――収録中、音響監督やディレクター陣とのやり取りで印象に残っていることはありますか？
村瀬　やっぱり変身シーンですね。第9話で初めて変身したときの話なんですが、最初は自分の気持ちをガンと声に出すお芝居をしていたんです。それこそ「スカイミラージュ！　トーンコネクト！」と力強くバンバンと決めていくお芝居だったのですが、ディレクターさんから「『トーンコネクト！』のところからは、彼のちょっと柔らかい部分を見せてください」と言われたんです。そこで「なるほど」と思ったのは、彼の覚悟だけでずっといくと、ともすれば怖い音色に聞こえてしまうのかな、と。それよりむしろ普段のツバサが持っている優しさとか、あるいは「大切なものを守りたい」という気持ち。その気持ちを熱量に変換して変身する。本番はそういう気持ちでお芝居をしました。

――ちょっと柔らかいニュアンスに変わったわけですね。
村瀬　あとから音声を入れた映像を見せていただいたんですけど、たしかにこっちのほうが作品の空気感――他人を否定しないとか、温かい包容力みたいなところとすごく合っているなと思いました。『プリキュア』シリーズが積み上げてきた精神というか、作法を学ばせていただいた感じがあります。

――アフレコ現場のリーダーは、やはり関根さんなのでしょうか？
村瀬　そうですね。めちゃくちゃ立派にリーダーを務めています。たまにちょっと天然なところを見せるんですが（笑）、そこがまたソラっぽい。それに対して「おいおい」みたいな感じで加隈（亜衣）ちゃんが突っ込んでいるのが、本当にソラとましろっぽいんです（笑）。

――なるほど（笑）。キャストの皆さんの印象をもう少し聞きたいのですが、まずは今、話題にも出たソラ役の関根さんですね。
村瀬　他人を否定せずに「いいですね」って力強く言える。それって、すごいことだと思うんです。ツバサにとってもソラはキーパーソンで、彼女のカッコよさが、それまでちょっと内向的だったツバサが外に向かっていくきっかけになる。「ナイトです」って言いきる強さを、ソラからもらったんだと思うんですよね。そういう意味で、すごく精神的な支柱になっています。それを演じる関根ちゃんのお芝居が、聞いていてすごく気持ちいい。スパンと気持ちを前に出すところもいいし、話すだけでまわりの人に元気を与えているというか。素晴らしいキャスティングだなと思います。

――ましろ役の加隈さんとは、これまでも何度か同じ作品に出演していますね。
村瀬　そうですね。加隈ちゃんとはデビューも同じくらいなんですけど、とにかくお芝居が巧みで。ましろって「かわいいところをすべて詰め込みました」みたいなキャラクターなんですけど、加隈ちゃんのさじ加減によって、いやらしい感じがまったくないんです。塩バニラとでもいうか（笑）。バニラの甘さだけじゃなくて、スッと塩味を足して、もうちょっと聞きたいなという気持ちにさせてくれる。加隈ちゃん自身が持っている、天性の癒しボイスだけでも十分素晴らしいと思うんですけど、そこの案配が絶妙で。聞いていると「感覚的にやっているのかな？」って思うんですけど。

――あともうひとり、重要なキャラクターというとエルですね。
村瀬　古賀（葵）ちゃんはやっぱりすごいですよ。「えるぅ」のセリフだけで、エルちゃんが今、こういうことを考えているのかな？ってわかりますから。『ひろプリ』を引っ張っているのは間違いなくソラなんですけど、もうひとり、作品を引っ張っている人を挙げろと言われたら、エルちゃんになるんじゃないかなと思います。古賀ちゃんとはアフレコが別の組になることが多いんですけど――一緒のときと別録りが半々くらいかな。先に録ったエルちゃんの声を流してもらうと「ああ、エルちゃんがいるとこういう気持ちになるよね」と思える。空気感を作るのが抜群に上手で、それを聞くと、自分もツバサとして作品の中にうまく入っていけるんです。

――実際にそこに存在している感覚が、皆さんにあるんですね。
村瀬　そうですね。この作品のキャスト陣はみんなそこにいて、しゃべっている感覚があります。『ひろプリ』の現場は上手な人ばっかりで、毎回の収録が楽しいです。

――では、最後に本作を楽しんでいるファンの方たちに向けて、メッセージをお願いします。
村瀬　長く続いている『プリキュア』シリーズに参加させていただけて、ありがたいなという気持ちも大きいのですが、今回の『ひろプリ』は脚本の力に唸らされるというか、人が作り出せるものの面白さって途方もないんだなと感じながら、毎週の収録に参加しています。まだ見たことがない方はぜひこれから見ていただきたいですし、すでに楽しんでくださっている方には、この先、あげはさんが出てくることによって、またひと味違ったキャラクター同士の関係性を楽しんでいただけるかな、と思います。とても面白いシリーズだと思いますので、毎週、楽しみに見てもらえるとうれしいです。