TOPICS 2022.06.01 │ 12:00

『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が『ラブライブ!』にもたらしたもの②

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(以下、虹ヶ咲)』のTVアニメ1期を振り返りながら、ラブライブ!シリーズ内における独自性とその挑戦を取り上げる検証企画。後編では、メンバー間の関係性の掘り下げ方と、海外ファンを意識したグローバル展開に目を向ける。

文/中村香住

ダイレクトな感情のぶつかり合いと個性の掘り下げ

ラブライブ!シリーズでは他の作品でもメンバー同士の強い絆や連帯、そしてそれがゆえの嫉妬などが描かれてきたが、『虹ヶ咲』ではひとりひとりの「個」に焦点が当たっている分、感情のぶつかり合いや関係性の変化もメンバー単位で深く掘り下げられている。

たとえば、1期第5話では、朝香果林のスクールアイドルへの秘めた思いに気がついたエマ・ヴェルデが「自分のキャラじゃない」と言う果林に対して「やりたいと思ったときから、きっともう始まってるんだと思う」と背中を押す。また、1期第8話では、他人に嫌われるのが怖くて自分をさらけ出すことができない、演じているときのほうが気が楽だと言う桜坂しずくに対し、中須かすみが「もしかしたら、しず子のこと好きじゃないっていう人もいるかも知れないけど、私は! 桜坂しずくのこと、大好きだから!!」と堰を切ったように語りかける。こうした他者を通じた自己受容の物語がバリエーション豊かに描かれているのも魅力的だが、そこにメンバーソロのライブシーンが加わることによって、変化や成長が象徴的かつ印象的に彩られている。

依存関係から発展する上原歩夢と高咲侑

『虹ヶ咲』における「強い感情のぶつかり合い」を語るうえで、避けて通れないのが上原歩夢と高咲侑のふたりだ。1期第11話では、歩夢が侑の身体を押し倒して「私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい。だから、私だけの侑ちゃんでいて!」と抱え続けていた気持ちを打ち明ける。「スクールアイドルフェスティバル」の開催に向けてますます「みんな」のほうに心を向けていく侑と、「私だけの侑ちゃん」でいてほしい歩夢。そして歩夢もまた、スクールアイドルとして「応援してくれるみんなの歩夢」になりたいと思い始めている。スクールアイドル活動を通して、ふたりきりの世界がどんどん広がっていく戸惑いから、歩夢は感情をぶつけてしまうのだが、これほどしっかりとメンバー間の嫉妬や所有感情が表現されたことはラブライブ!シリーズ全体を通じても初めてで、オンエア当時も驚きをもって迎えられた。

ふたりのすれ違いは、第12話で侑が「変わらぬ思い」の花言葉を持つローダンセを贈ること、さらにスクールアイドルとして覚醒を遂げた歩夢の歌唱によって解消される。ここに至って、ようやくふたりはある種の依存関係からお互いの夢を応援し合う関係性へと発展するのだが、ここまでドラマティックな衝突と変化を描けたのは、序盤から丁寧にふたりの感情の機微を積み重ねてきた賜物だろう。

2期では、エマに背中を押された果林が今度は別の人物の背中を押したり、宮下愛に励まされた天王寺璃奈が逆に愛をハグして元気づけるなど、1期からまたがる「再演」も見られるので、メンバー間のさらなる複層的な変化に注目してみてほしい。

追加メンバーとさらなるグローバル展開

「PERFECT Dream Project(PDP)」発表時には9人だった同好会のスクールアイドルは、2020年8月に三船栞子(みふねしおりこ)、2021年8月にミア・テイラーと鐘 嵐珠(ショウ・ランジュ)が加入して12人となった。新メンバーの登場は、TVアニメ2期においても大きな注目ポイントとなっている。

とくにミアと嵐珠の追加により、さらに国際色が豊かになり『虹ヶ咲』はよりグローバル展開に力が入るようになる。ミアは世界的な音楽一家の娘で、ニューヨークからの留学生。嵐珠も留学生で香港出身のお嬢様という設定だ。キャストも、ミアは、オーストラリア出身で英語を第一言語としている内田 秀(うちだしゅう)が、嵐珠は中国に住んでいた経験がある中国語話者の法元明菜(ほうもとあきな)が担当している。このふたりにスイスからの留学生であるエマ・ヴェルデ(キャストは指出毬亜)を加えた3人で「グローバル交流チーム」を結成しているのだが、キャストによる配信番組には英語のメッセージも寄せられ、内田が通訳となって内容を紹介している。他のシリーズにも留学生や海外にルーツを持つメンバーは登場するのだが、ここまで明確に海外を意識した展開を見せているのは『虹ヶ咲』ならではの特徴と言えるだろう。

こうした展開を受けて、海外のファンもビビッドな反応を見せている。ラブライブ!シリーズ初の全編英語詞であるミアのソロ曲「Toy Doll」に関しては、公式MV動画に「アメリカのポップスみたい」「これが日本人が(日本語の)『ラブライブ!』の楽曲を聞くときの気持ちなの!?」といったコメントが英語で寄せられている。また、中国の動画配信サイトbilibiliでも『虹ヶ咲』の番組は配信されているが、法元の呼びかけに応えて「在看!」(見てますよ!)とコメントがあふれる様子が印象的だ。

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」4thアルバムの表題曲である「L!L!L!(Love the Life We Live)」には、“Finding the treasures around the world”、「世界中の宝物を見つけにいく」というフレーズがある。この歌詞からも『虹ヶ咲』が今後ますます「世界」を視野に入れて展開していくことに期待が高まる。グローバルに、さまざまな「大好き」の輪が広がっていく、そんな世の中を目指して。endmark

作品情報

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』TVアニメ2期
TOKYO MX他にて好評放送中!

 

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』TVアニメ2期 OP主題歌
「Colorful Dreams! Colorful Smiles!」
品番/LACM-24230
価格/1,430円(税込)
好評発売中!

 

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』TVアニメ2期 ED主題歌
「夢が僕らの太陽さ」
品番/LACM-24250
価格/1,430円(税込)
好評発売中!

 

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』TVアニメ2期 Blu-ray 第1巻
品番/BCXA-1749
価格/4,950円(税込)
発売日/2022年06月24日(金)

 

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所』

<Colorful Dreams! Colorful Smiles!公演>
Day1: 9月10日(土) 開場17:00/開演18:00
Day2: 9月11日(日) 開場15:00/開演16:00
会場:東京ガーデンシアター

<Next TOKIMEKI公演>
Day1: 9月17日(土) 開場17:00/開演18:00
Day2: 9月18日(日) 開場15:00/開演16:00
会場:武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ

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