TOPICS 2022.05.27 │ 12:00

『takt op.Destiny』
視聴者を魅了したアクション演出へのこだわり②

アクションアニメーターの岩澤亨を招き、『takt op.Destiny(以下、takt op.)』のアクション演出を振り返るインタビュー連載。第2回は、岩澤氏がアバンの絵コンテを担当し、巨人が登場した第3話と、地獄が登場した第5話のアクションシーンについて、その舞台設定も含めて話を聞いた。

取材・文/森 樹

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

シーンに応じたベストなアニメーターが集結

第3話( Chapter 3 覚醒-Journey- )

――続いてMADHOUSEが担当した第3話ですが、アバン(冒頭)から戦闘シーンがあります。
岩澤 アバンパートの絵コンテは僕が担当しています。ここのアクションシーンは、運命が覚醒して最初の戦闘になります。伊藤(祐毅)監督からは、そのあとにあるBパートのアクションよりもこちらを派手にしてほしいという要望があったので、作画担当に「派手にやっちゃって」と指示を出しました。Bパートも派手ではありますが、テンションはアバンよりも低め、というイメージで構成しています。

岩澤による第3話アバンの絵コンテ

――運命とタクトのバランスも考えながら進めたのでしょうか?
岩澤 運命とタクトはふたりとも主人公ですが、コゼットが運命になり、タクトが右腕を失うという第2話の展開を受けての第3話なので、ふたりに恐怖を感じるくらいの鬼気迫る描写にしています。ふたりの絶望感というか、味方側の戦いを描いているはずなのに、視聴者が威圧感をおぼえるくらいのものにしようと。

――ダークヒーローとして描いている。
岩澤 そうですね。そういう部分は少しでも出したいと思いました。それが物語後半での、自分の力を制御して戦える成長した姿との対比になるので。制御できない力の怖さをきちんと伝えようと思いましたね。

――第3話から巨人も登場します。
岩澤 巨人のアクションに関しては伊藤監督のイメージが当初からあったので、それを踏まえています。巨人が武器として使う銃のエフェクトも伊藤監督からオーダーがあり、それをアクションパートの打ち合わせで作画担当に伝えていく流れでした。そこから先は作画担当のカラーだったりアレンジだったりが反映されています。もとのイメージから外れすぎているときはこちらで修正しましたが、それ以外は各作画担当の持ち味を生かしています。

――D2の動きも、戦うキャラクターによって見せ方を変えるようなことはありましたか?
岩澤 それは各話の演出担当が、戦闘を想像しながら組み立てていったと思います。基本的にD2は四足歩行なのですが、たまに二本足で立ったりしているのは、演出的な側面から加えられたものですね。このあたりも、伊藤監督のイメージから大きく外れない限りは使っています。アニメは集団作業なので、すべてがイメージ通りにいくことはまれです。なので、セクションによってある程度の自由度を担保するというのは、全体のコンセプトとしてありました。

第5話( Chapter 5 騎行-Valkyrie- )

――第5話ではワルキューレや地獄が登場し、舞台として崖が使われていますね。
岩澤 アクションシーンは舞台が屋外で、かつ周囲に物が少なければ少ないほど作画の負担が軽くなります。第5話の後半は周囲に何もない崖地帯なので、作画担当には「好きなようにアクションをやっていい」と伝えた気がします(笑)。色彩やエフェクトに関しては、撮影スタッフの力が本当に大きいですね。

――崖だと、アクションの自由度も上げられるわけですね。
岩澤 演出担当の須藤(瑛仁)さんは、今回が初演出だったんです。普段はアニメーターとして作画も担当をされているので、演出をしながら、作画の動きにも細かくこだわっていました。印象的だったのは、Bパート後半の運命のジャンプの演出ですね。最初に上がってきたアクションだと空中で一度制止しているような動きだったのですが、伊藤監督から「空を飛んでいるように見えてしまう。運命は空を飛べるような能力はありません」というようなメモがあり、それを踏まえて須藤さんと僕で修正を考え、作画担当に直してもらいました。第5話に関しては、いろいろな方のアイディアをもとにアクションを調整していきましたね。

――後半のアクションシーンはどのように進めたのでしょうか?
岩澤 細い列車の上で大立ち回りをするのは絵コンテの段階で決まっていました。そこから先のアクションに関しては、作画担当のアドリブがうまく出たかなと思います。これも担当してくださった田中宏紀さんが抜群にうまい方なので、最初からそれを前提に絵コンテを進めてもらったところはありました。このシーンで描かれている地獄は好戦的で狂気的なキャラなのですが、田中さんはそういう画作りが得意なので。実際、作画監督の修正もほとんど入っていないんですよ。

田中が担当した(第5話終盤)地獄のアクションシーンの原撮

――シーンに応じてベストなアニメーターに発注することも、岩澤さんの大きな仕事なわけですね。
岩澤 そうですね。最近はSNSで「こういう仕事をしました」と、制作会社に許可をもらったうえで自分の仕事をアップロードしている方も多いので、そこから声をかけることもあります。もちろん、自主制作がメインの方などは、そもそもアニメの仕事をしたことがない人も多いため、実際にお願いするまでに教えることなどがあったりして時間がかかったりするものの、絵コンテやシーンの要望を満たしてくれるうまい方をブッキングしていくのは重要ですね。そういう振り分けは、第5話ではとくに考えた部分でした。endmark

『takt op.Destiny』
各種配信サイトで全話配信中

岩澤 亨
いわざわとおる アクションアニメーター、演出家。原画からキャリアをスタートさせた後、アクション作画監督や絵コンテ、演出としてさまざまな作品に参加。近作に『バック・アロウ』(作画監督※共同)、『ブラッククローバー』(アクションアニメーター、作画監督、オープニング/エンディングアニメーション)などがある。
商品情報

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