TOPICS 2022.06.30 │ 12:00

『正解するカド』5周年
シリーズ構成・野﨑まどによる書き下ろし短編小説

人類と異方存在とのファーストコンタクトを描いた、東映アニメーションのオリジナルSFアニメ『正解するカド』は、その衝撃的なストーリー展開で多くのアニメファンを驚かせた。カドの出現。異方存在・ヤハクイザシュニナとの邂逅。そして、真道幸路朗の決断……。オンエアから5年を経て、人類の世界はどうなったのか。ここでは、本編のシリーズ構成を手がけた野﨑まど氏による、『正解するカド』のその後を描いたオリジナルショートノベル『カド -ゴ-』を一挙掲載する!

著/野﨑まど イラスト/有坂あこ

8/11ページ

  ○
 
 傾き始めた太陽が、岩だらけの海岸にわずかな黄色を落としている。

年齢の違う三人が並んで菖蒲沢の浜辺を見渡した。浜辺と言っても砂浜はなく、足元はゴロゴロとした石で埋め尽くされている。石を探すつもりで来たがここまで石だらけだとは思わなかった。

「あの辺で見つけた」

 健勇君が先陣を切って走り出し、俺と植原巡査長も後に続いた。朝の新幹線に乗っていた時はスーツと革靴で岩場に入る羽目になるとは微塵も思わなかった。歩きづらい凹凸を乗り越えてようやく追いつくと、彼がもう何個かの石を拾っている。

「これが似てます。外側はこんな感じ」
 
受け取って観察する。それは河原で見るような灰色や黒のものではなく真っ白の石だった。石灰岩とかそんな名前が付いていたと思うのだが、正直専門外で朧気にしか思い出せない。

「外側というと、内側も見えた?」
「割れてて……」健勇君が思い出しながら言葉を探す。「中の方が、もっと綺麗で」

 巡査長から聞いていた供述と照らし合わせる。“裏側が表で、表側が裏みたいな不思議な石”。まだ具体的なイメージは摑めないが、表面側が白いことは判明した。

 スーツの上着を横に置いてズボンの裾を折り返した。そうして我々は、三人では広すぎる岩場で異方の石の捜索を始めた。時間の猶予は少なく、一粒の石ころを見つけ出せるとも思えない。それでも最後は足で探すしかないというのも捜査の本質だった。

 六月の伊豆は想像以上に暖かく、暑かった。三十分もすると汗が滲んでくる。うろうろと彷徨い、しゃがみ込み、石を手で掻き分けて、見つからずまた彷徨う。賽の河原じみた作業を頭の中の自分は無益だと言っている。けれど不思議と、やめようとは思わなかった。
 
 俺は今、石を探しながら。

 あの日々と同じものを探している。

イベント情報

『正解するカド』オンエア5周年記念関連イベント

■7月9日(土)19:00
YouTubeプレミア公開
『正解するカド12.5話 KADO:Beyond Information』
東映アニメーションミュージアムチャンネル

■7月9日(土)21:00
「東映アニメーション主催3作品合同VRイベント」開催
『正解するカド』『怪獣デコード』『Zombie Zoo Keepers』

 『正解するカド』5周年イベント
  登壇/三浦祥朗、赤羽根健治
  進行/野口光一P

スマートフォンやPC、VR機器など、さまざまなバーチャル空間に集って
遊べるメタバースプラットフォーム Cluster にて開催!!

  • © TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI