「すべてがいい」第2話の見どころは……?
――前回のキーワードだった「余白」がとくに発揮されているのが、ぼたんといぶきをはじめとした、キャラクターたちの関係性の変化です。
藤田 それぞれの関係性がどんどん変化していくことが、『上伊那ぼたん』の序盤における魅力ですよね。いぶきとかなでは開始時点ですでに出会っていて、身近なはずだけど遠い距離にいます。そこにいきなりぼたんが入ってきて……。一方で、やえかとあかねは、もうふたりだけの空間を築いているんですよね。
村上 ここからどう変化していくのかはお楽しみに、という感じなのですが、1クールで区切りといえるところまでを描きますので、期待していただければと思います。
――現時点で放送されている第2話までの中で、おふたりが気に入っているシーンやポイントを挙げると?
村上 第2話までだと、ぼたんといぶきの微妙な関係性の深まりですよね。
藤田 いぶきがまずぼたんを知るところと、かなでがいぶきへ矢印を向けていること。それが動いていく予感を抱かせる冒頭2話になっていると思います。
――第1話は佐久間貴史監督の絵コンテ・演出ですが、演出という観点ではいかがでしたか?
村上 かなでとぼたんがふたりでお酒を飲むシーンがよかったですね。お姉さんのようにふるまっているかなでが、じつは抜けていてかわいい人だということがうかがえるシーンなのですが、かわいさとコメディ的なやりとりの塩梅がうまくいったと感じています。
藤田 アバンで芝桜の中を駆け抜けるぼたんも気に入っています。TVシリーズの第1話の「つかみ」として「お、いいな」と思わされましたね。
――第2話は絵コンテ・演出が山本裕介さん、作画が松尾祐輔さんと、『ヤマノススメ』コンビの担当です。
村上 一人作画回はどこかのエピソードでやろうと思っていましたが、松尾さんにやっていただくことになるとは思いませんでした。最初から『ヤマノススメ』コンビでやろうと思っていたわけではなく、偶然の巡り合わせなんですよね。山本さんに合いそうなエピソード……と考えたときに、松尾さんのスケジュールとピッタリハマって。本当に21分、本編のすべてがいいんです。松尾さんが色味や背景までコントロールしてくださっているので、芝居が鮮やかなんですよね。ある意味、演出の領分まで担当されているのですが、それは山本さんとの仲があったからこそ成り立ったものだと思います。あと、なんといってもお酒の作画。プロップデザインの松尾さん自ら描かれているので、グラスや液体の表現が優れているんですよ。背景が上がってきてから、作画を調整するなんてこともされていました。
藤田 また、省略作画のニュアンスも素晴らしくて……! 力の入れどころ、抜きどころを理解して、バランスを取りながら描かれているんですよね。遠い場所まで描きこむ作品もありますが、限られたリソースで精一杯力を注ぎたいからこその省略作画の使い方がうまかったなと。単純に、小さく描かれている画がかわいいところも見どころなんですが(笑)、たとえば、服のシワだとか線の取捨選択の絶妙さなどからも、松尾さんのすごさが出ているので、ぜひ注目してください!
「アニメ作りは楽しい」ということを忘れないようにしたい
――第1話、第2話だけでも、ぼたんたちのファッションが次々と変化していきました。原作単行本には塀先生がファッションに対するこだわりを語るコラムが掲載されていますが、本作でも藤井有紗さんがかなりの枚数の衣装設定を手がけていますね。
藤田 アニメ制作において、衣装数が多ければ多いほど作業工数が大変になるので、ある程度の制限を設けるべきであることは理解しています。ただ、衣装のバリエーションが『上伊那ぼたん』の魅力であることも事実です。なので、塀先生が原作マンガを描かれた際に参考にされていた服をお聞きして、そこから藤井さんに仕上げていただきました。
――本作はソワネにとって元請制作2本目となるTVシリーズです。前作『mono』に続く「聖地もの」という側面もありますが、本作で秩父をはじめとした各地を舞台とするにあたって、意識したことはありましたか?
藤田 舞台をそのまま描くことも大事なことではありますが、アニメならではの魅力を生み出して、現地へ足を運んでもらえるきっかけにすることですかね。たとえば、原作の連載中に描かれていた場所が、アニメ化作業中に改装されてしまった……なんてこともあるんですよ。となれば、放送後に聖地巡礼をしても、その場所は変わっているわけです。それもある種の発見になると思うので、その時々に応じた見せ方で舞台の資料映像として敬意を払って描くこと。それが『mono』から引き続いて意識していることかもしれません。
――最後に、ソワネとしての今後の目標を教えてください!
藤田 周囲の方々から「ソワネは尖っている」とよく言われるんですよ。たぶん、クリエイティビティを活かした作りがそう言われているのだと思っていて。そこを残したまま、今後も作っていければなと。
村上 僕と藤田くんがやりたいことのために立ち上げたスタジオなので、最初の想いを抱き続けてアニメを作っていきたいですね。
藤田 アニメ作りは楽しい、ということは忘れたくないですね。一緒に楽しんでくれる人とともに、今後も制作を続けていこうと思います。
村上 そのためにも、まずは『上伊那ぼたん』全話納品を頑張ります!![]()
- 村上光
- むらかみひかる エイトビットで『ヤマノススメ サードシーズン』『ヤマノススメ Next Summit』などの制作に携わった後、2023年にソワネを立ち上げる。『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』は同社にとって2作目のTVシリーズとなる。
- 藤田規聖
- ふじたのりまさ 村上光と同じくエイトビットで制作進行やプロデューサーを担当した後、共同でソワネを立ち上げる。同社のTVシリーズ第1作『mono』ではアニメーションプロデューサーを務めた。


























