TOPICS 2024.07.25 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第19回 コブクロさんの「Million Films」が
呼び起こす、戻れないあの頃と父の思い出(中編)

第19回はコブクロの「Million Films」がテーマとなった、伊達さゆりのフォト&インタビュー連載。中編では、前編に続いて父の話題、そして幼心に感じた楽曲の魅力を掘り下げる。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

声の大きさや笑い方は父に似たと思う

――「Million Films」の他に、コブクロの楽曲でお気に入りのものはありますか?
伊達 「君という名の翼」という楽曲が印象に残っています。少しアップテンポな曲なんですけど、これも車の中で流れていて好きでした。前回も少し話しましたけど、父はTUBEさんやサザンオールスターズさん、吉川晃司さんなど、ロック寄りの楽曲が好きで聞いていることが多かったんですけど、そんな中、コブクロさんはゆったりしたテンポなので耳に残ったのかなと思います。

――音楽以外でお父さんから影響を受けているなと感じることはありますか?
伊達 声の大きさですね。あとは、笑い方とか。父は声がすごく大きいんですよ。それに負けないようにしゃべらなきゃという対抗心みたいな気持ちがあって、ずっと「うわーっ!」というテンションでしゃべっていました(笑)。

――ああ、声の大きさは家族の影響が大きいかもしれないですね。そして家を離れてみないと「世間の平均値よりもボリュームが大きいらしい」と気づかないかも。
伊達 あと、父は電話で話すとき、立って歩きながら話すんです。母は「うるさいから座りなさい」とよく注意していたんですけど、私も気づくと家の中で同じことをやっていて。誰かと電話しているといつも部屋を歩き回っていたり、何かしながら話す癖があって、これは間違いなく父譲りだなと思うんです。ひとり暮らしになると誰にも注意されないので、ずっと続いちゃっていますね(笑)。

耳にするとサイドミラーを見ていた頃の気持ちに戻れる

――「Million Films」のメロディに惹かれた一方、子供の頃は歌詞についてはよくわからなかったということでしたが、成長して内容がわかるようになると楽曲の印象も変わりましたか?
伊達 変わりました。小さな頃は「子供たちの放課後」みたいな印象だったんですけど、今、あらためて歌詞を読んでみると恋愛的な要素も感じますし、当時と違った楽曲のように思えるのは、自分がちゃんと年を重ねられているということなのかなと思います。でも、メロディや曲調から受ける印象は変わっていなくて、聞くとすぐにあの頃に戻れるという不思議な感覚もあります。

――サイドミラーを見ていた頃に戻れるんですね。
伊達 そう、サイドミラーを見ていた頃に(笑)。

――ノスタルジーを歌っている楽曲でもあるので、その受け取り方もまた正解なんだと思います。自分の中で印象が変わったと感じたのはいつ頃でしょうか?
伊達 最近です。聞き返してみて印象が変わりました。小さい頃を思い出して、なんとなく切なくなってしまうので、気軽に聞けないところもあったんです。もうあの頃には戻れないんだな、という気持ちになるというか。最近また聞き始めたのですが、子供の頃は「どういう意味なんだろう?」と思っていた「100万枚撮りのフィルムでも/撮りきれない程の想い出」といったフレーズも、なんとなくそういう意味合いなんだろうなと理解できるようになってきました。でも、5年後に聞いたらまたきっと違う感じ方をするんだろうな、とも思いますね。

「我が家のお茶の間」の記憶と結びついている、ある楽曲

――子供の頃を思い出すという話がありましたが、他に「聞いていると曲の内容とはあまり関係ないイメージが思い浮かぶ」楽曲はありますか?
伊達 めちゃめちゃあります。テイストは全然違うんですけど、『クレヨンしんちゃん』の主題歌なんかはそうですね。まだ私が生まれる前、90年代に放送されていたものをビデオ屋さんで借りてよく見ていたのですが、その頃のOPやED主題歌はもうはっちゃけたような元気な楽曲なのに、聞いていると自分が幼い頃の風景を思い出してちょっと切ない気持ちになるんです。あれ、何なんだろう?と思います。

――ちなみに、どの楽曲でしょうか?
伊達 ほぼ全部なんですけど、それこそ初代OPの「動物園は大変だ」とか。ただ、最近の主題歌になると、そんなに懐かしさを感じなくなるんです。歌い方や音の雰囲気のせいなのかもしれないですが。

――調べてみると「動物園は大変だ」は(原作者の)臼井義人さんの作詞なんですね。作曲は織田哲郎さん。
伊達 そうだったんですね! めちゃめちゃ繰り返し聞いていたわけでもなく、アニメの最後に流れるものを聞いていただけなのにもかかわらず、小さい頃、お茶の間でDVDを借りて流していた頃の情景がはっきりと浮かぶんですよね。台所では母がご飯を作っていて……。なんだかそれが不思議です。

――なるほど。伊達さんにとって『クレヨンしんちゃん』はずっと「我が家のお茶の間」のイメージなんですね。
伊達 そうですね。だから見たり聞いたりしているとふと寂しい気持ちになることがあります。今は今でもちろん楽しいけど、あの頃にはもう絶対に戻れないことを実感してちょっと切なくなるし、悲しくなる。でも、それを味わいたくて何度も触れてしまう。そんな不思議な感覚も含めて大好きです。endmark

関連情報

【撮影協力】
巣鴨地蔵通り商店街
<公式HP>
https://sugamo.or.jp

 

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