TOPICS 2024.04.27 │ 12:00

ペイトン尚未の「並行多元ヒロインズ」第10回
物語の始まりは「上京ヒロイン」とともに(中編)

声優・ペイトン尚未がさまざまな「ヒロイン」に扮し、憧れや理想を追求するフォト&インタビュー連載「並行多元ヒロインズ」。「上京ヒロイン」をテーマにした第10回の中編では、初めて東京に来たときのエピソードや、上京してひとり暮らしを始めたときの思い出、そして今につながる中学時代の出会いを明かしてくれた。

取材・文/大久保和則 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水  衣装協力/NICOLE CLUB

初めて東京に来たときに感じた「本当にあったんだ!」

――前編で「埼玉県民は東京に憧れがある」という話がありましたが、初めて東京に来たのはいつですか?
ペイトン 母が京都出身で、赤ちゃんのときから祖父や祖母に会いに帰省するときは一緒だったので、初めて東京に行ったのは新幹線の乗り換えでちょっとだけ降りたときです。たぶん、まだ0歳の頃ですね。

――では、初めて自発的に東京に来たのはいつですか?
ペイトン 小学6年のときだと思います。原宿に行きたくて、同級生のお友達と一緒に、その同級生のお母さんも同伴で行きました。

――そのときはどんなことを感じましたか?
ペイトン 「原宿って本当にあったんだ!」と思いました(笑)。ずっとテレビや雑誌の中の世界だったので。当時、『nicola』が好きでよく読んでいたんですよ。同い年くらいの女の子たちがモデルをやっていて、原宿特集が組まれているのを見て「いいな! 東京ってすごいな! 原宿に行ってみたいな!」と思っていたんです。それで友達のお母さんが連れて行ってくれて、すごくうれしかったです。

――「本当にあったんだ!」と思ったんですね(笑)。
ペイトン 思いました(笑)。びっくりしましたね。「うわ、人めっちゃいる!」とか「クレープ屋さんがこんなにあるんだ!」とか。

――テレビや雑誌を見て、思い描いていた東京、原宿とはシンクロしましたか?
ペイトン 「シンクロ以上」でした。そのときに行ったのは原宿だけでしたが、歩いている方や店員さんが着ているお洋服が、みんなきゃりーぱみゅぱみゅさんみたいで。当時、「原宿カワイイ」ファッションがすごく流行っていたので、イメージ通りだと思いました。そのときに着ていた自分の服は、私なりの最大限のオシャレだったのですが、「あれ? 自分のファッションは全然かわいくないな」と思っちゃって(笑)。

――どんな服を着ていたんですか?
ペイトン はっきりとは覚えていないんですけど、たぶん変な英語が書いてあるTシャツとキュロットスカートに、しましまのニーハイソックス、スニーカー、ボサボサの髪だったはずです(笑)。もちろん、ノーメイク。今思うとすごくダサいファッションだったと思います(笑)。

引っ越しとハグの思い出

――引っ越しにまつわるエピソードはありますか?
ペイトン お仕事の関係で、初めてひとり暮らしをしたのが高校3年の終わり頃でした。埼玉から東京に引っ越したんですが、その日が高校最後のテストの前日だったんです。だから正直、引っ越しどころじゃなかったんですけど、両親が手伝ってくれました。「これからはもう、家に帰ってもお母さんはいないんだな」と少し寂しくなっていたのですが、母に「頑張り」と言われてハグされて。今でもあのハグを毎日してほしいなと思っちゃいますね。

――思い出のお母さんのハグ。
ペイトン でも、会うといつもハグしてくるんですよ(笑)。「ありがとう」と思いつつ、相変わらずだなと感じたりもして。人前でもめちゃめちゃハグするんですよ。ライブを見に来てくれたときも「尚ちゃん、めっちゃよかった!」と言ってくれて、私も「ありがとう」って言うんですけど、スタッフさんやメンバーがいる前でも「尚ちゃん、ほらギューってギュー!」「ほらチュー!」とかしてくるんです(笑)。私は「イヤー!!」とめっちゃ叫んじゃって、叫び声がその場に響き渡るという(笑)。

――オープンなお母さんですね(笑)。
ペイトン そんな母と離れるのが最初は寂しかったんですが、結局、今でも週に2回くらいは会っているんですよね(笑)。そこは東京に近い埼玉の強みなので、これからも会えるときに会おうと思っています!

――テストの前の日に引っ越しというのは、たまたまその日になっちゃったんでしょうか?
ペイトン たまたまです。でも、テストはバッチリできて、無事に卒業できました。テストの日、出欠確認のために名前を呼ばれるんですよ。私が名前を呼ばれたとき、前に座っている子が「え!?」という顔で振り向いて頭を抱え始めたので「どうしたのかな? 急に頭が痛くなったのかな? 大丈夫かな?」と心配していたら、休憩中に「ペイトン尚未さんですか?」と声をかけられて。同級生が私のことを知ってくださっていて、すごくうれしかったです。卒業前のテストで初めて会った子なので、少し気まずかったですけど(笑)。

最近になって知った中学からの友達の打ち明け話

――他に新生活に切り替わるときの思い出で印象深いものはありますか?
ペイトン 私、中学受験をしたんです。小学校は地元の地域のみんなが行く学校だったんですけど、中学はけっこう遠くで通学時間もかかったし、通っていた小学校からその中学に行ったのは私だけだったので、誰も知っている子がいなくて。そういう子が多い学校だったので、きっとみんな同じ気持ちだったと思うんですが、私はとくに「初めまして」の人と仲よくなるのに時間がかかる子だったので「変な子だと思われていないかな?」とか「私の服、変じゃないかな?」とかいろいろ考えすぎて、ずっと本ばかり読んでいましたね。

――打ち解けることはできましたか?
ペイトン その頃からの友達がこの前、家に来てくれたので当時のことを聞いたんです。「最初はずっと本を読んでいるし、静かなタイプの子なのかなと思っていたけれど、読んでいる本が少女マンガだったから、大丈夫だろうと思って話しかけた」って。それで「絶対に変なやつじゃん、と思ったから仲よくなったんだよ」と言われて。私、そんな風に思われていたんだと、最近になって知りました(笑)。あのとき少女マンガを読んでいてよかったなと思います。中学でマンガは持ち込み禁止のところが多いと思うのですが、そこは許していただきたい(笑)。その友達と出会ってからは、まわりの子たちともすぐに仲よくなれたので!endmark