TOPICS 2026.04.14 │ 17:00

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』スタッフリレーインタビュー①
プロデューサー・村上光×藤田規聖対談(前編)

埼玉県・秩父を舞台にお酒を通じて揺れ動く女子大生たちの機微を描く『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』。オンエア開始にあわせてFebriではメインスタッフによるリレーインタビューをお届けする。第1回はアニメーション制作を担うソワネのプロデューサー・村上光と藤田規聖の対談。アニメ化の経緯から豪華スタッフ起用の裏話を語ってもらった。

取材・文/太田祥暉(oriminart)

会社を立ち上げるときに、真っ先に作りたかったタイトル

――『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(以下、上伊那ぼたん)』のアニメ化の経緯から聞きたいのですが、村上さんと藤田さんが携わっていた『ヤマノススメ』シリーズでは、原作者の塀先生が原画を担当していましたね。
村上 『ヤマノススメ サードシーズン』を制作していた当時、参加していた松尾(祐輔)さんや古橋(聡)さん、嶋田(和晃)さんに塀先生が連載していた『月のテネメント』を勧められたんです。塀先生は松尾さんたちと交流もあったようでしたし、アニメ制作にもご興味を持たれていた。それならば……と松尾さんが総作画監督、古橋さんが作画監督の第12話で第二原画をお願いしたことが最初の出会いでした。
藤田 僕の制作進行担当回ですね。当時は「なんでマンガ家の方にお願いするんだろう?」 と驚いたのですが、上がりを見ると素晴らしくて。続編となる『ヤマノススメ Next Summit(以下、Next Summit)』でも第12話で原画をお願いしたんです。その『Next Summit』の制作中に塀先生が『上伊那ぼたん』を連載開始したんですよね。

――最初に読んだ際の印象はいかがでしたか?
村上 序盤はわかりやすいガールズコメディでしたよね。
藤田 でも、読み進めていくと、行間やテンポを重視して、読者に解釈を委ねるような作風になっていって、その余白の多い雰囲気が面白いなと思うようになりました。アニメにしたい、という気持ちが固まったのは、第3巻のラストを読んだあたりだと思います。
村上 そこからですよね、本格的にアニメ化に動いたのは。これまで自分たちが携わってきた作品とは異なるテイストの原作でもあるので、演出をうまく機能させれば面白くなるだろうな、という予感から企画を立ち上げました。
藤田 ソワネを立ち上げることになって、真っ先にやりたいと挙がったタイトルでしたね。

――企画を始動させた時点で、軸となったのがキャラクターデザインの吉成鋼さんだったそうですね。
藤田 まず、どなたにキャラクターデザインをお願いするかと考えたときに、『Next Summit』のエンディングアニメーションを担当されていた吉成さんのことが思い浮かびました。でも、「僕はお酒をあまり飲まないから」と最初は断られたんですよ。ただ、しばらく経って吉成さんからさまざまな提案をいただくようになって、ご興味があることがわかってから、吉成さんを軸に作品を考えるようになりました。
村上 同時に考えていたこととしては、クリエイターの個性を活かしたエピソード作りをすることですね。当初は方向性をもう少し定めるつもりだったのですが、各エピソードを担当する方の作風が画にあらわれるようにして、それを見どころにしたいな、と考えていました。
藤田 企画が動く以前に、塀先生が「自分の作品をアニメ化するなら、各演出さんの個性を発揮してほしい」とX(旧Twitter)で呟かれていたんですよね。その言葉に背中を押された節もあります(笑)。吉成さんが「各話の絵柄がキャラクターデザインから逸脱していてもいいのではないか」とおっしゃっていたことも大きかったですね。あくまで吉成さんの設定画が指針とはなりますが、各話ごとに異なるぼたんたちを描くことも面白いかなと。これも『上伊那ぼたん』という作品の懐が広いからこそ可能なことではありますが。
村上 補足しておきたいのですが、どれだけ作画のテイストが変わっても、キャラクターの魂はブレさせないように意識していますよ。

佐久間監督は「すさまじいバランサー」

――そして、プロップデザインの松尾さんや、サブキャラクターデザインのみやちさんが参加することになったと。
藤田 松尾さんは吉成さんの参加前にお声がけしていましたね。
村上 松尾さんにお願いした決め手は、やはり設定画がとても鮮やかだから(笑)。とはいえ、プロップデザインを担当されたことがあまりなかったので、松尾さんとしてはチャレンジ的な気持ちで乗り気になってくださったんです。みやちさんにもあらかじめ「メインスタッフとして入ってほしい」と声をかけていたおぼえがありますね。
藤田 本当にふたりがいると心強いんですよ。とても助かりました。

――監督の佐久間貴史さんの参加経緯を聞かせてください。
藤田 吉成さんからのご紹介です。佐久間さんのこれまでの作品も拝見していたので、ぜひお願いしたいなと。監督に誰を据えるのかによって作品の色や方針は変化しますが、佐久間さんはすさまじいバランサーなんです。吉成さんをはじめとした個性的なクリエイターの意見を取りまとめていただき、バラエティに富んだシリーズにすることができました。

――「各演出さんの個性を発揮させる」であるとか「バラエティに富んだシリーズを目指した」と話してもらいましたが、完成した映像を見ると、その言葉を証明するかのように、各エピソードで演出や作画のテイストが異なっています。そうなると、現場のスタッフも大変なことが多かったと思いますが……。
村上 設定画通りに描いたのに、作画監督から異なる修正が入ることもあるわけですからね……。なので、現場のスタッフは模索しながら奮闘してくださったはずです。
藤田 だからこそ、僕はラインプロデューサーとして、どうしたら各クリエイターの個性を活かせるのかを意識していました。撮影さんや仕上げさんにはかなり苦労を強いてしまったのですが、最善を目指して制作をしていたと思います。
村上 僕と藤田くんは「作画偏重型」とでも言うべきタイプの人間ですが、『上伊那ぼたん』はそれではいいものになりません。原作マンガにもあった、余白を活かした雰囲気作り、画面作りをしなければ、途端にダメなものになってしまうんです。そのために、作画以外のセクションにも時間を与えられるように意識していました。とはいえ、結果的にスケジュールはキツキツになってしまい、ご迷惑はおかけしてしまったのですが……!endmark

村上光
むらかみひかる エイトビットで『ヤマノススメ サードシーズン』『ヤマノススメ Next Summit』などの制作に携わった後、2023年にソワネを立ち上げる。『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』は同社にとって2作目のTVシリーズとなる。
藤田規聖
ふじたのりまさ 村上光と同じくエイトビットで制作進行やプロデューサーを担当した後、共同でソワネを立ち上げる。同社のTVシリーズ第1作『mono』ではアニメーションプロデューサーを務めた。
第2回に続く
作品情報


『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』
毎週金曜24:00~ TOKYO MX他にて好評放送中!

  • ©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会