――第12話の話題からさかのぼりますが、シュヴァルグラン役のオーディションのときのエピソードを教えてください。
夏吉　じつは、最初にオーディションを受けたのは別のウマ娘だったんです。数キャラクター受けていて、スタジオオーディションのあと、その場で「シュヴァルグラン（のセリフ）も読んでみてください」と言っていただいて、そこで初めてシュヴァルのオーディション用の原稿を見ました。

――まったくノーマークのキャラクターだったのですか？
夏吉　オーディションの前はマネージャーさんたちと「こういう子のほうが合うのかな」と相談しながら、いろいろなキャラクターの資料を見たりするんです。でも、モチーフ馬のシュヴァルグラン号は、オーナーが（元プロ野球選手の）佐々木主浩さんだから、もしかしたらキャラクター的に野球に詳しい人が合っているのかも？と思ってしまっていて、マネージャーさんからも資料を渡されていなくて（笑）。他の人がオーディションを受けている間に、別の部屋で緊張しながら初めてシュヴァルのセリフを読んだんです。オーディションでも手と声が震えていないか心配でした（笑）。

――緊張していたというシュヴァルグラン役のオーディションでは、どんなことを意識していましたか？
夏吉　オーディション用のセリフには、短いながらト書き（説明文）があって「どちらかといえば内気。いい成績を残している姉妹に対してコンプレックスがある」と書かれていたので、最初は内にこもるような感じでやったんです。でも、「シュヴァルは、ただ内気なだけではなくて、うまくいかない自分にいら立ちながら、静かに闘志を燃やしています。姉妹に対しても『絶対に君たちにも負けないウマ娘になってやる』と反抗期的な言い返しもする子なんです」というディレクションをいただいて。いいバランスになるように、スタジオオーディションにもかかわらず、けっこうな回数、やり直しをさせていただきました。

――その結果、シュヴァルグラン役に決まったのですね。
夏吉　普段のオーディションでは自分なりに自信を持っていくのですが、突然のことで支えを失っているような感じが、シュヴァルっぽいと思っていただけたのかもしれません（笑）。

――シュヴァルグランというウマ娘を演じるにあたって、大事にしていることは何ですか？
夏吉　勝利に対する想いは人一倍強いけど、幼少期から優秀な姉妹と比べられていたおかげで強くは主張できないところや、不器用だけど、そのせいで嫌な子に見えないようにすること。そして、いずれ花開く瞬間を見られるかもしれない、とファンの人に応援してもらえるように演じることは、すごく心がけています。あと、声色に関して言うと、第12話の挿入歌（「光の後ろ姿」）など、シュヴァルとして歌わせていただくときは、わかりやすい少年声にならないように、ボーイッシュとかわいさの合間を狙えるように意識しています。

――「光の後ろ姿」は本編でも印象的な使われ方をしていましたね。
夏吉　曲名からして、すでにキタサンブラックへのラブレターというか（笑）。シュヴァルが最後に手紙を書いているような感じで、キタサンブラックに対する思いを全部吐露しているんですよね。「テクニックは使わず、思いを込めて手紙を朗読しているような感じで歌ってください」というディレクションもいただいたので、そのように歌いました。曲の後半では「僕がこれ以上走っても、もう目の前に君はいないんだ」と思っているような寂しさも込められていて、喪失感もあるし、練習中も本番も涙を抑えるので精一杯でした。ぜひフルでも聞いてほしいです。

――本編は最終話を残すのみとなりましたが、どんなところに注目してほしいですか？
夏吉　キタサンブラックたちウマ娘が一生懸命に走る姿を見て、頑張ることはこんなにも最高なんだと思えるような最終話になっていると思います。具体的には言えないのですが、私は締めくくり方もすごく好きです。

――最後に、このインタビューを読んでいる『ウマ娘』ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
夏吉　いろいろな方が情熱を注いでいる作品ですし、最初は『ウマ娘』のキャストに加わることに、すごく緊張していたんです。でも、初めてシュヴァルグラン役として皆さんの前に立った横浜でのライブ（『ウマ娘 プリティーダービー 5th EVENT ARENA TOUR GO BEYOND -WISH-』）で、ファンの皆さんからも、『ウマ娘』のコンテンツを作っている皆さんからもすごい愛情を感じて、感動したと同時に身が引き締まる思いでした。そこからアニメの第3期にも登場して、この1年間は私にとっては怒涛の1年間でした。でも、きっとシュヴァルグランというウマ娘のことが、まだよくわからないという方もいらっしゃるはず。皆さんに寄り添って活動をしながら、これからもシュヴァルのことをもっともっと好きになってもらいたいです。