TOPICS 2024.07.26 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第19回 コブクロさんの「Million Films」が
呼び起こす、戻れないあの頃と父の思い出(後編)

コブクロの「Million Films」をテーマにお届けしてきた、伊達さゆりのフォト&インタビュー連載の第19回。締めくくりとなる後編では、テーマ以外に父から影響を受けた楽曲やアーティストに触れながら、最近の父とのやりとりを打ち明けてもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

車の中でライブの臨場感を味わっていた

――中編でもある程度、歌詞について語ってもらいましたが、他に「Million Films」の歌詞で印象的なフレーズはありますか?
伊達 サビの「そばにいれるこの瞬間を/切り取ればいつだっていくつだって/溢れる様に/生まれてくる/LOVE SONG」が好きですね。きっと誰にでも当てはまる言葉で素敵だなと思います。その少し前に「100万枚撮りのフィルム」というフレーズが出てきますが、楽曲のタイトルは英語で「Million Films」になっているのも、なんだかおしゃれでカッコいいなと思います。1音1音を置いていくような歌い方も耳に残りますね。

――お父さんの車の中で聞いていた楽曲で、他に記憶に残っている楽曲があれば教えてください。
伊達 COMPLEXさんの「恋を止めないで」とか。メロディがカッコいいなと思ったのと、とにかく父が大好きで、ずっと流しながら隣で口ずさんでいたのをおぼえています。

――20才くらいの人からCOMPLEXの話題が出てくることってあまりないと思うのですが、お父さんやお母さんが聞いていたところから知って……というパターンもあるんですね。
伊達 CD音源ももちろんたくさん聞いていましたが、ライブCDも父がよく流していました。CD音源とライブバージョンを交互に聞きながら「このライブのアレンジがカッコいいな」と子供ながらに感じていましたね。客席にマイクを向けてお客さんの声を拾ったり、「スター感」がすごいなと思って。車の中でライブの臨場感みたいなものを味わいながら、実際に演奏したり歌ったりするときはこんな風なんだ、と聞き入っていました。

なかなかわからない父親の気持ち

――父の日の話題は前回に出ましたが、最近、お父さんと話をしましたか?
伊達 少し前に地元に帰って、買い物に出かけるときに「何か欲しいものある?」と聞いたんですけど、「何もない」と言うんです。お酒を飲まない人なので、困ったらお酒、みたいなこともできないし、どうせなら欲しいものをあげたいなと思ったんですけど、やたらと「いい、いい」と言うんです。照れ隠しで言っているのか、本当に欲しいものがないのか……たぶん照れ隠しだと思うんですけど。一方で物へのこだわりは強いので「これがいいかな」と思ってあげたものでも、デザインとかが気に入らないとあんまり使ってくれなかったりもするんです。

――お父さんのために歌ってあげるとか……?
伊達 いや~……それはむしろいちばん嫌がるかも(笑)。

――贈ってもらっただけでうれしいと思うんですけどね……。
伊達 そうなんですかね……父の気持ちは私にはわからないですね。でも、きっと記事が公開されている頃には何かをあげていると思います。お誕生日が近いので。

――オリジナルのもの、世界にひとつだけしかないものはどうですかね。絵とか。
伊達 絵は子供の頃によくあげていましたね。たしかによろこんでくれていました。物じゃないのか、やっぱり気持ちなのかな……。

――この場を借りてお父さんに伝えたいことはありますか?
伊達 口を開けば冗談を言っているような人なんですけど(笑)。もちろん、健康には気をつけてほしいと思いつつ、たぶんそれは私が言っても聞かないと思うんです。今でもわりと、私のことは子供扱いしてくるんです。「まだお前は何もできないだろう」みたいなことを冗談めかして言ってくるんですけど、そんなことはもうないんだよ、と言いたいです。あとは、もう少し頼ってほしいかもしれないですね。それこそさっきの「何が欲しいの?」というやりとりも、私にお金を使わせたくないということだと思うんです。でも、今は東京でお仕事をさせてもらっていて、ちょっとした親孝行みたいなものをしたいと思っているので、少し素直になっていただきたいな、という感じですね(笑)。

東京に出てくるときに感じた遠回しな愛情

――東京に出てくるときは、お父さんは快く「行ってらっしゃい」と送り出してくれたのでしょうか?
伊達 自分が「やりたい!」と言ったことをやるために出てきたので、反対されることはなくて、めちゃくちゃ防犯や防災について考えてくれました。遠まわしですけど、それが愛情だったのかなと思いますね。「これだけは買っておいたほうがいいぞ」みたいなことを毎日のように言われていました。

――具体的にはどんなものを買いなさいと言われたのですか?
伊達 災害用のリュックやお水、食料ですね。「ひとり暮らしをするってことは、何かあったときも当然ひとりで行動しなきゃいけないから、家に水や食料を置いておくんだぞ」と言われて。今でも生存確認のように「家に水はちゃんとあるのか?」と聞かれます。

――ああ、もうそのままズバリな防災対策なんですね。
伊達 そうです。あとは、地元から東京に戻るときも「ちゃんと家に着いたか」とか。直接私に連絡はよこさないんですけど、母経由で「さゆ、もう家に着いたかな」と聞いているみたいで。母が「気になるなら自分で連絡しなよ」と言うと「いや、いい」って(笑)。そんなやりとりがもう3~4年続いています。endmark

関連情報

【撮影協力】
巣鴨地蔵通り商店街
<公式HP>
https://sugamo.or.jp
 
とげぬき地蔵尊 高岩寺
<住所>
東京都豊島区巣鴨3-35-2

<公式HP>
https://togenuki.jp

 

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