TOPICS 2023.04.25 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」第7回 アイナ・ジ・エンドさんの表現力に心打たれた
「はっぴーばーすでー」(中編)

第7回はアイナ・ジ・エンドの「はっぴーばーすでー」をテーマにお届けしている伊達さゆりのフォト&インタビュー連載。中編では、自身が考える楽曲の解釈を深掘りしながら、現在の自分をとりまく環境についての思いを語ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/pays des fées

出会いを祝福する歌

――「はっぴーばーすでー」以外にアイナ・ジ・エンドさんの楽曲で連載のテーマに挙げようか迷ったものはありますか?
伊達 明るいポップなものだと「サボテンガール」という、友達との日常のワンシーンを歌っている楽曲が大好きです。もう1曲はガラっと変わるのですが、「死にたい夜にかぎって」も挙げようか悩みました。振れ幅が本当にすごくて、アルバムを聞けば絶対に誰もが1曲は刺さるテイストの楽曲があるんじゃないかと思います。ハッピーな内容から全然ハッピーじゃない、それこそ「死ぬ」といったことも濁さずに歌詞に残す方なので、それがストレートに心にずかずか入ってくるんですよね。

――歌詞の話が出てきたので、「はっぴーばーすでー」の歌詞で印象的なフレーズを教えてください。
伊達 「はっぴーばーすでー」というくらいなので誰かの誕生日をお祝いしているのかな、と最初は思っていたんです。サビの最後で「ぼくらはうまれてる」「ぼくらは であえてる」というフレーズが繰り返し出てきます。私はここが大好きで、聞いているうちに「これは人と人との出会いや、出会えた人がそばにいてくれることを祝福しているんだ」と思えるようになってきたのですが、アイナさんのインタビューを読んだあとだと、サビの最後にこのフレーズが置かれていることにより深い意味があると感じるようになりました。

「元通り」の世の中が自分にとっては普通じゃないかも

――アイナさんはあるインタビューで、コロナ禍の最中に「自分のまわりに誰かがいてくれることの大切さ」に気づいた経験がこの楽曲のベースにあると語っていました。伊達さんは、ふとした瞬間に大事なことに気づいた、という体験はありますか?
伊達 もしかしたら今がその最中なのかなと思うのですが、コロナ禍でみんながいちばん苦しんでいた時期は、私はまだ高校生で東京に来ていなかったので、人との会話などの制限はありつつも、そこまで深刻な実感はなかったんです。

――むしろ、これから世の中が元通りになっていくなかで「これまでの人はこんな動きをしていたんだ」とびっくりすることがあるかもしれないですね。
伊達 そうですね。お仕事を始めたときにはもう「そういうものだ」という感覚で毎日マスクをつけてみんなとしゃべっていましたし、私にとってはそれが普通なので、他の皆さんがコロナ禍のおかげでいろいろなことができなくなった、と言うつらさがなかなかイメージできなかったんですよね。だから「普通」に戻ったときに、どんな状況になるのかがわからないんです。これから楽しいことが待っている、というワクワク感もありますが、一方で皆さんと「やったね!」という気持ちを共有できるのかな……とも思います。

――伊達さんの場合、みんなで揃ってアフレコをするほうが珍しいという環境でお仕事を始めていますものね。
伊達 そうですね。アフレコはみんな別々、というのが当たり前の状況でこの世界に入ったので……。出演者が揃っている感覚や、そんな日々が戻ってきたときのうれしさが十分にわからないかもしれない、というのは、それはそれで悔しいなとも思います。

「答え合わせ」としてインタビューを読むのが楽しみ

――先ほど「インタビューを読んで楽曲の解釈が深まった」とのことでしたが、他のアーティストのインタビュー記事もよく読みますか?
伊達 好きなアーティストさんのインタビューはできるだけ読みたいです。シングルの表題曲だとリリース時にアーティストさんがテレビに出てお話しされていることもありますが、アルバム曲やc/w曲だと雑誌のインタビューなどでしか話していなかったりするので。まず曲を聞いて、歌詞を読んでみて、自分なりに「こういうことかな?」と答えを出してから「あの解釈で合っていたのかな?」と思いながら読むのがワクワクしますね。

――答え合わせのような。
伊達 基本的には外れていることが多いのですが(笑)。でも、そのアーティストさんがどういう思いで曲や詞を書いたのか、どういう経験をしてきて、どういう景色を見て生まれた楽曲なのか、という経緯を知るのがすごく好きです。「こういう表現の仕方があるのか!」と思いながら、ついつい読んでしまいますね。

――当たっていてうれしかった経験はありますか?
伊達 ……いや、あまり当たった記憶がないですね(笑)。過去に、すごく明るい楽曲を聞いて「きっと楽しいことがあったんだろうな」と思ったのですが、そのアーティストさんのインタビューを読んでみたら逆で「めちゃめちゃ悲しいことがあったからあえて明るくした」というようなことをおっしゃっていて。「私って単純だなぁ……」と思ってしまいました(笑)。でも、自分が思っていた答えと全然違っていたからこそ、もっと深いことを知りたい、と考えるようになったのかもしれないです。endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。他の出演作に『英傑大戦』(池田せん役、巻姫役)『アサルトリリィ Last Bullet』(石塚藤乃役)など。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。  Twitter/@SayuriDate  Instagram/sayuridate_official