――TVアニメ第3期が制作されると知ったとき、どんな物語になると想像していましたか？
上田　ゲームのリリース1周年記念に公開されたショートアニメ（ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」1st Anniversary Special Animation）がキタサンブラックとサトノダイヤモンドの入学編だったので、ふたりが中心のお話だろうとは思っていました。キタサンブラックにとって初めての有馬記念が、ゴールドシップにとっての引退レースになることも知っていましたが、まさかアニメでこんなにしっかりと描かれるとは思っていませんでした。

――放送されたばかりの第3話について聞く前に、第1話と第2話を振り返っての感想を教えてください。
上田　台本を読む前から、モチーフ馬のキタサンブラック号がめちゃくちゃ強かったことはもちろん知っていたんです。だから、第1話でキタちゃんが負けて終わったのにはすごくびっくりして（笑）。「ここから、どうなっていくの？」って思いました。

――モチーフ馬のキタサンブラック号の戦績を詳しく知らない視聴者も、連敗で始まる第1話の展開には驚いたかもしれません。
上田　きっと、そうですよね。すごく有名な競走馬だから、名前だけは聞いたことがある、みたいな人も多いと思うんです。ゴールドシップに関しても、同じような感覚の人が多いのかなと思っていて。

――たしかにキタサンブラックと同様に、競馬や『ウマ娘』に詳しくない人でも、名前は聞いたことがあるかもしれないくらい有名な存在ですね。
上田　ただ、『ウマ娘』のゴルシちゃんはギャグ要員というか、面白い、変わったキャラクターという印象が強そうですよね（笑）。でも、第3話を見てもらえたら、その印象も変わるんじゃないかな？　変わったらいいなって、ふんわり願っています。

――第1話と第2話のゴールドシップは、第1期や第2期で見てきた、いつものゴールドシップでした。
上田　私も、この雰囲気からどうやってラストランの有馬記念につながっていくんだろうと思っていました（笑）。じつは、第3話のアフレコの前には少し不安もあったんです。

――どのような不安があったのですか？
上田　モチーフ馬のゴールドシップ号はGⅠを6つも勝っているすごい馬なのに、『ウマ娘』のゴルシちゃんにはさっきお話ししたようなイメージがあるから、強いウマ娘という印象が薄かったんです。そんな中、有馬記念で感動のラストランを描くことになったら、ゴールドシップ号の実際の戦績を知らない人の目にはどう映るんだろうって、すごく気になっていました。

――ラストランが描かれると知ったのは、第3話の台本を受け取ったときですか？
上田　はい。第2話のアフレコが終わったあと、第3話の台本をいただいたら表紙の絵がゴルシちゃんで。チラッと中を見たらセリフも多かったので驚いていたら、監督と音響監督から「第3話はよろしく頼みますね」と言われたんです。そのとき、「本当にラストランを描くんだ！」と思いました。

――その第3話の台本を読んだときの感想を教えてください。
上田　モチーフ馬のゴールドシップ号って、3歳で皐月賞と菊花賞の2冠を獲って、さらに有馬記念まで勝っためちゃめちゃ強い馬で、きっと競馬ファンの皆さんもそういうイメージだと思うんです。でも、それからだんだんヤンチャぶりを解放しちゃって（笑）、強いけれど、波もすごく大きいというイメージになったと思うんですね。

――『ウマ娘』のゴールドシップのキャラクター性は、その破天荒なイメージを主に膨らませた印象です。
上田　でも、第3話の有馬記念では、途中まで本当に強かった頃のゴールドシップが再現されているというか。勝ちパターンになるけれど、最後の最後で力がもう足りなくて、最終的には8着という展開。私の息芝居でゴルシちゃんの全盛期の強さや、GⅠ6勝分の重み、あの頃と違って追いつけない今などを見てくださっている方に感じさせることができるのかなとか、いろいろなプレッシャーを感じました。

――一瞬、全盛期の勝ちパターンに入ったと思わせる場面は、2015年の有馬記念での走りをリアルになぞっていましたね。
上田　第3話のアフレコのとき、シナリオディレクターさんが「当時、実際のレースを見ていた人に『こんなレースだったな、懐かしいな』とか『ウマ娘ではこうなるのか』と思ってもらいたい。ゴールドシップの有馬記念も、そういうものが伝わるように作っています」とおっしゃっていて。映像は本当に素晴らしいし、その通りのものになっていると思うのですが、私のお芝居がそうできていたのかなって不安でした。というか、振り返ってお話ししている今もまだ不安です（笑）。