TOPICS 2024.06.29 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第18回 生まれる前の時代の空気が詰まった
JUDY AND MARYさんの「クラシック」(中編)

JUDY AND MARY「クラシック」をテーマにした伊達さゆりのフォト&インタビュー連載。第18回の中編では、楽曲が発表された90年代に思いを馳せてもらった。自身が生まれる前の時代は、彼女にとってどのように映っているのか……?

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/RoseMarie seoir

「好き」が別の「好き」を追い越していった

――JUDY AND MARY以外にアートワークがお気に入り、というアーティストはいますか?
伊達 やっぱりきゃりーぱみゅぱみゅさんの世界観が好きで、部屋にひとつは置いておきたい感じなんですよね。もし、きゃりーさんをこれまで知らなかった自分が、今、お店で出会っても、きっと買っちゃうだろうなと思います。その他だと、AKB48さんの『さよならクロール』も印象に残っていますね。いろいろな色の花びらを浮かべたプールにメンバーの皆さんが入っている写真なのですが、自分のお部屋をカラフルにしたいと思っていた時期があって、こんなキラキラしてかわいいCDを飾れたらいいなと思っていました。

――前編でお絵描きのエピソードがあったり、過去にも「美術の授業が好きだった」(第9回)と言っていましたが、絵や美術の勉強をしたいと思ったことはありますか?
伊達 専門的な勉強をしたり、上手くなりたい、と思ったことはないですね。自分が楽しければいいや、というか。自由帳を見つけた母親から「これすごいね、さゆが描いたの?」と言われても「勝手に見ないで!」と怒ってしまったり(笑)。絵に関しては、誰かに見てもらいたいと思ったことがほとんどないんですよね。

――一方で、歌に関してはずっと続いていて、今では人前で披露するまでになっているわけですよね。その違いはどこにあったのでしょうか?
伊達 なんだろうな……。絵は、小さな頃にはハマっていたんですけど、小学校の高学年から中学に入る頃にはそんなに描かなくなっていたんです。自由帳からももう離れて、それこそ美術の授業で描くくらいになったんですけど、歌に関しては物心がついたもう少しあと、ある程度、自分が大きくなってから好きになっていったので、それだけ思い入れが強くなって、今でも続いているのかもしれないです。

――先に好きだったものをあとから好きになったものが追い越していった、というような。
伊達 そうですね。気づいたら、みたいな感じです。

自分が家族に布教したアーティスト

――他にお母さんが家で聞いていた楽曲でおぼえているものはありますか?
伊達 槇原敬之さんの「WE LOVE YOU.」という楽曲をずっと流していました。これもジャケットが印象的で、ホットケーキのジャケットでしたね。母は槇原さんの楽曲も大好きで「歌詞がすごくいいの」と言っていました。当時の私には深すぎて、読んでもなかなか理解できなかったんですけど(笑)。

――逆に伊達さんが聞いていて家族の方も好きになった、というアーティストはいますか?
伊達 back numberさんは、私が母に布教しました。ずっと「いいから聞いてみて!」と勧めていて「あとで聞くね」と言われていたのですが、ようやく聞いたら私と同じくらいハマっちゃいました。あとは『ラブライブ!』シリーズの楽曲もそうですね。アニメとはほぼ無縁の母だったんですけど、ずっと楽曲を聞いている私の様子を見て「さゆがこんなにハマるなんて」とすごく興味を持ってくれました。

――お父さんの音楽の趣味は?
伊達 吉川晃司さんが大好きです。あとはTUBEさんやサザンオールスターズさんとか。COMPLEX(吉川晃司と布袋寅泰のユニット)さんの楽曲もよく聞いていましたね。COMPLEXさんは最近、東京ドームでライブがあったんですけど、父は仕事で行けなかったのがすごく悔しかったみたいで「(独占放送予定のある)WOWOWに入る!」と言っていました(笑)。

実際に見てみたい、生まれる前の時代の景色

――JUDY AND MARYは1993年にメジャーデビュー、2001年には解散しているので、まさに90年代とともにあったバンドだと思うのですが、伊達さんにとって「90年代」はどんなイメージですか?
伊達 なんとなく、みんながやりたいことを自由気ままに表現できていた、やれていたようなイメージを勝手に持っています。今のほうが風通しがよくなったこともたくさんあると思うんですけど、誰でも自由に発信できるようになった分、ふとしたことでバッシングを受けて、それがすぐに可視化されてしまうので、挑戦できる環境はあるけど簡単には踏み出せなくて、ちょっともったいないなと思うこともありますね。90年代のアーティストの方たちを見ると、今よりも衣装や髪型が奇抜だったり、自分のやりたいことを怖がらずにやっている印象があります。もちろん、その時代にもバッシングなどはあったと思うんですけど、今はいい意見も悪い意見も一斉に吹き出してくる感じがするので「それはどうなんだろう」と思ってしまいます。

――当時は今よりも景気がよかった分、自由闊達に冒険ができた、という面もあったと思います。両親からその頃の思い出話を聞いたことはありますか?
伊達 どのアーティストさんのCDだったかは忘れてしまったのですが、ブックレットがなかったので、歌詞を全部耳コピして書き写して、自分でブックレットを作っていたという話を母から聞いたことがあります。今だと考えられないので、びっくりしましたね。そもそも子供の頃はCDがなかなか手に入らなかった、とも言っていました。今のように身近に音楽に触れられる環境ではなかったみたいですね。

――もしも90年代に行けたら、行ってみたいと思いますか?
伊達 行きたいです。ルーズソックスを履いているような、平成のギャルたちに会ってみたい(笑)。あと、小さな頃に見ていた、ちょっとだけざらついた画面のテレビを、今の自分の目で見てみたいです。endmark

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