツをくっつけて遊んでいたり(笑)。

――本放送は頭から見ていたんですか?
吉成 いや、見始めたのは中盤ですね。「時間よ、とまれ」(第14話)だと思うんですけど、ロボット同士のバトルもないし、最後のクライマックスが爆弾の除去っていうめちゃくちゃ地味な回で(笑)。そのあとの「ククルス・ドアンの島」(第15話)もとにかく地味な印象で、まったく心に刺さらなかったんですよね。で、なんとなく見なくなったんですけど、僕には3つ上の兄貴がいて……。

――アニメーターの吉成鋼さんですね。
吉成 とにかく兄貴の影響が大きいんですけど、最終回が近くなってきた頃に、兄貴から「これは見とけ」って言われたんですよ。ちょうど放送している時間に、兄貴が塾か何かで家にいなくて「俺の代わりに見ておけ」と(笑)。ただ、それまでの内容を知らないから、意味がわからない。「代わりに」って言われても全然説明できないっていう。

――それはいくつくらいの話なんでしょうか?
吉成 放送が1979年だから、小学校の低学年じゃないですかね。「これはすごいアニメなんだ」って兄貴は言うんですけど、全然わからないまま見ていたんです。で、その後『機動戦士ガンダム 記録全集』という通販だけで買える本が出るんですけど、それを読んで「こういう話だったんだ」と理解するっていう(笑)。最初の出会いはそんな感じでした。

――ということは、あとから見直したんですね。
吉成 作品をちゃんと理解したのは、そのあとの『伝説巨神イデオン』からだった気がします。兄貴から「これ、『ガンダム』を作った監督(富野由悠季)なんだよ」って言われて見始めるんですけど、こっちは最初から――まあ、話がわかるからだと思うんですけど、面白くて(笑)。そんな感じで『イデオン』でそこそこ富野アニメが好きになって、そこからさかのぼって、再放送の『ガンダム』を改めて見たらすごかった……という順番だったと思います。

表層に見えているもの

だけじゃなくて

この世界には歴史があって

物語世界に奥行きを感じた

――あらためて振り返ってみて、『ガンダム』のどこが面白かったんでしょうか?
吉成 すごく新しい感じがしましたね。ロボットの描き方にしても、ひとつひとつの描写が細かいというか、ちゃんとその向こう側にあるものを感じられる。表層に見えているものだけじゃなくて、この世界には歴史があって、その歴史は劇中では直接描かれていないんですけど、物語世界に奥行きがあるように感じたんです。それこそ、のちに『ガンダムセンチュリー』のような本が出て「ああ、ひとつひとつにちゃんと理屈があるんだな」と。本編では断片的な情報しかわからないんだけど、深く掘っていくとその向こう側の世界が見えてくる。

――なるほど。世界の描かれ方を新鮮に感じたわけですね。
吉成 同じように、他の作品も見方を変えれば面白いのかな?と思ったんですけど、そういう風に作られている作品は、結局、富野アニメしかなかったんです。あとはキャラクターもそう。ちょっとしたセリフとかで、その人物の性格だったり、普段の暮らしぶりが見えてくる。しかも、そのセリフまわしが生っぽくて……。どこにハマったかと言われるとちょっとわからないですけど、とにかく全部よかったんですよね。

――その後も見直していたりするのでしょうか?
吉成 今でも見ていますよ(笑)。最近、自分で監督をやるようになって――自分で絵を描かずに、どうやって作品を作っていくかを考えたときに『ガンダム』にはいろいろなヒントがあるなと。『ガンダム』って今見ると、絵も統一されていないし、後半はどんどん作画が荒れてくるんですけど、でもすごく面白い。ほんのちょっとしか出てこないキャラクターでも「ああ、この人はこういう人なんだ」ってわかる描き方をしているんですよね。そこはシナリオがうまい――というか、たぶん富野さんが勝手にコンテで書き足している気がするんですけど、とにかくセリフまわしがうまくて。最初から「カッコいい絵が作りたいな」と思っても、その通りにはできないわけで、絵じゃない部分で面白さを作らないといけない。そのときに『ガンダム』はすごく勉強になるし、今でもよく見直しますね。endmark

KATARIBE Profile

吉成曜

吉成曜

監督/アニメーター

よしなりよう。1971年生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめ、数多くの作品で活躍。その後、TRIGGERの設立に参加し、『リトルウィッチアカデミア』で初監督。最新作は『BNA ビー・エヌ・エー』。