TOPICS 2022.12.21 │ 12:00

アムロ・レイの演じかた
~古谷徹の演技・人物論~ 第7回(後編)

第7回 安彦良和とアムロ・レイ

前作に引き続きキャラクターデザインを担当した『機動戦士Ζガンダム』だが、安彦良和氏としては不本意な作品となったという。1985年当時のアニメ制作現場はどういう状況だったのかを語ってもらった。また、記事の最後には、今回のインタビューについての、古谷徹からのメッセージも掲載している。

取材・文/富田英樹 撮影/高橋定敬 ヘアメイク/氏川千尋 スタイリスト/安部賢輝 協力/青二プロダクション、バンダイナムコフィルムワークス

『機動戦士Zガンダム』の現場

――『機動戦士Ζガンダム』のキャラクターデザインをしていた当時は、どんな状況だったのでしょうか?
安彦 他でも言ったことですが、『機動戦士Ζガンダム』は嫌な思いしかない。それは富野さんがまったく様変わりをしたから。それこそ『機動戦士ガンダム』のときはアムロの造形でもそうだけど、ツーカーだった。阿吽(あうん)の呼吸で話ができたし、同志とも言える関係だった。ところが『機動戦士Ζガンダム』では、まず口をきいてくれない。「会いたい」と言ったら「アポを取ってこい」と言う。でも、僕はあえて連絡もせずに会いに行ったことがあって、彼の仕事部屋に。そうしたら迷惑そうな顔をされましたよ(笑)。それでも図々しく上がり込んで話し合いをして、でもそのときの一度だけでしたね。『機動戦士Ζガンダム』で富野さんと話したのは。

富野さんも苦労人だから、ちょっと自分を見失っていたのかもしれないね。『機動戦士ガンダム』のヒットによって長年の苦労が報われて。話を戻すけど、だから『機動戦士ガンダムF91』では「打ち合わせをするならキャラデザをやる」と言ったんです。打ち合わせもできないのであればやらない。それで、打ち合わせをしました。富野さん、大河原邦男さん、それとサンライズの山浦栄二さんと僕の4人です。でもね、富野さんは打ち合わせの最中にこっちを見もしない。何かワープロで仕事をしていて生返事しかしないんだよね。こんなものが打ち合わせと呼べるかと(笑)。それでも会って話すことすらできなかった『機動戦士Ζガンダム』よりはマシだったんだよね。有名な話かもしれないけれど、僕がクワトロ・バジーナを線画で描いた。その線画に色指定をするんだけれど、両腕を肌色にしてしまった。そんなわけないじゃん(笑)。両腕を露出するようなマッチョなキャラじゃないし、そもそも寒いだろうと(笑)。だから、これは色を間違えていると言ったんですよ。そうしたら、色指定の担当者が「監督OKが出てしまったので変えられません……」って言うんだよ。こんなことすら修正ができない現場だった。そういう現場の違いが『機動戦士ガンダム』と『機動戦士Ζガンダム』の差なんです。だから僕は今でもクワトロを描くときは、腕を赤く塗っているんだよね(笑)。まあ、あんまり描くこともないけど。

アムロ・レイの瞳は青いのか、黒いのか

――安彦さん自身の作品、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』や『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』ではキャラクターデザインも手がけています。
安彦 これは自分でやってもいるし、ことぶきつかささんにお手伝いしていただいてもいますね。僕は知らなかったんだけれど、ことぶきさんはもともとマンガ家で、アニメ業界での経験はあまりなかったらしくて、本当に悪いことをしたと思っています。本人にも「あまりこっちに深入りしないほうがいいよ」って何度か言っているんですけど、本人は意外と好きみたいで(笑)。でも、やるならやるで便利屋にならないほうがいいよとか、監督やらせろとかって言えばいい、なんてアドバイスをしているんだけど(笑)。

――アムロのデザインについてですが、これらの作品では安彦さんのやりたかったものが全面に出ているということなのでしょうか?
安彦 やりたかったことというのはとくにないですけどね。

――たとえば、アムロの瞳の色が黒(濃茶)から青になっていますが。
安彦 アムロの目は青でしょう……え、違うの? 最初の『機動戦士ガンダム』だよ? え、そうなんだ。それは今初めて知ったかもしれない(笑)。僕はそういうのはあまり見ていないから、これまで知らなかったけど、髪の色と同じでどこかで妥協したのかもしれない。でも、本来は赤毛で青い目という、ひと目で外国人とわかる外見にしたんですからね。(参考画像を見ながら)うーん。でも、これは青みがかった黒じゃない? 青黒っていうのか(笑)。

――青黒い……かなあ……どうでしょう。黒じゃないかなと(苦笑)。
安彦 ああ、そうかあ。小出しに妥協をしているから、そういうものの積み重ねで変化したのかもしれない。日系二世という設定もそうだけど、曖昧にしたいというかね。目の描き方にもよるんだけれど、瞳孔を黒く塗って瞳を青くするという逃げもあったんだけど、この時代にそんな技法はなかったよね(笑)。僕の中では青い目で赤い縮れっ毛というのがアムロのイメージなので、ちょっとびっくりしたな。

作品情報

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

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