TOPICS 2023.12.31 │ 18:00

TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』リレーインタビュー⑥
キタサンブラック役・矢野妃菜喜(後編)

最終回の放送を終えたTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3(以降、第3期)』。主人公・キタサンブラックを演じた矢野妃菜喜へのインタビュー後編では、第13話のアフレコの模様を掘り下げるとともに、大役のプレッシャーを感じつつも第3期を引っ張ってきた心境を尋ねた。

取材・文/丸本大輔

第13話の台本を見て「どうしよう!?」と思った

――キタサンブラックのラストランが描かれた第13話ですが、アフレコの前はどのような準備をして、どのような心境で臨んだのですか?
矢野 もちろん、これでアフレコも最後なんだという寂しさはありましたが、ある種の高揚感もあって。内容的にもすごく晴れ晴れとしたものだったので、キタちゃん(キタサンブラック)の最終レースがいいものになるよう、私なりに考えて、楽しみな気持ちでスタジオに向かった記憶があります。

――とくに印象深いセリフがあれば教えてください。
矢野 やっぱり、最終コーナー手前までに「何回言っているんだろう?」というくらい繰り返す「勝ちたい」というセリフです。台本を開いてページの半分以上が「勝ちたい」で埋まっているのを見たときは「どうしよう!?」と思いました(笑)。最初は尻上がりに強めていく感じにしていたのですが、「絶対に勝ちたい気持ちと、ピークを越えて(低下して)いる体力がせめぎ合っている感じを出してほしい」というディレクションがあり、そういう方向でやらせていただきました。

第13話までに、キタちゃんの走り方はすごく変わっている

――ラストランの「勝ちたい」と繰り返すシーンは、何テイクか録り直したのですか?
矢野 そこは2テイクくらいでOKをいただけたので、アフレコでこだわったシーンでいうと、最終直線のほうかもしれません。じつは第13話に向かうまでに、キタちゃんの走り方というか、息の入れ方はすごく変わっているんです。最初の頃のキタちゃんは「スタミナお化け」だったので、プロのマラソンランナーみたいに「ふっ、ふっ、ふっ」という声の入れ方をしています。

――息が一定で乱れないわけですね。
矢野 そうです。ピークを越えたあたりからは、だんだんと体力が落ちていて、すごく疲れているお芝居になっているんです。そこからさらに後半の話数では「パワー系の走り方にしてほしい」というディレクションがあって、大地を力強く踏みしめるような方向性になっていきました。第13話でもテストではそのように演じたのですが、「本番では最終直線で声を裏返してほしい」とディレクションをいただいたんです。でも、本番のあとに「テストのほうがよかった」と言われて(笑)。最終的にそれまでの「力強い方向」でやらせていただけました。自分が作り上げてきたお芝居が間違っていなかったと思えてうれしかったですし、すごくやり切った気持ちになれました。

キタちゃんは隣に立ってくれている頼もしい相棒

――矢野さんの中で、キタサンブラックというキャラクターは、どのような存在になりましたか?
矢野 第2期で登場したキタちゃんはまだ幼かったし、ゲームの中でも子供っぽさが前面に出ていたので、私自身もキタちゃんに対して少し親目線で見ていたところがあるんです。それが第3期でものすごく成長していくにつれて、隣に立ってくれている頼もしい相棒みたいな感じになってきました。

――キタサンブラックを演じることが決まったあと、モチーフ馬の知名度や『ウマ娘』の盛り上がりを受けて、矢野さん自身のプレッシャーが大きくなっていったのでは?と想像しているのですが。
矢野 めちゃくちゃなりました(笑)。アフレコが始まるまで、ダイヤちゃん(サトノダイヤモンド)役の立花日菜ちゃんとは会うたびに「この作品を私たちが引っ張っていけるのかな?」みたいな話をしていました。これまでのTVアニメシリーズで主人公を担当されてきた(スペシャルウィーク役の)和氣(あず未)さんや、(トウカイテイオー役の)Machicoさんたちが『ウマ娘』というコンテンツをどんどん広げてきてくださったので、途中参加の私たちがそれを引き継ぐことができるのかな……というか、やっていいのかな?みたいな気持ちもあって、プレッシャーを感じていました。それにキタサンブラック号って、本当にすごい競走馬じゃないですか。

――競馬を知らない人でも名前は知っている、くらいに有名な馬ですよね。
矢野 そういう面でのプレッシャーもありました。でも、演じるにしても、ライブのステージに立つにしても、Machicoさんの隣でいろいろな経験をさせていただくうちに「私たちがここに立っても大丈夫なんだ」とだんだん思えるようになってきて。キタちゃんがチーム<スピカ>の先輩に励まされ、助けてもらったように、私もスピカのメンバーを演じられている先輩方に支えてもらっているうちに「キタちゃんと一緒だったら、きっと大丈夫」と思えるようになっていった感じです。でも、そう思えるようになったのは本当に最近のことで。TVアニメ第3期では座長として全13話、真ん中に立ってアフレコに臨んできましたし、ライブでも真ん中に立たせてもらう機会が多くなってきたので、吹っ切れたというか(笑)。むしろ、堂々と立っていないと務まらないと思えるようになってきました。

――最後に、第3期を見てくれた『ウマ娘』ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
矢野 第13話まで応援してくださって、本当にありがとうございました。きっとトレーナーの皆さんにも満足してもらえたと思うし、さらにキタちゃんのことを好きになってくれた人、TVアニメで初めてキタちゃんを好きになってくれた人もたくさんいると思います。第3期の放送は終了しましたが、劇場版も発表されましたし、ゲームにもまだまだいろいろなウマ娘たちが登場していきます。オフラインイベントのウマ娘プリティーダービー 5th EVENT ARENA TOURもまだまだ終わっていないので、それらも楽しんでいただきたいです。皆さんに、もっともっと『ウマ娘』というコンテンツを愛していただけるように、私もキタちゃんと一緒に真ん中に立って頑張りますので、これからも応援をよろしくお願いします。ありがとうございました!endmark

矢野妃菜喜
やのひなき 3月5日生まれ。兵庫県出身。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。主な出演作に『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(高咲 侑役)、『ワンダーエッグ・プライオリティ』(沢木桃恵役)、『SELECTION PROJECT』(美山鈴音役)など。
作品情報


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