TOPICS 2021.07.07 │ 12:00

Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀3
虚淵玄ロングインタビュー②

虚淵玄(ニトロプラス)が原案・脚本・総監修を務め、台湾布袋劇で随一の知名度とクオリティを誇る制作会社・霹靂國際多媒體股份有限公司(略称:霹靂社)が制作する、武侠ファンタジー人形劇『Thunderbolt Fantasy Project』。最新作『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀3』を深堀りするロングインタビューの第2回では、気になるシリーズの今後の展望も!

取材・文/前田 久

※本記事はTVシリーズ3期最終回までの内容を含みますので、ご注意ください。

3期以降は東離と西幽に、魔界も含めた3つの世界の物語に

――婁震戒の怪演もですが、物語が壮大なスケールで展開しているなかに笑いを誘う展開がちょこちょこ挟まれているのも印象的で。凜雪鴉の通信機も、びっくりしました。ねんどろいどがあんなふうに出てくるとは。
虚淵 あれはグッスマ(グッドスマイルカンパニー)さんにこのプロジェクトに入ってもらった当初から、いつかはやりたいと思っていたネタでした。台湾で素還真(ソカンシン。霹靂布袋劇の主人公)のねんどろいどが出たときに、布袋劇の人形が自分のねんどろいどを持っていろいろ語るというプロモーション映像を見たのですが、サイズ的にもその組み合わせは非常にいいなと思ったんです。人形が手で握ったときに、ちゃんとわかるサイズで。

――あれは本物のねんどろいどと布袋劇の人形で、あの映像に出てくるサイズ差なんですか?
虚淵 そうですよ。映像に映っているのは、霹靂さんに加工してもらって、ねんどろいどに可動ギミックを組み込んだものです。

――となると、お客さんも欲しくなりますね。
虚淵 だと思うんですけど、絶版中なんです(苦笑)。

――それは残念ですね。ところで、Netflixで本家の霹靂布袋劇『PILI人形劇:ウォー・オブ・ドラゴンズ』も見られるようになっていますし、虚淵さんが応援コメントを寄せた布袋劇が題材のドキュメンタリー映画『台湾、街かどの人形劇』の公開もあって、日本での布袋劇を取り巻く状況は、TVシリーズ1期の頃とは隔世の感があるような。
虚淵 そうですねえ。

――そして『Thunderbolt Fantasy Project』の世界もまだまだこれから。3期の最終話では禍世螟蝗の正体が明かされ、浪巫謠は殤不患(ショウフカン)と離れて新たな行動を始め、続編では作品世界がさらに動きそうです。最後に、現時点での構想を可能な範囲で聞かせていただけないでしょうか?
虚淵 はい。ひとつお話しできることとしては、これまで描写がほぼなかった魔界を東離と西幽と同じぐらいの比重で描いて、作品の世界を広げたいと考えています。東離と西幽という、ふたつの世界の物語だったのが、3期以降は魔界も含めた3つの世界の物語になっていく構想です。

――おお。
虚淵 なぜ魔界から魔族が人界に攻めてきて、そしてなぜ敗北して地下に戻っていったのか。そういったところの事情も描写していけたらと考えています。

――となると、窮暮之戰(キュウボノセン)あたりのお話もさらに掘り下げられたり?
虚淵 そうですね。刑亥もなんだかんだで魔界に戻るのは200年ぶりですし、その刑亥に案内されて浪巫謠が魔界を旅していくなかで、東離に殤不患が流れついたときのように、魔界の姿が少しずつ見えるようになるといいかなと。

――刑亥にしろ、浪巫謠の行動のきっかけになった阿爾貝盧法(アジベルファ)にせよ、魔族は時間や空間の捉え方の根本から違う描かれ方をしていて、その意味でも興味深いです。
虚淵 まず魔族と人間は寿命が違いますしね。それと魔術に精通しているので、価値観もかなり食い違っている。あと、おおむねその気性において邪悪な方向にかたよりがちなんです。

――ここからまた『Thunderbolt Fantasy Project』の世界が違った顔を見せてくれそうです。殤不患にしても、彼の謎はだいぶ明かされましたが、増えた謎もあって。
虚淵 ええ。そういったところも含めて、ゆくゆくはいろいろな謎をきちんと開示したいと思っていますので、どうか末永く、この世界にお付き合いいただければ幸いです!endmark

虚淵玄
うろぶちげん。株式会社ニトロプラス所属のシナリオライター、小説家。『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』『仮面ライダー鎧武/ガイム』『楽園追放 -Expelled from Paradise-』『GODZILLA 怪獣惑星』『OBSOLETE』など、数々の映像作品の原案や脚本を手がける。
作品情報

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