TOPICS 2023.08.18 │ 12:00

ペイトン尚未の「並行多元ヒロインズ」
第2回 ジブリヒロインと夏の思い出(前編)

声優・ペイトン尚未がさまざまな「ヒロイン」に扮し、憧れや理想を追求するフォト&インタビュー連載。第2回は、ジブリ作品の『風立ちぬ』がテーマ。最初に見たときから印象が変わっていったというヒロイン・里見菜穂子を通じて受けた影響とは?

取材・文/大久保和則 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/an another angelus、F i.n.t

「儚くも明るくて強い女性」を意識した

――今回はジブリ作品の『風立ちぬ』をイメージした撮影でした。衣装もシチュエーションもハマっていましたが、撮影の感想を教えてください。
ペイトン 『風立ちぬ』といえば、まず思い浮かぶのが青空なんですけど、今日は曇り空で少し雨がパラつくこともありました。でも、そんな天候を味方にできるような傘の演出ができたので、晴れじゃなかったけれども撮影はすごく楽しかったです。

――『風立ちぬ』というテーマを聞いたときはどのように捉えましたか?
ペイトン 第1回の「変身ヒロイン」から大きく変わったので、最初に「そうきたか!」と驚きました。『風立ちぬ』は私も大好きな作品で、カメラの前ではヒロインの里見菜穂子を思い出して「儚くも明るくて強い女性」を意識していました。菜穂子は主人公の堀越二郎と美しくも切ない大恋愛をして、添い遂げる女性なので。「元気!」というよりも、少し物憂げな表情にも挑戦させていただきました。これまであまり見せてこなかった表情もあると思います。

2度目に見たときに号泣してしまった

――ペイトンさんが思う、『風立ちぬ』の魅力や好きなところを語ってもらいたいです。
ペイトン 初めて見たのは10年前で、お母さんと一緒に映画館で見ました。もともとジブリ作品が好きで、テレビのCMで「宮崎駿監督の最新作」と宣伝されているのを見て、「絶対に見に行く!」と私から誘ったおぼえがあります。

――映画を見て、当時はどんな感想を抱きましたか?
ペイトン 当時の純粋な私の中では「菜穂子さん、かわいそう」という思いが強かったです。あの時代背景だからこその物語ですし、今見ても胸は痛みますが、当時は病気におかされてしまい、それでも強く生きようとする菜穂子さんを見て、勇気づけられたと同時にかわいそうだと思ってしまったのが率直な感想です。そんな感想を抱きつつ、母親がラストシーンで号泣している姿を見て「どうして泣いているんだろう?」と思った記憶もありますね。それから1~2年後にテレビで放送されることになって、久しぶりに見てみたんです。

――そのときに見た『風立ちぬ』は、いかがでしたか?
ペイトン 今度はラストシーンで号泣してしまいました。子供の頃はなんであんなに平気だったのかわからなくなるくらい、心を動かされる内容だったんだと、そのときに気づきました。とにかく、ラストシーンのあのセリフが……「生きて」という、ただその3文字が重くのしかかってくるんです。病と闘った強く美しい女性からの愛する人へのメッセージがその3文字だということが胸に迫りましたし、それを受けて二郎は強くうなずくのですが、このふたりはなんて美しい恋愛をしているんだろう!と。

――なるほど。『風立ちぬ』の中で、とくに好きなシーンを挙げると?
ペイトン ここまで話してきて「そこ?」と思われてしまうかもしれないのですが……ジブリ作品特有の、食べものがすごくおいしそうに見えるシーンです。「シベリア」というお菓子が出てくるのですが、私は『風立ちぬ』を見て初めてこのお菓子を知りました。「おいしそう!」と思い、お母さんに頼んで買ってきてもらったのですが、そのときはまだおいしさがわかりませんでした……。でも、最近スーパーで見かけたので買ってみたら、すごくおいしくて。大人になって、作品の見方も変わったし、味覚が変化したことも感じられた作品です。

好きでい続ける気持ちを生きる力にしたい

――『風立ちぬ』が、ペイトンさんの生き方や人生観に影響を与えた部分はありますか?
ペイトン 二郎は空を飛びたいという夢を持っていて、それに向かって幼い頃から努力しているんですが、たぶん今の私と同じくらいの年齢のときに飛行機の製図をしているシーンがありました。そのシーンを見て、小さい頃からずっと何かを好きでい続けることが生きていく理由になると知ったというか。私自身、声優として活動させていただいている上でいちばん大事にしているのは、作品を愛する気持ちや、もともとアニメが大好きだったという気持ちなんです。そういう気持ちをずっと忘れずにいられたらいいのかなと思わせてくれたのが、二郎でした。私も、好きなものを好きでい続けて、それを生きる力にする人生が歩めたらいいなと思っています。

――連載の第1回でも、「好きなことが自分の力になる」と話していましたね。
ペイトン そうですね! 私は「とにかく変身ヒロインになりたい!」という気持ちで、この世界に入ったので(笑)。

――ジブリ作品には魅力的な男性キャラクターもたくさん登場しますが、好きな男性キャラクターを挙げると、やはり堀越二郎ですか?
ペイトン 今回のテーマに関係なく、堀越二郎はすごく魅力的な男性だと思います。劇中では関東大震災の様子が描かれていますが、みんなが混乱するなかで二郎はとても冷静で、ケガをしている人を介抱します。まわりを見て、人のために動ける人なんだという印象が強いです。他には『となりのトトロ』に登場する勘太が大好きで! 世の女子はハクやハウルに惹かれる方が多いと思いますし、私ももちろん好きなのですが、勘太が傘を差し出すシーンがもう! 「素直になれよー」と思うのですが、サツキちゃんが傘を取りに行くと勘太が飛行機で遊んでいるシーンも愛おしくてかわいらしくて。いかにも小学生男児という感じが、すごく好きです。パっと出てくるのはそのふたりですね、あまり「イケメンが好き!」とはならないんです(笑)。endmark