一度は行ってみたい、あの作品の舞台
――前編でも触れていた「どうしますか、あなたなら」のMVですが、たしかに一度見ると忘れられない内容ですね。
伊達 本当に誰にでも起きる「どうする?」がたくさん出てきて、実際に自分のまわりで起きたらどうしよう?と思いつつ、クスッと笑ってしまうんです。
――MVの冒頭に登場する印象的なY字階段は国分寺にあるそうですが、この楽曲に限らず、MVや映画に登場した場所に行ったことや、行ってみたいと思ったことはありますか?
伊達 ジブリ作品の『耳をすませば』が大好きなのですが、舞台が東京の多摩市なんですよね。子供の頃から見ていたのですが、ジブリ作品といえば『となりのトトロ』みたいなファンタジーのイメージが強かったので、『耳をすませば』の舞台も架空の場所で、行きたいけど行けないと思っていたんです。
――ジブリ作品に登場する場所のモデルというのはいくつか存在しますが、街並みがそのまま出てくる作品は、たしかにあまりないかもしれません。
伊達 『耳をすませば』は80年代後半のお話なので、少し古い東京が舞台になっていて。団地のある雰囲気や古めかしい駅の建物だとか、私、そういうのがめちゃめちゃ好きなんです。いつか行きたい!と思って調べたこともあるのですが、まだ行けていないんですよね。
大きな分かれ道に出会ったことがないかも
――MVにたくさん出てくる「どうする?」シーンですが、とくに印象に残っているものは?
伊達 やっぱりY字階段の分かれ道がいちばん印象に残りました。普段、目的地がないまま外を歩くということがあまりなくて。「ここに行きたい」とマップを見ながら、なるべく遠回りしないように近道ばかり探して歩いています。だから、MVの分かれ道を見たときに「こういう状況って、自分はあまり経験したことがないかも」と思ったんです。街歩きの最中に通る道にしても、人生の分かれ道になるような選択にしても、遠回りも近道もできる状況で、あえて「どちらに進もうか」と迷うことに意味があるのかな、と考えてしまいました。
――MVに出てくるような些細な出来事まで含めて、「どうしよう」と迷った経験はありますか?
伊達 お休みのときにはお家から出ないで過ごすのが好きなのですが、目が覚めたときに「この時間だけど身体を起こすか、起こさないか……」みたいなちょっとした「どうしよう」はたくさんあります。あとは、とくに小学生や中学生の頃には目立つこと、たとえば何かの実行委員長に立候補するとか、やってみたいなと思っても手を挙げられないタイプでした。興味はめちゃくちゃあるし、今、自分がパッと手を挙げれば決まりそうなのに、なかなか言い出せないことが多かったです。
今の自分を作るきっかけだったかもしれない、鼓笛隊と後夜祭の思い出
――中でもとくに「やっておけばよかった」と思っていることはありますか?
伊達 私の地元では、小学6年になると鼓笛隊を組んでいたんです。運動会のときなどに校歌を演奏したりするのですが、母は小学生のときに鼓笛隊の指揮者だったらしく、私にも「やってみなよ」とすすめてくれました。私自身もやってみたいと思っていたのですが、担当楽器も含めてオーディションで先生が決めていたこともあって、結局、指揮者にはなれませんでした。
――伊達さんは何の楽器を担当することになったのですか?
伊達 太鼓をやりました。太鼓もすごく楽しかったのですが、指揮者として先導する姿がカッコよくて憧れていたので、指揮者のオーディションに落ちてもいいから挑戦しておけばよかったな、と中学生くらいまで思っていました。
――鼓笛隊のときのことが、後にオーディションを受けて今の世界に飛び込むきっかけになったのでしょうか?
伊達 高校のときにも似たようなことがあって、文化祭の後夜祭で有志メンバーがアイドルのダンスを披露していたんです。小学生の頃からそういうことにずっと憧れがあって。中学のときはやりたい気持ちはありつつ、勇気が出なかったのですが、高校では文化祭に参加できるのも最後だと思って、仲のいい子に声をかけるところまではやったのですが、結局、その子が「恥ずかしい……」となってしまって。私も声をかけたはいいものの、実際にやるとなると準備も必要だし、大変かもしれないな……と思ってあきらめてしまいました。でも、いざ後夜祭が始まって、キラキラ輝いている子たちを体育館のステージ下でずっと見ていたら、「1回くらいは挑戦できたはずなのに……」と悔しくなってきて。それがずっと引っかかっていたというのはありますね。
百舌の蔵
住所/東京都新宿区荒木町12−5
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