Febri TALK 2021.05.07 │ 12:00

吉成曜 監督/アニメーター

③アニメーターになるきっかけとなった
『うる星やつら』

若手アニメーターたちが集まり、暴れまくった『うる星やつら』をきっかけに、アニメーターを追いかけるようになったと話す吉成監督。思いも寄らない作品名も飛び出した、インタビュー連載の第3回。

取材・文/宮 昌太朗

そこに参加してみたいと思った、アニメーターたちの暴れっぷり

――3本目に挙げていただいたのが、TVシリーズの『うる星やつら』ですね。『うる星やつら』は1981年の放映開始なので、ちょうど吉成家からテレビがなくなる直前に放送がスタートしています。
吉成 そうですね。『うる星やつら』の2クール目か3クール目、いよいよこれから面白くなるっていう時期にテレビが撤去されたんです(笑)。だから一番面白いところを、リアルタイムでは見られなかったんですよね。

――もともと、放送スタートの時点から見ていたんですか?
吉成 いや、時間帯が合わなかったのか、頭からちゃんとは見ていなかったですね。当時、ウケている原作をアニメ化すると、なんかダサくなってしまう……みたいな印象があって。『うる星やつら』はその筆頭、みたいなイメージがあったんです。

――原作からパワーダウンしてしまう?
吉成 というか、野暮ったくなってしまう。原作の新しさをアニメスタッフがわからずに作っているというか、ポップな感じがアニメでは再現されない、みたいなことが多かったんです。だから『うる星やつら』も放送開始当初は、けっこう叩かれていた記憶があります。それこそ「原作と違うじゃねーか」みたいな。でも、さっきも話したように、途中からどんどん面白くなってくるんですよ。面堂終太郎が初めて登場する回(第27話「面堂はトラブルとともに!」)があるんですけど、その回がとにかくブッ飛んでいて(笑)。作画もすごくカッコいいんですけど、「これを描いているのは誰なんだ?」と思って。そこからアニメーターを追いかけるようになるんです。

――当時、吉成さんはまだ小学生ですよね。めちゃくちゃ早くないですか?(笑)
吉成 とはいえ、兄貴もいましたから。「これ、すごくね?」って情報を共有する相手がいたんですよ。とはいえ、兄貴も俺しか話す相手がいないんですけど(笑)。とにかく、そこからアニメーターを意識するようになって。『うる星やつら』には山下将仁さんが参加されていたんですけど、山下さんは金田伊功さんと同じスタジオ(スタジオNo.1)にいて、金田さんからすごい影響を受けているアニメーターのひとりなんです。で、金田さんはほぼ同時期に『銀河旋風ブライガー』をやっていて、そのオープニングがまたすごかった。

――どんどんつながっていったわけですね。
吉成 そうですね。そして「この人はすごい」みたいなことに目覚めるんです。しかもアニメーターはどこに出没するのかわからないので、とにかく網を広く張っておかなきゃいけない。結果、とにかくすべてのアニメを見なきゃと思うようになって、挙句、親にテレビを禁止されることになるわけです(笑)。

ティーン向けのカルチャーが

すごく発展した時期で

若い人たちが作っている感じが

伝わってきた

――吉成さんがアニメーターを目指すようになったのも、やはり『うる星やつら』の影響なんでしょうか?
吉成 そうですね。「自分で描いてみたい」と思ったのは、『うる星やつら』を見たからです。『ガンダム』のときは「この絵が描ける」とは思えなかったですから(笑)。しかも、当時は若手のアニメーターがドドッと一気に出てきたタイミングだったと思うんですよ。アニメだけじゃなくて、ティーン向けのカルチャーがすごく発展した時期で。若い人たちが作っている感じが見ているこちらにも伝わってきたんです。作りはたしかに荒っぽいんだけど、すごく楽しそうで、自分もそこに参加してみたい。そういう感じだったと思います。

――「アニメーターを職業にしよう」と思う、何かきっかけはあったのでしょうか?
吉成 何かで決意したわけではなくて、なりゆきというかなんとなくだったんですよね。兄貴が先に仕事を始めて、すぐその手伝いをするようになって。だから技術だけが先に身についちゃったような感じなんですけど。ただ、ずっと兄貴の手伝いを続けるのもイヤなので、ちゃんとした会社に入ろう、と。

――それでガイナックスに入るわけですね。
吉成 なので、影響を受けた作品に『王立宇宙軍』を入れようかと思ったんですけど、それはちょっとカッコつけすぎじゃないかと思って(笑)。たしかに好きな作品ではあるんですけど、自分でこれを作るとか、この現場に入る、みたいな気にはとてもなれなかったんです。『うる星やつら』のような「みんな、好き勝手なことをやっている」みたいな時代と比べると、『王立宇宙軍』とか『AKIRA』の頃は、ハードルがすごく上がった気がしていました。

――『ガンダム』は今でも見直すという話がありますけど、監督をやるようになってから影響を受けた作品はありますか?
吉成 『ガンダム』って意外に「世界名作劇場」の影響を受けている気がするんですよね。音楽が渡辺岳夫だから、というのもあるかもしれないですけど(笑)、何かちょっと「名作劇場」を見ているような雰囲気があって。実は今回、高畑勲の作品も入れようかなと思っていたんですけど、特に『母をたずねて三千里』ですね。『三千里』は最高に面白いTVアニメなんじゃないかって思っているんですけど、主人公が旅をして、行く先で出会う人々から影響を受ける。しかも出会う人たちにちゃんと背景がある――みたいなフォーマットは、実は『ガンダム』と共通していて。できればそういう旅ものを、いつか自分でもやってみたいなって思います。endmark

KATARIBE Profile

吉成曜

吉成曜

監督/アニメーター

よしなりよう 1971年生まれ。東京都出身。専門学校卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめ、数多くの作品で活躍。その後、TRIGGERの設立に参加し、『リトルウィッチアカデミア』で初監督。最新作は『BNA ビー・エヌ・エー』。

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