TOPICS 2023.04.20 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」第7回 アイナ・ジ・エンドさんの表現力に心打たれた
「はっぴーばーすでー」(前編)

声優・伊達さゆりのお気に入りや、心に残っているものを取り上げながら自らを語るフォト&インタビュー連載。第7回は、アイナ・ジ・エンドの「はっぴーばーすでー」を取り上げる。聞く者の心に鋭く迫る彼女の楽曲の中では例外ともいえる、ポップで多幸感にあふれたナンバーに惹かれた理由を尋ねた。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/pays des fées

このテーマでどんな場所や衣装になるのか想像がつかなった

――この連載はロケ撮影を行うことが多いのですが、今回はスタジオを借りて作り込む方向での撮影となりました。感想を聞かせてください。
伊達 いつも撮影の少し前に、撮影場所や衣装の資料をいただくのですが、それを見るのがすごく楽しみなんです。今回はどんな場所や衣装になるのか、とくに想像ができなくて。今回のテーマに挙げさせてもらった「はっぴーばーすでー」は、アイナ・ジ・エンドさんというロックテイストの強い方が歌う、けれど温かみのある楽曲なので、そのふたつの要素が組み合わさったらどんな世界観になるんだろう、とぼんやり考えていたのですが、私の中ではまとまりませんでした。なので、撮影コンセプトをうかがったときは、「なるほど!」と思いました。

――髪型もまた、今までに見たことのないタイプのものになりました。
伊達 自分では耳から上の高さで髪を結ぶことがあまりなくて、下ろしていることが多いので。巻くのは前髪くらいです。プライベート、お仕事を通じて初めて体験する髪型でしたね。ヘアメイクさんから「お団子のイメージで」と提案されて、私が想像していたのはふんわりとした丸い「お団子」の形だったのですが、正面から見るとお花みたいに見えるボリューム感のあるもので、目にするのも初めてのタイプでした。前髪も薄く、シースルーにしていただいて、これまでの殻を破ったような髪型だったのではないかな、と思います。

――やはり、髪型が変わると気分も変わるものでしょうか?
伊達 撮影のときなどにヘアメイクさんにセットしてもらうと、鏡を見ながら自分じゃない自分を見ている気分になります。ヘアメイクさんやスタイリストさんのおかげで、その世界にハマることができるというか、変身しているようでうれしいです。

――衣装もパッと見たところ、ふわっとしていてかわいらしいかと思いきや、意表を突く柄になっていましたね。
伊達 上下ともにピンク系統で、一見、おとぎ話に出てきそうなかわいらしい印象なのですが、よく見るとブラウスに蛾がプリントされていたり、いろいろなところに怪しい柄が散りばめてあるんです。靴にもかかとの部分にコガネムシがプリントされていて。陽が落ちてスタジオが暗くなってきて、自分の足元をふと見たらその子がいて、一瞬、本物なんじゃないかとびっくりしてしまいました(笑)。かわいくもちょっとグロテスクな、理解するまでに少し時間がかかってしまうような衣装で素敵でした。

最初に惹かれたのは「声」

――第7回はアイナ・ジ・エンドさんの「はっぴーばーすでー」という楽曲をテーマに選んでもらいました。
伊達 BiSHさんのことはもともと知っていて、メンバーであるアイナさんがソロで音楽活動をしているのも知っていたのですが、あるとき、専門家の方がアイナさんの歌い方や語尾の抜き方を解説しているのを見たんです。そこで「声なのにギターの弦のような音がするところが魅力的」とおっしゃっていて、「どういう声なんだろう?」と興味を持って聞いてみたら、本当にすごくて。人の声なのに声じゃないような歌い方というか、アイナさんにしかできない空気感があって。ひと言発するだけで「アイナさん色」に染まってしまうような歌声がすごく素敵で、いろいろと楽曲を聞き漁りました。

――中でも印象的だったのが「はっぴーばーすでー」だったわけですね。
伊達 アイナさんにはガンガン鳴るようなロックからバラードまで、いろいろなタイプの楽曲がある中で「はっぴーばーすでー」だけがすごく楽しげに聞こえてきたんです。イントロから鐘が鳴っていたりして。アイナさんの楽曲は「一見ハッピーに聞こえるけれど、歌詞をよく読んでみると重い」ということが多いのですが、歌詞を見てみると、全部ひらがなで書いてあって。そこから気になってしまって、今度はアイナさんのインタビューをいろいろと探すようになりました。

新生活が始まった頃の思い出

――今回は4月掲載の記事で、読者には進学や就学で新生活が始まった方もいると思います。伊達さんが東京に来たときに、とくに印象深かったことを教えてください。
伊達 全部が印象に残っているかもしれません。「何もかも自分でやらないといけない!」と、今よりも必死でしたね。外から帰ってきて、部屋の鍵を開けて、鍵を閉めて、自分だけの空間になっても、どこか緊張感が残っているような気分でした。ひとりでいるのは苦じゃないですし、なんなら好きなほうなのに、寝ていてもなんとなく緊張している。明日の朝にちゃんと起きられるかどうかではなく、なんだかずっと空気が張り詰めているような感じというか。そういうことが印象に残っています。

――私もそうでしたが、地方から東京に来ると電車の乗り換えに戸惑いませんでしたか?
伊達 戸惑いました。まず「急行って何?」と思いましたね。同じ路線でも電車によって止まる駅と止まらない駅があるんだ、ということから驚いていました(笑)。電車の本数が多くてそれはありがたいのですが、地元ではそもそも電車に乗る機会が多くなくて、家族の車で出かけたり、歩きで移動することが多かったです。雨の日はお家からあまり出ませんでしたし、おかげで天気によって移動手段が左右されることもあまりなくて。東京だけではないかもしれませんが、こういう路線が入り組んだ地域に住んで電車を乗りこなしている子供たちはすごいな、と思いました。endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。他の出演作に『英傑大戦』(池田せん役、巻姫役)『アサルトリリィ Last Bullet』(石塚藤乃役)など。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。  Twitter/@SayuriDate  Instagram/sayuridate_official