TOPICS 2023.01.27 │ 12:00

最終回直前! 『デリシャスパーティ♡プリキュア』を
シリーズディレクター・深澤敏則が振り返る(前編)

「ごはんは笑顔」をキーワードに展開してきたTVアニメ『デリシャスパーティ♡プリキュア』も、ついに最終回目前! 全編にわたって本作を包み込んでいたハートフルな雰囲気はどこからやってきたのか。シリーズディレクター・深澤敏則に、制作の裏側をたっぷり聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

安心感と寂しさが入り交じる今の心境

――いよいよ最終回を迎える『デリシャスパーティ♡プリキュア(以下、デパプリ)』ですが、心境はいかがでしょうか。
深澤 だいぶ肩の荷は降りてきたかなという感じですね(笑)。とはいえ、寂しい気持ちも大きいです。制作が始まったのは2年ほど前なんですが、イチから作ってきたキャラクターなので「この子たちと別れるのは寂しいな」と。「もっといろいろな話であの子たちを動かしたいな」と、つい思ってしまいます。

――深澤さんは『デパプリ』の前に『映画 プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』で、初めて『プリキュア』シリーズに関わっていますね。
深澤 そうですね。じつを言えば映画の監督をすることになるまで、『プリキュア』シリーズはほとんど見てこなかったんです。それで、いくつかシリーズを見直したんですが、最初は女の子向けの「かわいらしさ」を意識しすぎていた感じはありましたね。僕はそれまで少年向けの作品に関わることが多かったので、そういった「かわいらしさ」を理解できるのか、最初は自信がありませんでした。

――むしろ不安のほうが大きかった。
深澤 ただ、スタッフの方などの話を聞いているうちに、かわいらしさはもちろん大事ですけど、人間的な魅力でキャラクターを好きになってもらえばいいんだ、と思い至ったんです。今回の『デパプリ』に関してもそこは共通していて、シリーズディレクターとして描きたい作品の方向性や世界観を伝えつつ、「かわいらしさ」やデザイン面については、他のスタッフからの意見をできるだけ取り入れる。そんな風に作れるといいなと思っていました。

食卓に仲間が集まってきて、にぎやかに食べるシーンが好き

――実際に『デパプリ』の制作がスタートして、重要視したのはどんなところでしたか?
深澤 作品を包んでいる雰囲気、ムードですね。たとえば、街の真ん中に巨大な招き猫がドーンとあるだけでも、ある種の雰囲気を作れると思うんです。ゲラゲラ大笑いするような面白さというより、クスッと笑えるようなユーモアですね。そういうおかしさをいっぱい入れたいな、と思っていました。キャラクター同士がケンカをするような場面でも、『トムとジェリー』の「仲よくケンカしな」じゃないですけど(笑)、かわいらしくユーモアたっぷりに見せたい、という話をキャストや脚本家の方たちにしましたね。そうやって作りたい雰囲気をうまく入れ込んでいけば、今までのシリーズとはまた違う『プリキュア』になるのかな、と。

――『デパプリ』は「食」や「ごはん」をモチーフにしたシリーズですが、そういう点ともマッチした雰囲気になりましたね。
深澤 「食」というモチーフはプロデューサーからの提案で、それも「調理ではなくて食べるほうをメインに持ってきたい」と言われたんです。その話を聞いて、面白いなと思いました。とはいえ、アニメで食べているところをおいしそうに見せるのは難しくて、食べ物自体の描写はもちろん、食べたあとのリアクションもすごく重要なんです。「食」というテーマは生活の一部と密接に絡まっていて、そこが面白いところですね。

――たしかに、日常生活に欠かせないもののひとつですね。
深澤 モチーフが決まったあとは、最初に「主人公であるゆいちゃんの家に縁側のある居間を作りたいな」と思ったんです。テーブルがあって、みんながそれを囲んでわいわい食事しているような絵をいっぱい作りたいな、と。もともと僕は映画を見ていても、いつの間にか食卓に仲間が集まってきて、くだらない話をしながらみんなでにぎやかに食べるシーンが好きなんです。

テーマは「ありがとう」

――それこそ深澤さんがシリーズディレクターを務めた『ONE PIECE』にも、そういうシーンがたくさん出てきますね。
深澤 たとえば、マキノ雅弘監督が東宝で撮った映画『次郎長三国志』にも、小堀明男さん演じる次郎長に助けられた子分たちがいつの間にか集まってきて、みんなで騒いでいるみたいなシーンがあって。大学生の頃にテレビで見たんですけど、録画したものを何回も繰り返し見るくらい好きだったんです。そういえば、『次郎長三国志』がDVD化されたとき、尾田栄一郎先生がジャケットイラストを描かれていたんですよ。それを見て「尾田さんもやっぱり、この映画が好きなのか」と思いました(笑)。それはともかく、個人的には仲間が集まってくる場面に惹かれていたところがあって、そこにちょうど「ごはん」というモチーフがきた。であれば、ゆいちゃんの家に居間と縁側を作ろう、と思ったんですね。

――オープニングにも出てくるあの縁側は、作品を象徴する場所のひとつでもありますね。
深澤 あとは「ありがとう」という感謝の気持ちだったり、シェアすることの大切さ。そこも今回、提案されたテーマだったんですが、感謝の気持ちを口に出して伝えることってすごく大事だと思っていて。以前、別の作品で、役者さんの演技が本当に素晴らしくて、その方に直接その気持ちを「ありがとうございました」とお伝えしたんです。ベテランの方だったのですが、そうしたらとても喜んでくださって。僕としては素直な気持ちをお伝えしただけなんですが、それで相手に喜んでもらえるし、言ったこちらの心も温かくなる。人とのコミュニケーションや優しさって、やっぱりすごく大事なものなんだなと、そのとき思ったんですね。

――自身の経験が、今回のテーマに重なるところがあったわけですね。
深澤 そうですね。それからはどんなベテランの方であっても、「ありがとうございました」「よかったです」とお伝えするように心がけています。endmark

深澤敏則
ふかさわとしのり 1975年生まれ、埼玉県出身。アニメーション監督、演出家。『探検ドリランド』や『ONE PIECE』のシリーズディレクターを経て、映画『プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』で『プリキュア』シリーズに初参加。その他の主な作品に『聖闘士星矢Ω』『トリコ』(どちらも演出)などがある。
作品情報


『デリシャスパーティ♥プリキュア』
ABCテレビ・テレビ朝日系列にて毎週日曜08時30分より放送中!
 


『デリシャスパーティ♥プリキュア 感謝祭』

<会場>
中野サンプラザホール
 

<開催日程>
2023年2月18日(土)
ファミリー公演/開演14:00 プレミアム公演/開演18:00

2023年2月19日(日)
ファミリー公演/開演13:00 プレミアム公演/開演17:00
 

<出演声優キャスト>
菱川花菜(キュアプレシャス/和実ゆい役)
清水理沙(キュアスパイシー/芙羽ここね役)
井口裕香(キュアヤムヤム/華満らん役)
茅野愛衣(キュアフィナーレ/菓彩あまね役)
 

<出演歌手>
Machico(オープニング主題歌 歌手)
吉武千颯(前期エンディング主題歌 歌手)
佐々木李子(後期エンディング主題歌 歌手)
石井あみ(『ひろがるスカイ!プリキュア』主題歌 歌手)
 

<プレミアム公演出演声優キャスト>
高森奈津美(コメコメ役)
日岡なつみ(パムパム役)
半場友恵(メンメン役)
前野智昭(ローズマリー役)

  • ©ABC-A・東映アニメーション