――演じている立場から見て、サトノクラウンというウマ娘の魅力はどんなところだと思いますか？
鈴代　最初は、元気な感じだけど自信もあって、そういう余裕からくる落ち着きも感じられるような、ダイヤ（サトノダイヤモンド）たちを見守るポジションというか。そばにいてくれると安心感のある、みんなの憧れのお姉さんというイメージだったんです。でも、アニメの物語が進んでいくと、まわりのことに目を向けるばかりではなくて、ちゃんと自分自身に必要なこともしっかりと考えている。GⅠに勝てない葛藤さえも前向きに頑張るパワーに変えているところがすごく素敵だなと思いました。こんなに本人は頑張っていて、まわりからも期待されている状態で、一歩届かない状態が続くのは、かなりしんどいと思うんですよ。

――精神的にどんどんつらくなりそうです。
鈴代　第5話でダイヤが日本ダービーで2着になったあと、サトノのジンクスの話になって、クラちゃん（サトノクラウン）も「まるで、神様が本当に私たちの邪魔をしているみたい……」とポロッと言ってしまうんですよね。そういった運とかのどうしようもない部分があると思えば思うほど、頑張ろうという気持ちが折れてしまう子もいると思うんです。でも、クラちゃんは全部ひっくるめて実力だと受け入れて、自分の足で前に進んでいく。その姿勢は本当にリスペクトできるし、カッコよくて素敵だなと思います。

――そういう強さに憧れる気持ちもありますか？
鈴代　ありますね。クラちゃんが自信満々に「私はできる」と思えるのは、そのくらいきちんとした積み重ねがあるからこそだと思うんです。私の場合は、そこまで積み上げた実感がない状況で自分に暗示をかけるというか「できる！」と思い込ませて物事に臨むこともあって（笑）。そういういい意味でのハッタリが必要な場面もあると思うんですけど、やっぱり自分自身を信じられるように行動していくことは簡単なことじゃない。そういう自分と比べると、本当の自信を持てるところまで積み上げられているクラちゃんはすごい。彼女の強みだし、魅力だと思います。

――逆に、サトノクラウンに似ていると感じる部分はありますか？
鈴代　困難なことが目の前にあっても、「あとから振り返ったときによかったと思えるものにしよう」とポジティブに考えるところは似ている気がします。私の場合は、最近やっとそういう考え方ができるようになってきたので、今のタイミングでクラちゃんを演じられることに、ご縁をすごく感じます。今、自分に必要だと思っている精神力を持っているので、演じていると引っ張ってもらっている気持ちになりますし、頑張ろう！と思えるんです。

――となると、サトノクラウンを演じることは、鈴代さんにとって新しい挑戦の要素もあったということでしょうか？
鈴代　そうですね。自分を引っ張ってくれるという点以外に、前編でも少しお話しした「元気だけど余裕もある」みたいな性格の子を演じられたことも新しかったです。元気なら元気、お姉さんならお姉さん、と何らかに振り切って演じることが今まで多かったので、最初のうちは演じているとどうしても元気になりすぎちゃうことが多くて。クラちゃんはそのふたつの要素を併せ持っているので、収録のたびに「すごいな」と思っています。

――第3期の物語も終盤ですが、第11話以降はどんなところが注目ポイントですか？
鈴代　第10話はクラちゃん的にとても大事な回だったのですが、キタサン（ブラック）的にも大きなターニングポイントになっているんですよね。「あれ？　あれ？」と戸惑い続ける、モヤモヤした終わり方だったと思います。この先の話数でキタサンを中心にどんな物語、どんなレースが描かれていくのか、ぜひ見届けていただきたいです。

――最後に、このインタビューを読んでいる『ウマ娘』ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
鈴代　ここまで読んでくださって、ありがとうございました。いろいろお話しさせていただきましたが、ずっと「サトノのジンクス」にとらわれて、何度も悔しい思いをしながらも前だけを見て進んできたクラちゃんが、ついに国内GⅠの宝塚記念に勝利したということで、第10話は本当に記念すべき話数になったとサトノクラウン役としては思っています。きっとクラちゃんは、これからも勝ち気で自信を持てる自分でいられるように頑張ると思うので、引き続きそんな姿を見守っていただけたらうれしいです。