TOPICS 2022.12.16 │ 19:00

アニメ『万聖街』スタッフが語り尽くす 魅力的なキャラクターたち②

中国での再生数が2億回超えという大ヒットアニメ『万聖街』が、日本語吹き替え版となっていよいよ日本上陸。シリーズ構成・脚本を務める徐碧君、監督の呆尾、小榕の3人へのインタビュー第2回をお届けします。

取材・文/岡本大介

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

――前回に引き続き、キャラクターの魅力について聞かせてください。

●ダーマオ

徐碧君 彼は運の悪い狼人間というキャラクターですが、この運の悪さはアニメで追加したオリジナル要素です。彼の面白いところは、作中ではセクシー担当なところです。彼は筋骨隆々な肉体美を持っていて、なにかあるごとにタンクトップになるんですけど、とにかく筋肉を見せていこうというのは意識しました。

呆尾 見た目はマッチョですごく強そうなんですけど、中身は素朴というのが面白いなと思います。ダーマオは最初、ニールを魔王とみなして警戒しながら観察しているのですが、ニールとアイラの日常的なやり取りが、彼にはとてつもなく邪悪なものに見えてしまうシーンなどは、そんな彼の素朴さや純朴さが出ていて大好きです。あと意外なのが、彼の職業はデザイナーなんですよね。この見た目でデザイナーというのは誰も想像がつかないと思うので、そこのギャップも好きです。

小榕 ダーマオには犬っぽい習性をいろいろと入れているんです。ソファーの下に骨を置いていたり、カーペットをめくったら床下に何かを隠していたり。彼が主役のエピソードではなくても、そういう部分でダーマオらしさを表現しています。アクションシーンでは狼人間として頼もしい活躍を見せる彼ですが、日常生活ではちょっと抜けた大型犬のようなイメージで、可愛さとカッコよさが同居するキャラクターだなと感じます。

●リン

徐碧君 リンは古典的な天使のイメージが根っこにありますね。非常に保守的ですが、妹のリリィのことになると途端に冷静さが失われてしまうのが面白いです。最初は凛とした美男子っぽい描き方をしていたんですけど、ストーリーが進むうち、いつの間にかみんなのお母さんのようなポジションに収まってしまい、当初の想定とは大きく変化したキャラクターです。セリフ数もどんどんと増えていき、自分でもなんでこんな方向に進んでしまったのかわかりません(笑)。

呆尾 たしかに。最初は堅物でしたが、どんどんと柔らかくなっていって、性格も明るくなっていきましたね。1031号室でパーティーを開くことを許したりしますが、これは最初のリンであれば許さなかったんじゃないかと思います。大家さんという立場でありながらも、みんなと友達みたいに仲良くなっていくのがリンの見どころというか、面白い部分だなと思います。ただ、個人的には序盤のリンも大好きで、リンゴを買う際、市場のおばちゃんに適正価格について論じて値切りをするシーンは大好きですね。

小榕 基本的には1031号室の面々が起こすトラブルに巻き込まれる側のキャラクターなんですけど、受け身にもかかわらず、いろいろな話にしっかりと関わっているのが不思議で面白いキャラクターだと思います。とあるきっかけでニックとテニス勝負をするエピソードがあるのですが、あの一連の展開はアクションもすごいし、コメディ感も強くてとても好きですね。
呆尾 あのアクションシーンは作るのが大変でした。
小榕 そうそう。あのシーンは呆尾監督の担当で、ものすごく頑張っていたのを隣で見ていて知っているので、ぜひ注目していただけたらと思います。

●リリィ

徐碧君 リリィは太陽のように燦々(さんさん)と輝いている女の子で、性格がとにかく明るいんです。天使というのは貞淑さや厳粛さを求められますから、どうしても周囲とは水が合わず、それで兄であるリンのところに来てしまうんですね。落ちこぼれとかいじめられたとかではなく、勉強も運動も芸術にも秀でているにもかかわらず、天国から飛び出してしまうというのが彼女の魅力だと思います。あと個人的にはニールとの恋愛絡みのエピソードはどれも大好きです。とくにふたりがお正月に買い物に出かけた際、人波にのまれてはぐれかけるのですが、ニールがリリィの手をつかんで人混みから抜け出すシーンのふたりの表情がたまらなく好きで、何回も見直しました。

呆尾 天使っぽくない天使であるリリィと、悪魔っぽくない悪魔であるニールの組み合わせって、すごくお似合いじゃないかなと思います。私はリンとリリィの関係性もすごく好きで、リンが幼いリリィをどうやって育ててきたかが描かれたエピソードはすごく感動的で、個人的に大好きです。
小榕 リリィの魅力はおふたりがいう通りだと思います。そのうえで私が好きなエピソードはミュージカル回です。ニールの中の魔王が表に出て来たことをリリィだけが察していますが、それをニールを含めて誰にも言わないんですよね。たしかにリリィは天真爛漫だし、恋愛に対しても鈍感なところはありますけど、でもじつは人のことをすごくよく見ていて、気遣うことができる子なんです。あのエピソードではリリィの天使としての素養がしっかりと表現されていて、彼女の魅力がギュッと詰まっていると感じます。endmark

徐碧君
XuBijun 中国芸術研究院卒。「非人哉」、「万圣街」漫画版編集。アニメ映画「私たちの冬季オリンピック(我们的冬奥)」一部シナリオ担当。
呆尾
DaiWei 1993年中国福建省漳州市生まれ、四川美術学院映像アニメーション芸術科卒業。寒木春華スタジオに就職。主な代表作品は『羅小黒戦記』『万聖街』シリーズ。主に演出、原画を担当。
小榕
XiaoRong 1994年中国の北京で生まれ。中国伝媒大学アニメーション学科卒業後、アニメーターとして寒木春華スタジオに就職。主な作品は大学卒業作品『老歌』、『羅小黒戦記』、『万聖街』シリーズ。
作品情報

日本語吹き替え版『万聖街』
好評放送・配信中

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