TOPICS 2023.06.16 │ 12:00

メインスタッフが語る
『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』制作の舞台裏③

『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』について、錦織博監督と山本健介監督、そして総撮影監督とルック開発を務める若林優氏が語る鼎談の後編。締めくくりとなる今回は、各グループのステージの注目ポイントや、ライブのクライマックスで披露された楽曲について話を聞いた。

取材・文/原常樹

アイドルを際立たせるためのバランスが難しかった

――中編では主にIDOLiSH7についてお話を聞きましたが、他のグループのステージ作りの際に心がけたポイントを教えてください。
錦織 TRIGGERの「Last Dimension」にはバレエ的なニュアンスを入れたくて、水辺に白鳥が舞うようなイメージでダンサーに登場してもらいました。いろいろな世界観を用意したかったという話をインタビュー中編でさせてもらいましたが、こういう抽象的なセットの見せ方もアリだよねということで、プロジェクションマッピング的な演出を組み合わせています。
若林 TRIGGERはラグジュアリー感の強いグループなので、煌びやかなイメージを際立たせて撮影するように心がけました。背中のチェーンなど、衣装もキラキラと光っているので、そこもぜひ注目してほしいです。

錦織 顔の美しさについつい目が行ってしまうのは仕方ないと思いますが、ジュエルもすごく輝いているので、ぜひそちらも観ていただければと(笑)。
若林 とはいえ、やっぱりアイドルが主役なので、さじ加減は難しかったです。バランス調整が難しかったといえば、背景もそうでした。とりわけ階段に設置されているスクリーンの存在感が大きくて、アイドルたちを引き立たせるにはどうするか、というところは苦労しましたね。

――ZOOLはどうでしょうか。彼らのシーンもバランス調整が難しそうだなと思いながら見ていました。
若林 そうですね。ZOOLの衣装には花があしらわれているのですが、普通に色の濃淡をつけようとするとノーマルと影の2色で表現することになってしまいます。それだと立体感が出ないのでグラデーションを入れるなどの「足していく作業」が必要になって、その加減が難しかったですね。僕のあとに作業に当たるオレンジさんも大変だったと思います。

――Re:valeに関してはどうですか?
錦織 「NO DOUBT」では、長い歴史を重ねて朽ち果てている教会を背景にしています。
山本 背後に巨大なスクリーンが一枚あるだけで、とくにスモークを焚いたりもせず、非常にシンプルな構造。この状況でいかに美しく見せるかを考えたとき、暗い中に光が差す様を演出するためにチンダル現象(※ある条件下において、粒子に光が当たった際にその道筋が明るく見える現象のこと)を取り入れてみました。すごく地味かもしれませんけど、こういったところにこだわることでアイドルの美しさを際立たせることができると思っています。

錦織 間が地味すぎてスクリーンまで背景セットのように見えてはいけないし、狭苦しくなってもいけない。最後に特殊効果が入るまでどうなるのかわからない部分だったので不安もありましたが、若林さんがきれいに仕上げてくれました。
山本 この光の粒子も僕の作業段階では小さい粒を入れていただけなのですが、撮影の段階でしっかりキラキラと輝かせてくれて助かりました。

16人のアイドルが並んで踊ったときの感動

――ライブのクライマックスとなる「TOMORROW EViDENCE」以降の楽曲では、舞台上に16人のアイドルが勢揃いします。これだけの人数となると撮影や演出も大変だったのでは?
錦織 今回の企画を聞いたときに、16人が並んでいる画が浮かんだので、ライブのクライマックスでちゃんと見せようという意識は強く持っていました。ただ、いざ制作に突入すると、16人が前後左右に動いてパフォーマンスするので、振り付けの作業も大変でした。なにより16人それぞれを動かして成立させることのハードルが高くて、結果的に各所に無理をお願いしてしまいました。
山本 バランスを取るのはとくに難しかったですね。振り付けのフォーメーションがあまりにもキレイだったので全体像を押さえたかったんですけど、それだと引いた画ばかりになって顔が見えなくなってしまう。かといって、寄りすぎるとフォーメーションを見せられない。
若林 「Pieces of The World」は曲中で3回ぐらい暗転が入るんですけど、そのたびにライトの色味を変えるのも大変でした。7色のスポットライトがステージをずっと照らしているので、それをアイドルたちのメンバーカラーと合わせるのにも苦労しましたね。それに最後は銀テープも舞うし、ドローンも飛ぶから、どうやってまとめようかなと(笑)。
錦織 最後はもう全部盛りでしたしね(笑)。いや、こうやって振り返ってみると本当に大変でした……。でも、やってよかったなと思います!

――では最後に、劇場ライブを2回、3回と観るファンに向けてメッセージをお願いします。
若林 1回観るだけでは楽しみ尽くせない内容ですし、何回観ても新しい発見があると思うので、まずは一度ライブを通しで観ていただき、気に入ったら何度でも劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。
山本 劇場ライブという形式ではありますが、ステージの目の前にいる気持ちで楽しんでくださったらありがたいです。マネージャーとしての心持ちでライブに臨まれる方、ひとりのファンとしてライブに臨まれる方、各々好きなスタイルでライブを楽しんでいただけるとうれしいです。
錦織 彼らの曲に聴き入るもよし、顔をじっくりと眺めるもよし、ステージに注目するもよし、どこからでも楽しめるライブになっているはずなので、何度でも楽しんでほしいです。たとえば、MCなどでアイドルたちがどんな反応をしているのかも、今回の醍醐味だと思うんです。コメントに対して驚くのか、笑うのか、それともあんまり聞いていないのか(笑)。とにかく彼らがライブを楽しんでいる姿を丸ごと楽しんでほしいですね。endmark

錦織博
にしきおりひろし 1966年、京都府生まれ。日本アニメーションを経て、現在はフリーのアニメーション監督、演出家、脚本家として多くの作品に携わる。代表作はアニメ『あずまんが大王』、『天保異聞 妖奇士』、『とある魔術の禁書目録』、映画『マジック・ツリーハウス』など。
山本健介
やまもとけんすけ VFX、CGを得意とするクリエイター。1994年に高校時代の同級生らとともにアクワイアを設立、同社にてゲームCG制作に携わり、フリーランス期間を経てから有限会社オレンジに所属。代表作は『トライガンスタンピード』、『ゴジラS.P<シンギュラポイント> 』、『宝石の国』など。
若林優
わかばやしゆう  ENISHIYAに所属するクリエイター。『ブルーサーマル』、『ゴジラS.P<シンギュラポイント> 』、『Princess Principal Crown Handler』など数多くの作品で撮影、撮影監督などを手がける。
※「ZOOL」の「Z」はアキュート・アクセントつき、「L」はセディーユつきが正式表記
作品概要

『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』
<DAY 1>&<DAY 2>全国劇場にて開催中!

  • ©BNOI/劇場版アイナナ製作委員会