TOPICS 2024.05.09 │ 18:00

『 響け!ユーフォニアム3』
戸松遥に聞いた黒江真由との向き合いかた①

吹奏楽青春アニメ『響け!ユーフォニアム』シリーズのTVアニメ第3期『響け!ユーフォニアム3』が4月より放送中。高校3年生となり、吹奏楽部部長として悲願の全国金賞を目指す黄前久美子の奮闘を中心に、さまざまなキャラクターたちのドラマが描かれていく。とくに久美子のライバルとして新登場したキーパーソン・黒江真由は要注目だ。そこで今回は真由を演じている戸松遥さんのインタビューを前後編でお届け。前編は、作品とキャラクターへの印象を中心に語ってもらった。

取材・文/岡本大介

久美子ちゃんたちの葛藤に胸がキューってなる

――『響け!ユーフォニアム』シリーズにはどんな印象を持っていましたか?
戸松 作品自体は第1期が始まったときから知っていて、とにかくビジュアルがとてもかわいかったので、最初はシンプルに「美少女たちが楽しく音楽をやるアニメ」だと思っていました。それも別に間違いではないんですが、見てみたら想像以上に人間ドラマの部分がリアルで、セリフも楽器の音も演奏シーンもすべてが生々しくて、痛いくらいに共感しちゃいました。かわいらしいビジュアルを超越したドラマ性に打ちのめされた感じですね。

――たしかに「楽しければOK」みたいなノリの部活ではないですからね。
戸松 そうなんですよ。ずっと心を鷲づかみにされている感じで、胸がキューってなります(笑)。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――ちなみに戸松さんは学生時代に部活をしていましたか?
戸松 私は中高一貫校に通っていて、ハンドベルを6年間続けていました。

――なかなか珍しい部活ですね。
戸松 そうですよね。ハンドベルって、各部員がそれぞれ違う音階を担当していて、全員でタイミングを合わせて音楽を奏でていく楽器なんです。今思うと、なぜこんなにマニアックな部活を6年間も続けていたんだろうって思うんですけど(笑)、楽しかったです。

――音楽系の部活という点では共通していますね。北宇治高校吹奏楽部のような激しいポジション争いがあったりとかも?
戸松 いや、全然ありません(笑)。そもそも大会やコンクールとは無縁で、定期的に教会や介護施設を訪問して演奏するという、とても平和的な部活でした。競争してレギュラーを勝ち取るとか、そのために寝る間も惜しんで練習するとか、私自身そういうのが苦手だったので、平穏そうなハンドベル部に入ったというところもありますね。

――じゃあ、久美子たちとは雰囲気もまったく違うんですね。
戸松 違いましたね。だからこそ、久美子ちゃんたちの真剣な姿勢はすごいなと思いますし、そこから生まれるさまざまな問題や葛藤に胸がキューってなるんです(笑)。

――なるほど。今回はオーディションからの参加でしたか?
戸松 そうです。しかもテープオーディションだったんです。スタジオでのオーディションだと、その場で「もうちょっとこんなニュアンスで」とかディレクションをいただいて微調整ができるんですが、テープの場合はこちらが用意したお芝居での一発勝負になるので、決まったときは「方向性が間違っていなかったんだ」と余計にうれしかったですね。

真由は天然だからこそ厄介な存在

――真由に対する最初の印象はいかがでしたか?
戸松 「強豪校から転入してきたユーフォニアムの奏者」というざっくりとした設定はありましたが、それ以上の細かい説明はなかったんです。それでも、いくつかのセリフから「これはただ者じゃないな」という雰囲気はヒシヒシと伝わってきました。単純に「みんなよろしく! イエイ!」みたいな感じではなくて、どこかダークな部分があるなと。

――真由の本質については、演じながら探っていった感じですか?
戸松 じつは、真由を演じることが決まってすぐに最終話までのシナリオをいただいたんです。他のキャストさんたちは先のシナリオは渡されていなかったらしいんですけど、私にだけは「先に読んでおいて」と。シナリオを最後まで読んでみると、それまでに感じていた真由とは違ったキャラクター像が浮かび上がってきて、驚きました。もし先のシナリオを知らずに演じていたら、たぶん誤解したままだっただろうなと思うので、そこはすごく助かりました。一方で、先のストーリーはまわりには絶対に言えないので、収録現場では「言いたいけど言えない!」って、ひとり悶々として過ごしていました(笑)。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――複雑なキャラクターなんですね。真由についてはどんな人だと感じましたか?
戸松 真由は本当に人間臭いというか、絶妙だなと思います。誰かを傷つけようとか、部をかき回してやろうと思って動いているわけではないんですけど、結果的に周囲を惑わせてしまうような振る舞いをしたりするので、ひと言でどんな子か表現するのはなかなか難しいんですよね。女子の中では仲良くなれる人となれない人でハッキリと分かれるタイプなのかなと思います。

――なるほど。逆に男子にはモテそうですよね。
戸松 モテモテでしょうね。男子って少しミステリアスな雰囲気をまとった子に惹かれるじゃないですか? 真由は人当たりのよさもありつつミステリアスさも持っているので、まさにドンピシャですよね。きっとクラスの男子のあいだでは話題になっていると思うんですけど、もし、男子たちが吹奏楽部での真由を知ったらどう思うんだろうってちょっと心配になります(笑)。

――「女子の世界は怖いなあ」ってビビると思います(笑)。
戸松 ですよね。ただ、真由は狙って行動しているわけじゃなくて、完全に天然なんですよね。逆にいえば、天然だからこそ厄介というか(笑)、結局「天然には勝てない」みたいなところってあるじゃないですか。真由の場合はそうなのかなと思います。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

――戸松さんと似ているところや共感できる部分はありますか?
戸松 あまりなくて、どちらかといえば正反対です。ただ、私の友達はわりと真由みたいなタイプの子が多いんですよ。一見するとちょっと癖がある感じでも、ふたりきりで飲んで話をするとすごく楽しかったりするので、私は意外と好きなタイプですね。私が演じている真由も、その子たちのエッセンスを取り入れて作っているところがあります。

――では、戸松さんが自分に似ているなと思うキャラクターは誰ですか?
戸松 ノリや温度感は(加藤)葉月が近いと思うんですけど……。でも、葉月ほど後輩の面倒見はよくないかも(笑)。中身的には(釜谷)すずめですかね。お調子者で、ピリピリした中でもずっとバカをやっている感じは似ている気がします。

――ありがとうございました。後編では芝居や今後の見どころについてお聞きします。
戸松 お願いします。endmark

戸松遥
とまつはるか 愛知県出身。ミュージックレイン所属。2007年に声優デビュー。主な主演作に『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(安城鳴子役)、『ソードアート・オンライン』シリーズ(アスナ役)、『妖怪ウォッチ』シリーズ(ケータ役)、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(アイリス・カナリー役)などがある。
作品概要

TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』
NHK Eテレにて 毎週日曜午後5時より好評放送中!

  • ©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024