TOPICS 2022.10.25 │ 12:00

普通の人には「異文化」すぎる アニメ『異世界おじさん』セガネタ大解説①

第1回 セガゲー専門誌おじさんと学ぶ、異文化「セガ」

異世界から帰還したおじさんによる伝聞形式(魔法による映像付き)で伝えられる武勇伝が見ものの『異世界おじさん』。異世界での荒唐無稽な冒険譚が楽しい一方、「おじさんが嬉々として話すゲームネタがわからない……」という人も多いはず。そんなある意味「異世界(異文化)」すぎるゲームネタを、当時のよもやま話を交えて紹介しよう。

文/菅(Suge)・元BEEP!メガドライブ、セガサターンマガジン編集部員

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

セガゲーってなんなの? セガユーザーって?

家庭用ゲーム機といえばファミコン、スーパーファミコン(任天堂)とされていた頃(1980-1990年代)、おじさんが異世界転生する前に青春の大半をともに過ごしたゲーム機が「メガドライブ」「セガサターン」です。これらを開発・販売していたゲームメーカーが、おじさんが大好きな「セガ」。のちに登場したPCエンジン(NEC)と三つ巴になりながら行われた家庭用ゲーム機のシェア争いが、いわゆる「ハード戦争」と呼ばれるものでした。プレイステーション(ソニー)の参戦はセガサターンの発売と同時期(1994年)で、2000年代前後はソニーかセガか?と国内シェアを二分していた時期もありました。

ゲームに熱中する2匹のサル(セガールとアンソニー)が、片方は途中退席し片方は遊び続ける……というサターンのTVCMを思わせるオープニングのワンカット。座り位置も、しっかり「セガール」側。アラサー世代には懐かしい。

セガハードがファンから愛される理由

メガドライブやセガサターンといったセガハードが、どうしておじさんのような熱烈なファンに愛されているのか――。それは、「玄人向け」の傾向が強く、マニアックな難易度・操作性・舞台設定のゲームが多いことだと思います。好きな人はとことん好き、けれどクセもめちゃくちゃ強い。そんなところが「俺(たち)はセガの良さをわかっている!」といった熱意あるファンを生んでいったと思うのです。少なくとも自分は、そういった想いでセガハードを応援していました。

「操作は複雑だけど、慣れてきたら面白い」「このつらい面を乗り越えたらすごく楽しくなる」といった、トライアル&エラーでゲームの腕を磨かないと先へ進めないといった無骨さ、硬派な内容もファンに支持される一因かもしれません。そういったゲームが本当に多いので、「遊び手を選ぶハード」と言われると「だよね……」となる。そんな間口の狭さ、アピール下手な不器用さも込みでセガが好き。そんなファンが多いのではないでしょうか。

「俺は周りに何を言われようともセガユーザーだった。これからもだ」

そんなゲーム遍歴を歩んできたおじさんだからこそ、第2話で人生相談にやってきたメイベルに自分(の好きなもの/こと)を貫く大切さを語るわけです。作中冒頭で、ハード戦争の結末を知ったおじさんが記憶の消去に走ったのも、そうした強い思い入れがあっての話だったわけです。

当時、他のゲーム機を差し置いてセガハードが好きという人は残念ながら少数派で、ファンとしては肩身が狭い思いをしていたのも事実です。第1話の「セガハードを選んだ人間が、そういった人生を歩めると思うなよ……」というおじさんのセリフは、それを踏まえた内容と察していただければ幸いです。今ほどインターネットが普及した時代ではなかったので、同じ志向を持ったゲーム仲間を探す手段も限られていました。

そんなファンたちの「交流の場」として盛り上がりを見せていたのが、ゲーム専門誌の読者ページでした。おじさんが第2話で語った「セガサターンソフト読者レース」もそのひとつで、その最終結果を見届けることが異世界で生き抜くモチベーションになっていたと作中でも語っていました。「読者レース」の歴史は古く、1991年4月号の「BEEP!メガドライブ」誌から始まり、後継誌の「セガサターンマガジン」から「ドリマガ(ゲーマガ)」へと20年以上も続いたゲームのランキングが載っている名物コーナーです。そのサターン読者レース最終結果までの全記録が掲載されている本が、おじさんが手にしていた『サターンのゲームは世界いちぃぃぃ!』でした。    

ちなみに最終結果の第1位は、原作コミック第1巻でも触れられていた『EVE burst error』(最終オッズ:9.5014)になります。第2位は『グランディア』(最終オッズ:9.4847)。

なぜ『ガーディアンヒーローズ』が197位なの?

「高い革新性を持った横スクロールアクションゲーム」とおじさんが評するように、ファンの間でもいまだ語り草となっているのが、『ガーヒー』こと『ガーディアンヒーローズ』。それがなぜ197位という結果になったのか。じつはこれ、集計側からするとちゃんと納得できる理由があるんです。こちらについては、次回「ちょっとディープなセガゲームの世界」で触れてみたいと思います。endmark

作品情報

TVアニメ『異世界おじさん』
好評放送中

  • ©殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 ©SEGA